Each other's backs

有賀尋

Lies and truth and trust

「お前、何してる?」
「お前、無理してるだろ」
「なにか…隠してますか…?」

相手に対して絶対に信用してはならない言葉がある。そのひとつが「大丈夫」という言葉。
大体は「大丈夫か」と聞けば「大丈夫」と返ってくる。当たり前だ。
ただし、長く見てきた相手や、初対面であっても相手の「大丈夫」という言葉ほど信用ならない言葉はない。

「何って?」
「大丈夫だよ?」
「俺がお前に何を隠すって?」

「大丈夫」という言葉は
いつでも人を自滅に追い込む。

自分が大丈夫じゃないということを信じたくない人間が発する言葉だ。
大丈夫じゃないということがわかっていて嘘をつく「大丈夫」と、大丈夫じゃないということが分からないでいう無自覚の「大丈夫」がある。大抵の人間は前者のことが多い。だから自滅するのだ。

だからこそ、自滅に追い込ませないためにする事はただひとつ。

「大丈夫じゃないことくらい分かってるんだ」
「そういうこと、俺に通用すると思ってるのか?」
「僕の目はごまかせませんよ」

それでも相手は絶対に口を割らない。
いっそ爆発するまでそのままにしてもいいのかもしれない。
…ただ、そんなことをして何になるというのだ。

一番は自滅させない事。
自滅の道を歩かせない事。
常に見てるんだと分かってもらうこと。
頼りないのかもしれない、言えないことだってもしかしなくても山ほど。
分かりたいと思えば思うほどに気持ちばかり急いていく。

人間というものは厄介だ。
感情のままに動き、時に感情を殺す。そうやってどんどん自らを自滅に追い込むのだ。

ー愚かな生き物だ。

自滅の道に入ろうとする人間、それを止める人間。
信頼関係と絆がなければ、そんなことできやしないのだから。


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