花贈りのコウノトリ
4
大きなアレンジメントを何とかスクーターに乗せ、今までにない位にゆっくりと僕は街を走っていた。
文化会館はすぐそこなので、どれだけゆっくり走ったって時間には十分間に合う。車配達をする奏太が出てしまってるからこうして少々無茶な配達をしているわけだが…喧嘩の一件でそちらに気を取られていたからだけど、もっとうまく配達を組めば良かった。
とはいえ2年間ほぼ毎日花に触れている分、流石にどれだけ無茶が出来るかくらいは容易に察することができる。これくらいの大きなアレンジメントはスクーターに積んで走ってもギリギリ傷付けないことくらいはわかっていた。
出る時には止んでいた雨も多少ぱらついている。降ったり止んだりとなかなか忙しい天気だ。 屋根のあるスクーターだから、濡れることはほとんど無いけど、頬を掠める湿気を帯びた風はいい気持ちでは無い。
信号で止まった僕は、例の二人のことを考えていた。
もの分かりのいい篠崎さんなら、仲直りしてくれと頼めば首を縦に振ると思う。問題は…沙苗ママだ。
頑固で猪突猛進な沙苗ママに仲直りなんて口にするだけで機嫌が悪くなるだろう。そうなった暁には…ぞぞぞっと悪寒が走って僕は身震いした。
やがて文化会館に着くと駐輪場にスクーターを停め、アレンジメントを抱えて歩き出した。大きい分、やはり重量もあるので流石の僕も10m毎に足を止めて持ち直してしまう。
「…水嶋さん?」
いつの間にいたのか、眞鍋さんが後ろから声をかけて来た。振り返るといつものほっこりさせられる笑顔。僕も思わず笑みがこぼれた。
「配達ですか」
「はい。もう、終わっちゃいましたけどね…水嶋さん、私の横を通って行ったのに全然気付いてくれないんだから」
可愛らしく頬を膨らませた眞鍋さんに、さっきのことなんて忘れてしまいそうな程に心底癒された。今日は髪を下ろし、薄手のパーカーを腕まくりした格好…まさに僕好みのカジュアルな格好だ。
「それにしても、大きなアレンジメント…」
口を開け眉をひそめてアレンジメントを見上げる眞鍋さん。acquamarinaでは流石にここまで大きなアレンジメントを作ることはないようで、物珍しげにじっと見つめている。やがて僕に目を向けると、
「大丈夫なんですか、水嶋さん?一人で運べるんですか?」
「な、なんとか…」
苦笑いを浮かべてみるも、眞鍋さんはさっとアレンジメントの反対側に手を添える。一人で到底運べないという程ではないけれど視界も阻まれているし、とりあえず彼女の親切に甘えることにした。
花の影から見え隠れする眞鍋さんを見て、僕はあの下衆い友人二人を思い出した。
結局最後まで何故彼女を知っているのか聞けなかった。彼女は大学生ではなくアルバイト…といっても殆ど正社員みたいなもの…だから、学生繋がりではない。
じゃあ、どうして?
「水嶋さん、そこ」
眞鍋さんに突然そう呼ばれ、返事をしようとした途端に僕は何かに躓きふらっとバランスを崩した。幸い転ぶまでには至らず片膝をついて無事に事なきを得たが、それを見た眞鍋さんが笑い出して心には傷を負った。
立ち上がってみると低めではあるが段差があった。いつもならひょいひょいと乗り越えてしまう段差だけに恥ずかしくなる。
「もー、しっかりして下さいよ」
笑いが収まらないようで、苦しそうにヒイヒイ言いながら眞鍋さんは言った。ますます恥ずかしくなって顔が熱くなるが、そうも言っていられない。恥ずかしさを誤魔化すために僕は低い段差を力を込めて上った。
文化会館はすぐそこなので、どれだけゆっくり走ったって時間には十分間に合う。車配達をする奏太が出てしまってるからこうして少々無茶な配達をしているわけだが…喧嘩の一件でそちらに気を取られていたからだけど、もっとうまく配達を組めば良かった。
とはいえ2年間ほぼ毎日花に触れている分、流石にどれだけ無茶が出来るかくらいは容易に察することができる。これくらいの大きなアレンジメントはスクーターに積んで走ってもギリギリ傷付けないことくらいはわかっていた。
出る時には止んでいた雨も多少ぱらついている。降ったり止んだりとなかなか忙しい天気だ。 屋根のあるスクーターだから、濡れることはほとんど無いけど、頬を掠める湿気を帯びた風はいい気持ちでは無い。
信号で止まった僕は、例の二人のことを考えていた。
もの分かりのいい篠崎さんなら、仲直りしてくれと頼めば首を縦に振ると思う。問題は…沙苗ママだ。
頑固で猪突猛進な沙苗ママに仲直りなんて口にするだけで機嫌が悪くなるだろう。そうなった暁には…ぞぞぞっと悪寒が走って僕は身震いした。
やがて文化会館に着くと駐輪場にスクーターを停め、アレンジメントを抱えて歩き出した。大きい分、やはり重量もあるので流石の僕も10m毎に足を止めて持ち直してしまう。
「…水嶋さん?」
いつの間にいたのか、眞鍋さんが後ろから声をかけて来た。振り返るといつものほっこりさせられる笑顔。僕も思わず笑みがこぼれた。
「配達ですか」
「はい。もう、終わっちゃいましたけどね…水嶋さん、私の横を通って行ったのに全然気付いてくれないんだから」
可愛らしく頬を膨らませた眞鍋さんに、さっきのことなんて忘れてしまいそうな程に心底癒された。今日は髪を下ろし、薄手のパーカーを腕まくりした格好…まさに僕好みのカジュアルな格好だ。
「それにしても、大きなアレンジメント…」
口を開け眉をひそめてアレンジメントを見上げる眞鍋さん。acquamarinaでは流石にここまで大きなアレンジメントを作ることはないようで、物珍しげにじっと見つめている。やがて僕に目を向けると、
「大丈夫なんですか、水嶋さん?一人で運べるんですか?」
「な、なんとか…」
苦笑いを浮かべてみるも、眞鍋さんはさっとアレンジメントの反対側に手を添える。一人で到底運べないという程ではないけれど視界も阻まれているし、とりあえず彼女の親切に甘えることにした。
花の影から見え隠れする眞鍋さんを見て、僕はあの下衆い友人二人を思い出した。
結局最後まで何故彼女を知っているのか聞けなかった。彼女は大学生ではなくアルバイト…といっても殆ど正社員みたいなもの…だから、学生繋がりではない。
じゃあ、どうして?
「水嶋さん、そこ」
眞鍋さんに突然そう呼ばれ、返事をしようとした途端に僕は何かに躓きふらっとバランスを崩した。幸い転ぶまでには至らず片膝をついて無事に事なきを得たが、それを見た眞鍋さんが笑い出して心には傷を負った。
立ち上がってみると低めではあるが段差があった。いつもならひょいひょいと乗り越えてしまう段差だけに恥ずかしくなる。
「もー、しっかりして下さいよ」
笑いが収まらないようで、苦しそうにヒイヒイ言いながら眞鍋さんは言った。ますます恥ずかしくなって顔が熱くなるが、そうも言っていられない。恥ずかしさを誤魔化すために僕は低い段差を力を込めて上った。
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