【佳作受賞作品】おっさんの異世界建国記
狐耳姉妹。(後編)
「それは、本当に人間だったのか?」
「はい、エルダ王国の旗を持った人たちでした」
「そうか……、まあ、話は後だ。まずは腹ごしらえでもしておけ」
俺は干し肉をリルカに渡しながら考える。
エルダ王国の旗を持った連中が本当に、リルカを追い回していたとしたら、それは大問題だ。
融和政策を取るということは国としての決定だ。
それを蔑ろにするような行為は、反逆罪と言っても過言ではない。
問題は、わざわざ旗を掲げてリルカを追いかけまわしていた理由だが、いくつか想像がつく。・
一つは、国が融和政策と嘘をついて獣人狩り活動していること。
一つは、貴族が勝手に行動していること。
そして最悪なパターンが、犬猿の仲である隣国のテラン王国が動いていた場合だ。
どちらにせよ、お偉方が関わっていることは間違いない。
「水でも飲むか?」
急いで食べたのか喉に食べ物を詰まらせた銀髪狐耳美少女のリルカに、白湯を入れたマグカップを渡す。
彼女は、俺からマグカップを受け取ると一気に飲んでいた。
不思議なものだ。
動物というのは基本、猫舌ではないのか?
「ありがとうございます。助かりました。それより、妹に合わせてもらってもいいですか?」
「ああ――」
俺は、リルカをテントの中に案内する。
テントの中では、いまだに金髪狐耳幼女が寝ていた。
「エルナ……。よかった無事で……」
安心したのだろう。
リルカが、自身の妹を見た途端、エルナと名前を呼んで近づくと、座り込んで泣いていた。
俺は、その様子を見ながら頭を掻く。
やれやれ……。
「膝が痛いな……」
俺はテントをリルカという銀髪キツネ耳美少女と、その妹のエルナに貸して外で夜を明かしたのだが、さすがに毛布一枚だと冬も近づいていることもあり寒かった。
おかげで、矢を受けた膝の痛みが酷い。
それでも、安心した顔で寝ている金髪ケモミミ幼女を起こすわけにはいかなかった。
困っている人間が居たら、なるべく助け合うのが冒険者の生き様って奴だからだ。
それに……。
そういうのがあるからこそ、俺も今まで生きてこられたようなものだからな。
「とりあえずは、朝食の準備のために枝でも集めるとするか……」
俺は、一人呟く。
そして、毛布を畳んだあと立ち上がる。
「あの……」
「――ん? リルカか? どうかしたのか?」
振り返ると、そこには銀髪赤眼のキツネ耳美少女のリルカが立っていた。
昨日の夜は星も殆ど出ておらず暗かったこともあり、彼女の容姿を確認することはできなかったが、日本でいうところの16歳くらいの美少女だ。
俺が、あと20歳くらい若かったら意識して、話もままなかっただろう。
そんな彼女は、何か思いつめたような表情で俺を見たあと、視線を足元に移していく。
俺も彼女の視線を追ってリルカの足元をみると、そこには昨日、俺の食事を遠慮なく食べつくした金髪のキツネ耳を持った美幼女が居て、リルカの麻色の服裾を掴んで俺を見てきていた。
怯えている感じはしないが、どこか遠慮がちな瞳で俺を見てきているように感じる。
「ほら、エルナ」
リルカは、妹であるエルナの背中を軽く叩いていた。
主語が無いということは、事前に姉であるリルカから何か言われたのだろう。
まぁ、だいたい言いたいことは分かる、
「あ、あの! カンダしゃん! 昨日は、ありがとうございましゅ わたしゅ、お腹がしゅいていて……」
言葉足らずなのか、所々、話し方がおかしな箇所はあるが、言いたいことは伝わった。
