初恋はブドウのグミの味がする

ノベルバユーザー173744

美希side2

 当日リュックを背負い体育館に集合するが、采明あやめは袋を持ってきていた。

「おはよう。皆早いね」
「おはよう。あやちゃん」

 千夜ちやは手を振る。
 その横で、美希みきは、地図を広げている。

「うーん……大丈夫かしら。行ける?あっ、ばんそうこうとか忘れちゃったわ」
「あ、ばんそうこうと消毒液とガーゼとか……持って来たよ?それにウェットティッシュも」
「えっ」

 クラスで一番小さい采明のリュックはパンパンである。
 その上、袋を持っている。

「ちょっと待って!あやちゃん。何持って来たの?」
「えっ?遠足に必要そうなもの……」
「おはよう……何してるんだ?」

 かけるひかるが近づいてくる。

「あ、狭間はざまくん、望月もちづきくん、おはよう」
「あやちゃん。リュック下ろして!一人でこんなに持ってたら疲れるでしょ!」

 体育館の隅に移動し、リュックなどの中身を開ける。
 翔も瑆も絶句するほど大量の荷物である。

「な、なんでこんなにあるの?」
「えっ?な、何かあったら心配だから……だから、軍手に、メモ帳ペンは必須だし……タオルも余分に持って来たの。怪我したらダメでしょう?だから、一式と、大きめの敷物に、お弁当!みんなで食べると美味しいと思って!」

 ででーんと重箱が現れる。

「それでね、あ、これ……美希ちゃん、千夜ちゃん、望月くんと狭間くんと、……作楽さくらくんのも」

 瑆が昨日見た綺麗に包装された包みが差し出される。

「これは?」

 翔は手に取る。

「クッキーだよ。私が作ったの。みんなで食べたくて」
「あ、柚須浦ゆすうら章大しょうたの分は僕が渡しておくよ」
「あ、本当?ありがとう。えっと……作楽くんには、私が作ったって言わないでね?」
「えっ?」

 千夜はきょとんとする。

「何で?折角作ったのに」
「えと……さ、作楽くん……1月に入ってから、『おい、バレンタインデーに俺にチョコレートくれるよな?』って言われて……『学校に持ってこれないからダメ』って言ったら、と、当日い、家に来たの……『取りに来た』って」

 4人はあまりの図々しさにあっけにとられる。

「で、妹が『何しに来た〜!』って、『お姉ちゃんは百合ゆりのチョコレート、作ってくれてるんだから!あげない!帰って!』って喧嘩になっちゃって……。でも、今回はみんなと一緒がいいから……」
「分かった!絶対に言わないわ!ね?美希ちゃん、望月くんも狭間くんも!」
「あ、あぁ。大丈夫だよ。言わない。な?瑆」
「うん。それよりも、柚須浦……お弁当……だけでも先生に預けないか?到着して、帰る用のバスや体調不良になった子を乗せる車を先生、運転してるはずだし。その大きいのはいくらなんでも大変だと思う」

 瑆は提案し、美希も、

「絆創膏とかもみんなで分担して持ったら軽くなるわ。あやちゃんだけ重いのって嫌よ。一緒ね」
「ありがとう……」

采明はふわっと笑う。

 瑆や翔だけでなく、美希や千夜も眼を見張る。
 二学年下の采明の妹の百合は端正だが、采明は美少女である。
 それにいつもは長い髪を三つ編みにしているが、今日はポニーテールにして編み、クルンと巻いている。
 メガネの下の瞳はキラキラしていて、愛らしい。

「あのね、私ね、美希ちゃんと千夜ちゃんと一緒で嬉しい。それに、望月くんも狭間くんもありがとう」
「私も〜あやちゃんと一緒で嬉しい!あ、手をつないで行こうよ!」
「あー、私も!」

 美希が口を挟む。
 というよりも、千夜と二人で『章大から采明を守る会』を急遽作ったのである。

「えへへ……ありがとう」
「柚須浦。章大は僕たちがなんとかするから、のんびり行こうな」
「あ、瑆。みんな……。消毒道具、あいつに持たせないか?いつも暴れまわるし、重石になるぞ」
「狭間くん、良いアイデア!」

 千夜は翔に笑いかける。
 その様子を見ながら美希は、手を振りながら走ってくる章大を見つけたのだった。

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