破滅の華が散る日まで

澪佩

隅っこの孤独感

ユリュリアのお父さんの計らいにより、アルカナ家にお世話になることになった僕。書斎をあとにして、ユリュリアの部屋に来ている。

「ここがユリュリアの部屋?」
ユリュリア1人に対して広すぎる部屋。こんな広さはおさの家でも見たことがなかった。

「そう、私の部屋。広いでしょ?」
高そうな敷物に、灯。綺麗に整理された棚には、びっしりと本が並んでいる。どれも分厚くて難しそうだ。

「ディナーまでまだ時間あるけど……、夕方近くになるからリエースは帰る?」
あれ?リエースはこの家の人じゃないのかな?

「俺は帰るよ。フロウも待ってるし。」
ふろう……って誰?

「リエース、ルノワールが誰?って顔してるよ。」
ユリュリアは人の感情を読み取るのがすごい。尊敬する。そっか……と言って自分の弟であることを説明してくれた。僕よりも2つ下らしい。

「今度会わせてやるよ。じゃあ、また明日な。」
じゃあねとユリュリアと二人で見送る。すると後から使用人の人が声をかけてくる。

「お嬢様、湯浴みのご用意が出来ております。」
ユリュリアはありがとうと言うと僕を見て一言。

「ルノワールを先に入れてちょうだい。服はお父様に聞いた方が早いわね。私が案内するから、あなたはお父様に服の調達を頼めるかしら?」
使用人の人は、御意にと深々と頭を下げると、静かにその場を去っていった。ぼーっとしていると、ユリュリアにつんつんされている。

「とりあえず、お風呂入って。それからこの家の決まりとか君が住む場所とか案内するね。」
さっきの話からも推測するからに、ユリュリアの家はかなりのお金持ちっぽい……。部屋をあとにして、二人並んで浴室まで向かう。歩き方とか、着ているものとか、非常に良い育ちなんだろうなぁ……。

「どうしたの?」

「へ?」
いきなり顔を覗き込まれて変な声が出てしまった。

「へ?じゃないよ。さっきからボーッとしすぎ。柱にぶつかっちゃうよ?」
ユリュリアを見てた……なんて言えるはずもなく、でも見られていることが恥ずかしくて……もうどうしていいのか分からなくなる。

「べ、別に……何でもないよ……。」
その場ではぐらかすものの、絶対バレている自信しかない。恥ずかしくて、場所も知らないのに早足で歩く。ユリュリアが必死で呼び止めているが、構わな……

「い…………ったい!」
その場で頭を抱えてうずくまる。流石に痛い……。

「だから危ないよって言ったのに……。」
また怪我するつもり?と半分笑いをこらえたユリュリアが駆け寄ってきた。痛みで目の前がぼやけているが、顔は分かる。少し笑った顔をしているけど、心配している顔をして、ぶつけた所に手を伸ばしてきた。

「手をどけて。痛いのとってあげる。」
痛いのここ?と指を指してぶつけた所を確認する。頷くと、ちょんと人差し指で触ってきた。でも痛かったのはほんの一瞬で、指が離れる時には痛みは無くなっていた。

「痛いの消えた?」

「うん。さっきまでのが嘘みたい……。ありがとう」
じゃあ、そこを右に曲がったところが浴室だから行ってらっしゃいと促されるままにそのドアを開け、また後でねとユリュリアは父君様の所へ行ってしまった。後ろを振り返ると、複数の使用人の人達がみんな僕を見ている。思わず後ずさり……。

「今日からあなたはこの家の一員です。私たちはアルカナ家に仕える者です。よろしくお願いします。」
僕の方がお世話になるっていうのに、なんて丁寧な人達なんだろう……。

「い、いえ。僕の方こそお世話になります。」

「そのように私共に丁寧な言葉遣いは不要です。」
ここで従ったら、いつかは元々この家の者ではないことを忘れてしまう。そうならないように、あえてちゃんとした言葉遣いでいたい。そうでなきゃいけないんだって頭の中でも何かが訴えているような気がする。

「……わかりました。ルノワール様がそのように仰るなら、私共もそのように致します。」
そう言えば、僕の名前、『ルノワール』って凄く言いにくそう。略称で呼んでもらった方がいいかもしれない。

「僕の事、『ルノワール』じゃなくて『ルーノ』って呼んでください。僕の略称です。」
何か変な事言ったかな?目をぱちくりして、身体を洗っていた手がピタリと止まった。小さな声ですみませんと謝ると、ハッとして首を横に振った。

「こちらこそすみません。略称で呼ぶように言われたのはルノ……いえ、ルーノ様が2人目なので。」
僕が2人目?僕の他に誰かいるみたい。もしかして……

「もしかしてユリュリア……?」

「はい。ユリュリアお嬢様が自ら呼びにくいから略称でいいと……。」
ユリュリアの略称……。なんだろう。そんな事を考えていたら、終わりましたよと白いフワフワした物を身体に巻かれていた。バスローブと言うみたい。丁度ユリュリアの父君様が入ってきた。僕の服を用意してくれたみたい。

「君の背丈に合わせたものを持ってきたつもりだが、似合うと思う。着てみてくれないか?」
まさか父君様自ら持ってくるなんて思ってなかった。

「すみません、まさか父君様が持ってくるなんて……。すぐに着替えますね。」
使用人の人に手伝ってもらってすぐに着替える。上質な生地みたいで凄く着心地がいい。

「どうですか……?」

「うむ、似合っている。ディナーまでもう少し時間があるからユリュリアの部屋に居るといい。場所は分かるか?」
大丈夫との旨を伝え、一人ユリュリアの部屋に向かう。ノックして部屋に入ると、ユリュリアが小さい子と遊んでいた。

「おかえ……、どうしたの?その服……。」
凄く笑顔が引きつっていることは置いといて、この服ユリュリアが頼んでくれた服だよ……ね?僕がきている服をジロジロ見るなり、深ーーーいため息をついて、呆れたように

「またお父様のセンスね。相変わらず服選びのセンス無さすぎ……。」
こっちに来てと半ば強引に引き出しの前に立たされる。一人でブツブツと呟きながら僕が着る(っぽい?)服を渡される。

「ごめんね、お父様服のセンスないから。新しい服ができるまでこれ着てて。」
着衣室へと押し込まれ、父君様にはほんとに申し訳ないけれど、ユリュリアに選んでもらったやつを着ないとここから出してもらえなさそう……。諦めよう。

「あ、着れた?」

「着られたけど……父君様に申し訳ない……。せっかく選んでもらったのに……。」

「大丈夫。お父様が選んだのよりも似合ってるから。後、私の弟と妹よ。」
ユリュリアはお姉さんだったんだ。面倒を見てるなんて偉いな。

「この子がリーリエ。こっちがスレリオ。それとミルリアよ。」

「沢山弟妹きょうだいがいるんだね。いいなぁ。」
その分大変だけどね、と笑ってみせるユリュリア。僕も村で小さな子の面倒をみたりしていたから、気持ちは分かる。

「独りぼっちじゃないから……。」

「……え?」


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