ギャング★スター

髭紳士

スクープ※フェスティバル1

 テレビ局「カワラバンTV」のディレクター。アトノ・マツリは一人の男を待っていた。頼んだコーヒーは既に冷めきっている。しかし、今回の取材相手は超大物だ…
『今回の取材。下手すれば命を落とす。それでも、行く者はいるか』
 唯一手を挙げたのがマツリであった。マツリは今、時計を気にする事もなくひたすらに今日の成功を祈っていた。
「おらア。動くんじゃねエ」
レストランの店内に怒声が響く。
「レジの金、全部寄越しな」
強盗が拳銃を店員に向けた。この街ではあまりにもありふれた光景。こんなものを撮っても視聴者は見向きもしないだろう。しかし、マツリのテレビマンの勘が半ば衝動的に強盗にカメラを向けさせた。
「てめエ。何のつもりだア」
強盗がこちらに向かって歩いてくる。しかし、マツリは怯まずカメラを向け続けた。強盗は顔を怒りに歪めて銃を撃とうとした。
カランコロン。店の扉が開く。店内の全ての人間が思わずそちらを向いた。入って来たのは革ジャンにジーパン、ボサボサ髪の男。マツリはその男にズームする。
「悪いな。待たせて」
男は店内の状況など全く気にせずマツリの方へ歩いてきた。強盗はその男を見るなり銃を向ける。刹那。強盗の銃が弾け飛ぶ。革ジャンの男が目にも止まらぬ早撃ちで強盗の手を撃ったのだ。
革ジャンの男はそのまま歩いて行き右回し蹴りで強盗を吹き飛ばした。
「今日はよろしくお願いします。スターさん」
革ジャンの男は街一番の大悪党ギャング・スター。今回の取材相手だ。
スターはカメラにピースサインをして言った。
「しくよろ」
マツリの長い一日が始まった。

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