おそらく昨日の食事に関してだろう。
「食事くらいは問題ない。それよりも朝食にしないか? 昨日の夜は、殆ど食べていなかったから腹が減っているんだ」
俺は肩を竦めながら、彼女らに話かける。
実のところ、人間に追われていたという話を詳しく聞きたいが、いきなり聞いていても昨日の今日だからな。
答えにくいものもあるだろうし、それにお互い、まったく知らない仲だ。
そんな状態で、これからの立ち回りに必要な判断材料である情報を求めても意味がない。
信憑性のある情報が欲しいなら、まずは信頼を少しは獲得しないとな。
それには、食事を提供するのが一番の近道だ。
「私達が、ご用意いたしますのでカンダ様は、座って待っていてください」
「待っていてくだしゃい」
リルカとエルナは、それぞれ別れて谷底に落ちている枝を拾いはじめた。
それから1時間ほどして枝が集まると、昨日から火元を維持している薪に二人は枝を入れていくと炎の勢いが増していく。
火が舞う様子を見ていると鍋を両手で抱えたリルカが「あの……カンダさん、お鍋に水を入れてもらえますか?」と、聞いてきた。
俺は頷き生活魔法の一つである水生成の魔法を発動させ鍋の中に水を満たしていく。
時間的には、1分もかかっていない。
「ありがとうございます」
「リルカ、一つ聞きたいんだが……」
「はい? なんでしょうか?」
リルカは、腰まで伸ばしている銀髪を揺らしながら首をかしげて聞いてくる。
「エルナの話し方だが……」
「あっ! 申し訳ありません。妹は、まだ人間の言葉を上手く話すことができないのです」
「そうなのか?」
俺は、てっきり獣人というのは人の言葉を普通に話せると思っていたのだが……。
「――はい。獣人は人の言葉を、きちんと話せるようになるのが成人してからですので……」
「なるほど……」
リルカの言葉に頷きながら、俺は膝を摩る。
矢が刺さった膝が痛いのだ。
「あの……」
「どうかしたのか?」
「いえ……」
リルカは頬を赤く染めて、何かを俺に言おうとしている。
なるほど……。
つまり、食事を貰って助けてもらったから俺に惚れてしまったということか。
ふっ、俺に惚れると火傷するぜ? と一度でいいから言ってみたいが、そんな度胸も……。
「毛布が……」
「毛布が? うお! 俺の毛布が!?」
気がつけば毛布が燃えていた。
慌てて火を消そうと毛布を素手で掴む。
「熱っ!?」
すでに毛布の内部まで燃えていたらしい。
「はい、エルダ王国の旗を持った人たちでした」
「そうか……、まあ、話は後だ。まずは腹ごしらえでもしておけ」
俺は干し肉をリルカに渡しながら考える。
エルダ王国の旗を持った連中が本当に、リルカを追い回していたとしたら、それは大問題だ。
融和政策を取るということは国としての決定だ。
それを蔑ろにするような行為は、反逆罪と言っても過言ではない。
問題は、わざわざ旗を掲げてリルカを追いかけまわしていた理由だが、いくつか想像がつく。・
一つは、国が融和政策と嘘をついて獣人狩り活動していること。
一つは、貴族が勝手に行動していること。
そして最悪なパターンが、犬猿の仲である隣国のテラン王国が動いていた場合だ。
どちらにせよ、お偉方が関わっていることは間違いない。
「水でも飲むか?」
急いで食べたのか喉に食べ物を詰まらせた銀髪狐耳美少女のリルカに、白湯を入れたマグカップを渡す。
彼女は、俺からマグカップを受け取ると一気に飲んでいた。
不思議なものだ。
動物というのは基本、猫舌ではないのか?
