世界最強を知らしめたい

ノベルバユーザー167694

第一章プロローグ


「良かろう、では、お前の望む世界とはなんだ?  お前はその力でこの世界をどう導く?
創造か破滅か、それとも傍観か?」

白い羽織を着た老人が問う。白髪で白い髭を生やす如何にも仙人といった人だ。この仙人に最初にあったのはいつだっただろうか?そもそも何故自分はこのようなことを聞かれているのだろうか?

リクトは今白い光だけのような世界に居る。少しでも気を抜けばたちまち目が眩んでしまいそうなそんな世界である。しかしそんな事のためにここへ来たのではないと、不思議と意識が奮い立たされる。

リクトは考えていた。この世界に来てから今までの事を。あの日から短くも長い半年であった圧倒的孤独の生活、いや、側から見れば孤独ではないのかもしれない。しかし周りにいたのは、いわば、自分とは違う存在なのだ。自分と同じ存在がいないという点で孤独であったのである。

何故だろうか。今リクトの頭には、この世界に来た日のことが走馬灯のように流れて行く。ゆっくり薄れて行く意識の中で、かつての世界の仲間の姿が浮かんだ。あの日離れた仲間たちが…

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金曜日、日本を襲った大寒波の影響で、すっかり雪景色となった高校への通学路。いつもならこれから始まる週末に向かって心躍らせる人もいるだろう。リクトもその一人であった。

いつものように教室のドアを開ける。朝礼まで15分はある、いつものように、机に突っ伏してリクトは居眠りを始めた。リクトだって高校生、夜遅くまでゲーム、なんてことは不思議である。ゲームといってもRPGである。決して18禁に触れるようなものではない。ないったら無い。

「♪〜」
突然構内アナウンスが流れた、
「本日は一限の授業を休講として、臨時の全校集会を行います。全校生徒の皆さんは講堂へとお集まりください。」

「いよっしゃ!」
隣で清水翔太がガッツポーズをしている。
翔太はリクトの所謂部活仲間である。内向的なリクトとは違いクラスの学級委員的な存在である。髪は僅かに茶髪がかっており知らない人が見たら超好印象である。遅刻魔であるがために学級委員では無いが…

「おはよう。」と吉原 香澄が話しかけて来た。彼女はリクトたちの水泳部のマネージャーにしてちょっと天然が入った明るい女性とだ僅かに覗かせる金色の髪は彼女のトレードマークである。しかし彼女は、面接が〜と言ってこの髪を嫌っていた。俺は結構好きなんだけどね…

「あっ、おはよ。」
俺は短く挨拶を済ませると、ふらふらと席を立った。

「なんでいっつも寝不足なの?ご飯食べてるの?幾ら志望校が余裕だっていっても勉強しないと。」
「毎度毎度ありがと、でもやりたい事はやりたいので。」
「今日は朝ごはん食べたの?用意するのが嫌なら、私が作ってこようか?」

そんな爆弾発言はやめて〜、オタクは直ぐに勘違いしちゃうんだよ、ああ、周りの視線が痛いほど刺さる…周りから「毎度毎度夫婦共々お盛んですね、見せつけか!」という嫉妬を孕んだ視線を頂戴する。

香澄はいいやつなのだが、なんかこう、お母さん?的なオーラがあr…

「今、何考えた?? こんな事してるより、早く講堂いこ。」
「そうだぜ、早い事行かないと、お前も遅刻魔になっちまうぞ。」
「それだけは勘弁して。」

バッチリと読心術を発揮され、見事に心を読まれたので仕方なく俺はゆっくりと立ち上がると、眠いからだを強引に起こして、二人とともに講堂へ歩いていった。

「〜〜〜」
校長が喋ってる…、校長の話を子守唄代わりにウトウトしていると、吉原が話しかけて来た。

「校長の話の時って、何か違うこと考えてられるよね?」
「もしかして妄想してた?」
「うん、そうなんだって、違うよ! アブノーマルなことじゃ無いよ!ちょっと異世界転移的な…」
「それは憧れる。」

そう、彼女と俺は立派な厨二が入っているのだ、ただし、オタクでは無い、無いったら無い。

校長のつまらない話話終わりを迎えた時、不意に世界が“揺れた”、この揺れは、直ぐに講堂全体をパニックに陥れた。

「落ち着け!」

大声で叫び落ち着かせようとするのは、さすが体育教師といったところか。しかし、この場においては無意味であり教師の声も碌に聞こえない。それどころか、パニックになる生徒たちの大声を、さらに助長する形となっていた。

「おい!、何だよ!あれ!」

突然、怒りと驚きを含んだ声が、パニックになった講堂に、けたたましく響いた。

一人が指差すと、二人、三人、と続いた。しかし指差すものは一つではなかった。生徒一人一人の足元にはアニメの世界などでよく見る、所謂、魔法陣が蒼白い輝きを放ちながら浮かび上がって来たのである。

その時の俺は、「まさか、異世界転移か⁉︎」
という気楽な考えしか浮かばなかった。転移した先で、圧倒的孤独が待ち受けているなんてのは、夢にも思わなかったのである。

そして、だれかが叫んでからおよそ10分後、講堂のは生徒の姿はなく、取り残された講師達も自体の理解に30分を優に要したなんて話はどうでもいい事であり、後に神隠し事件なんて呼ばれるのはまた別の話である。

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