破滅の華が散る日まで

澪佩

キミと出会った日

「どこにもいません……!!」

「探せ!まだ遠くには行っていないはずだ。必ず見つけて連れ戻せ……!」

「はっ!!」
自分のいる場所から近くて数十メートル程だろうか……自分を探す集団の足音が聞こえる。この辺りを捜索している様だが、こちらの方へ目を向けることはなく、反対方向へと行ってしまった。その隙にこの薄暗い幻魔の森を抜けてしまおう。今夜中なら、結界も薄くなっているはずだ。一刻も早くここから逃げなければ……

「はぁっ……はぁっ……!」
得体の知れない恐怖から逃げている。10にも満たぬ心と身体にはそれ以外のことは分かるはずも無い。とにかく必死でこの森から抜け少しでも安全な場所へと走り抜ける事だけを考えた。


「……っ!」
視界に月明かりが差し込んできた。ほとんど前を見ていなかったせいか、いつの間にか森を抜けていたようだ。ここまで来れば、結界をわざわざ越えてまで追いかけてくることは無いだろう……。森を抜けた事に安心して、それまで強ばっていた全身の力が一気に抜けた。それと同時に意識を手放した。





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「奴は見つかったのか?」

「い、いえ、それがなかなか見つかりません。もう少し人数を増やしますか?」

「その必要はない。見つからないのならそれでいい。」

「よろしいのですか?放っておいても。」

「こちらが血眼になって探して連れ戻す前に、自分から帰ってくるよ。頭では逃げたつもりでも、身体に流れる血は帰りたいと望むだろうからね……ククッ。」
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どれくらい眠ってしまったのだろうか。目を開けるとかなり眩しい……。抜けた先が森の結界から見て影になっているところだったのが幸運だった。ほっとしていると誰かの気配を感じた。

「ねぇ、君はどこから来たの?」

「……!?」

「怖がらないで、何もしないから。」
突然後から声をかけられてびっくりした。その衝動で思わず物陰に隠れてしまったが、相手は高い声……、女の子か……?

「ねぇ、隠れてないで出ておいでよ。怖がること無いのに……。」
恐る恐る顔を出すと、そこには金髪蒼眼の少女が立っていた。幼い姿に似合わぬどこか大人びた雰囲気に見とれていると、腕を引っ張られた。

「うわっ!」
足がもつれてドスンという音を立てて盛大にこけた。

「痛い……。」

「ごめんなさい、怪我してるのに引っ張っちゃって…大丈夫?」

「あ……うん……。」

「君はどこから来たの?」
どこからと言われても故郷の事をほとんど知らずに逃げてきたものだから分からない。先程出てきたばかりの森を振り返りながら考えていると、森から?と先に言われてしまった。

「僕は、この森から……」
逃げてきたんだと言おうとした途端、今度は別の声が聞こえてきて、身を固くしてしまった。

「ユリュリア見つけた、またこんなところに来て……、先代様に叱られるぞ……って、ん?誰だこいつ。」

「私もさっき見つけたの。折角この子の緊張がほぐれたと思ったのに、リエースが来たから怖がっちゃったじゃない。」
僕に声をかけてきた少女の名はユリュリアと言うらしい、そしてその少女を見つけに来た僕とさほど歳が変わらない黒髪碧眼の少年は、リエースと言うらしい。そのリエースがばつが悪そうにゴメンなと謝ってきた。ただ驚いてしまっただけだと伝えると、良かった……と安心したようだ。

「俺はリエース、こっちはユリュリアだ。よろしくな。」

「よろしくね。えっと……君の名前は……」
僕の名前……、幻魔狼の一族は10歳を迎えた時に名を付けてもらう習慣がある。僕はまだ10に満たないから貰うことは出来ない筈だった。それがあの日、一族が暮らす村が襲われた時、母が死に際に名前を付けてくれた。

「いきなり言えって方が無理だって。お前、怪我してんだろ?取り敢えず治しに行こうぜ。」

「そうだよね。いきなりは、デリカシー無かったよね、ごめんなさい。その怪我、治しに行きましょう。」

「……行くって、何処に?」
母と同じように僕も変な所に連れていかれるのではないかと不安になって聞いてみた。

「私の家……と言うよりは、離れだけど。そこなら安心して傷を癒せるわ。」
だからおいでよ、と言われた。彼女達の言う通りだ。何かするとしても、傷だらけのこの身体では何も出来そうにない。仕方なく少しの間お世話になる事にした。

「……うん、分かった。」

「それじゃあ決まりね。歩ける?」

「うん。大丈夫。あの、……」
何?何だよ?と二人同時に聞いてくるものだから、少しびっくりして言葉が詰まってしまった。でも少しの間でもお世話になるのだ。名前くらいは伝えておかないといけないと思って、勇気を振り絞って声に出した。

「ぼ、僕はルノワール。ルノワール·セレンジェイラ。」

「やっと言えたな。よろしく、ルノワール。」

「私たちは貴方の味方よ、ルノワール。改めて宜しくね。」


ー僕はルノワール、故郷から逃げキミに出会った。僕の出生が君を巻き込む事件になるとは知らずにー

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