「ありがとうございます。助かりました。それより、妹に合わせてもらってもいいですか?」
「ああ――」
俺は、リルカをテントの中に案内する。
テントの中では、いまだに金髪狐耳幼女が寝ていた。
「エルナ……。よかった無事で……」
安心したのだろう。
リルカが、自身の妹を見た途端、エルナと名前を呼んで近づくと、座り込んで泣いていた。
俺は、その様子を見ながら頭を掻く。
やれやれ……。
「膝が痛いな……」
俺はテントをリルカという銀髪キツネ耳美少女と、その妹のエルナに貸して外で夜を明かしたのだが、さすがに毛布一枚だと冬も近づいていることもあり寒かった。
おかげで、矢を受けた膝の痛みが酷い。
それでも、安心した顔で寝ている金髪ケモミミ幼女を起こすわけにはいかなかった。
困っている人間が居たら、なるべく助け合うのが冒険者の生き様って奴だからだ。
それに……。
そういうのがあるからこそ、俺も今まで生きてこられたようなものだからな。
「とりあえずは、朝食の準備のために枝でも集めるとするか……」
俺は、一人呟く。
そして、毛布を畳んだあと立ち上がる。
「あの……」
「――ん? リルカか? どうかしたのか?」
振り返ると、そこには銀髪赤眼のキツネ耳美少女のリルカが立っていた。
昨日の夜は星も殆ど出ておらず暗かったこともあり、彼女の容姿を確認することはできなかったが、日本でいうところの16歳くらいの美少女だ。
俺が、あと20歳くらい若かったら意識して、話もままなかっただろう。
そんな彼女は、何か思いつめたような表情で俺を見たあと、視線を足元に移していく。
俺も彼女の視線を追ってリルカの足元をみると、そこには昨日、俺の食事を遠慮なく食べつくした金髪のキツネ耳を持った美幼女が居て、リルカの麻色の服裾を掴んで俺を見てきていた。
怯えている感じはしないが、どこか遠慮がちな瞳で俺を見てきているように感じる。
「ほら、エルナ」
リルカは、妹であるエルナの背中を軽く叩いていた。
主語が無いということは、事前に姉であるリルカから何か言われたのだろう。
まぁ、だいたい言いたいことは分かる、
「あ、あの! カンダしゃん! 昨日は、ありがとうございましゅ わたしゅ、お腹がしゅいていて……」
言葉足らずなのか、所々、話し方がおかしな箇所はあるが、言いたいことは伝わった。
おそらく昨日の食事に関してだろう。
「食事くらいは問題ない。それよりも朝食にしないか? 昨日の夜は、殆ど食べていなかったから腹が減っているんだ」
俺は肩を竦めながら、彼女らに話かける。
実のところ、人間に追われていたという話を詳しく聞きたいが、いきなり聞いていても昨日の今日だからな。
答えにくいものもあるだろうし、それにお互い、まったく知らない仲だ。
そんな状態で、これからの立ち回りに必要な判断材料である情報を求めても意味がない。
信憑性のある情報が欲しいなら、まずは信頼を少しは獲得しないとな。
それには、食事を提供するのが一番の近道だ。
「私達が、ご用意いたしますのでカンダ様は、座って待っていてください」
「待っていてくだしゃい」
リルカとエルナは、それぞれ別れて谷底に落ちている枝を拾いはじめた。
それから1時間ほどして枝が集まると、昨日から火元を維持している薪に二人は枝を入れていくと炎の勢いが増していく。
火が舞う様子を見ていると鍋を両手で抱えたリルカが「あの……カンダさん、お鍋に水を入れてもらえますか?」と、聞いてきた。
俺は頷き生活魔法の一つである水生成の魔法を発動させ鍋の中に水を満たしていく。
時間的には、1分もかかっていない。
「ありがとうございます」
「リルカ、一つ聞きたいんだが……」
「はい? なんでしょうか?」
リルカは、腰まで伸ばしている銀髪を揺らしながら首をかしげて聞いてくる。
「エルナの話し方だが……」
「あっ! 申し訳ありません。妹は、まだ人間の言葉を上手く話すことができないのです」
「そうなのか?」
俺は、てっきり獣人というのは人の言葉を普通に話せると思っていたのだが……。
「――はい。獣人は人の言葉を、きちんと話せるようになるのが成人してからですので……」
「なるほど……」
リルカの言葉に頷きながら、俺は膝を摩る。
矢が刺さった膝が痛いのだ。
「あの……」
「どうかしたのか?」
「いえ……」
リルカは頬を赤く染めて、何かを俺に言おうとしている。
なるほど……。
つまり、食事を貰って助けてもらったから俺に惚れてしまったということか。
ふっ、俺に惚れると火傷するぜ? と一度でいいから言ってみたいが、そんな度胸も……。
「毛布が……」
「毛布が? うお! 俺の毛布が!?」
気がつけば毛布が燃えていた。
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コメント
ノベルバユーザー328891
いつの間に名乗ったのか、姉妹がカンダさんの名前を呼んだのに少し「おや?」となりました。