Each other's backs
Don't forget shackles and vows
「お願いだ有賀…俺を…殺してくれ…」
メサイアにしかできない行為に、俺はなんの躊躇いもなく引き金を引いた。…訳がない。
システムとしてのメサイアだと今まで散々突っぱねてきたのに。理解したくなった。
お前がどんな人間なのか、どうしてここに来たのか、なぜ裏切ったのか、なぜ仇の下につくのか。
あの時の俺の暗殺対象がお前じゃなかったら。
何か変わっていたのか。
俺はしばらく塞ぎ込んだ。任務はこなしていたのに、それもなぜか疲れ始めていた。
…あの時と、同じ感覚だ。
何も考えず、ただ与えられた命令をこなしていくだけ。
…俺は…何のために間宮を殺したんだろう…。
そんな考えが頭から離れなかった。
夢に魘されることもあった。最初に出てくるのは、ワールドリフォーミングのあの会場。ステージの上で幼き日の間宮がバイオリンを弾いている。俺は間宮を殺すために銃を構えていた、あの時。だが、あの時引き金を引くことはできなかった。間宮の音楽に、救われた。人間に戻れた気がしたからだ。次に出てくるのが、間宮をこの手で殺めたあの場所。目の前には間宮がいて、俺に銃を向けて立っている。俺も銃を間宮に向けて立っていたあの時。
俺はこのあとを知っている。
お互い引き金を引いて、お互い弾が当たる。
逃げようと思えば、避けようと思えばいくらでも避けられたはずだった。並の戦闘力しか持たなかった間宮でも、避けられる。
…なぜ、あの時避けなかった…?
なぜ、俺に殺される事を望んだ…?
どうして…?
「……間宮っ!」
自分が叫んだ声で目が覚める。呼吸が浅く、脈も早い。脂汗をかいて、右手を暗闇に伸ばしている。何を掴むわけでもなく、ただ力なく腕を下げる。
ただただ苦しい。今更になって、いなくなって後悔した。
もっと早く理解していれば、受け入れていれば間宮は寂しい思いをしなくて済んだ。あんな最期を遂げることもなかった。
…間宮…会いたいよ…。
お前のバイオリンが聞きたい…。
見えない間宮の鎖は俺を苦しめた。悪夢は必ず襲いかかっていた。いくら睡眠薬を処方されても、精神安定剤を処方されても、何も変わらなかった。
あんなことになるくらいなら、もうメサイアなんていらない。
そう思い始めたのもこの頃だった。
やっと単独任務が出来るくらいまで落ち着いた頃、俺は加々美いつきと出会った。正確には、一嶋さんに「君の新たなメサイアだ」と言われたことから始まる。
いつきは間宮と瓜二つで、何度かいつきを間宮と呼び間違えた。いつきとメサイアを組んだ後も、何度も何度も同じ悪夢が襲いかかっていた。起きると手が震えている時もあった。何度も夜中に抜け出してトレーニングをしたりした事もある。それでも、間宮の影は消えることがなかった。
『間宮の二の舞をしたくなかったら、素直になることだよ、有賀さん』
『あなたに課した試練…乗り越えなければね』
周にも、百瀬さんにも言われた。徐々に受け入れ始めた俺は、決意の証として自身のタグをいつきに預けた。昔と違う、深い関係になった今でも俺のタグはいつきが持っている。
2人で卒業ミッションを越えてもサクラになっても離れることはなかった。
間宮の事を忘れる訳じゃない。
俺が間宮を殺した事を忘れてはならない。
それはきっと、俺がサクラとして散りゆくまで背負い続ける大きな枷だ。
でも、俺はもう1人じゃない。
俺にはいつきがいる。背中を任せておける、大切な相棒がいる。
「涼ー?どうしたの?」
膝の上に乗せていたいつきが訝しげに俺を見上げる。
「…何でもない」
俺はいつきを後ろから抱きしめた。
こいつは何があっても俺が守る。
そう心に誓って。
メサイアにしかできない行為に、俺はなんの躊躇いもなく引き金を引いた。…訳がない。
システムとしてのメサイアだと今まで散々突っぱねてきたのに。理解したくなった。
お前がどんな人間なのか、どうしてここに来たのか、なぜ裏切ったのか、なぜ仇の下につくのか。
あの時の俺の暗殺対象がお前じゃなかったら。
何か変わっていたのか。
俺はしばらく塞ぎ込んだ。任務はこなしていたのに、それもなぜか疲れ始めていた。
…あの時と、同じ感覚だ。
何も考えず、ただ与えられた命令をこなしていくだけ。
…俺は…何のために間宮を殺したんだろう…。
そんな考えが頭から離れなかった。
夢に魘されることもあった。最初に出てくるのは、ワールドリフォーミングのあの会場。ステージの上で幼き日の間宮がバイオリンを弾いている。俺は間宮を殺すために銃を構えていた、あの時。だが、あの時引き金を引くことはできなかった。間宮の音楽に、救われた。人間に戻れた気がしたからだ。次に出てくるのが、間宮をこの手で殺めたあの場所。目の前には間宮がいて、俺に銃を向けて立っている。俺も銃を間宮に向けて立っていたあの時。
俺はこのあとを知っている。
お互い引き金を引いて、お互い弾が当たる。
逃げようと思えば、避けようと思えばいくらでも避けられたはずだった。並の戦闘力しか持たなかった間宮でも、避けられる。
…なぜ、あの時避けなかった…?
なぜ、俺に殺される事を望んだ…?
どうして…?
「……間宮っ!」
自分が叫んだ声で目が覚める。呼吸が浅く、脈も早い。脂汗をかいて、右手を暗闇に伸ばしている。何を掴むわけでもなく、ただ力なく腕を下げる。
ただただ苦しい。今更になって、いなくなって後悔した。
もっと早く理解していれば、受け入れていれば間宮は寂しい思いをしなくて済んだ。あんな最期を遂げることもなかった。
…間宮…会いたいよ…。
お前のバイオリンが聞きたい…。
見えない間宮の鎖は俺を苦しめた。悪夢は必ず襲いかかっていた。いくら睡眠薬を処方されても、精神安定剤を処方されても、何も変わらなかった。
あんなことになるくらいなら、もうメサイアなんていらない。
そう思い始めたのもこの頃だった。
やっと単独任務が出来るくらいまで落ち着いた頃、俺は加々美いつきと出会った。正確には、一嶋さんに「君の新たなメサイアだ」と言われたことから始まる。
いつきは間宮と瓜二つで、何度かいつきを間宮と呼び間違えた。いつきとメサイアを組んだ後も、何度も何度も同じ悪夢が襲いかかっていた。起きると手が震えている時もあった。何度も夜中に抜け出してトレーニングをしたりした事もある。それでも、間宮の影は消えることがなかった。
『間宮の二の舞をしたくなかったら、素直になることだよ、有賀さん』
『あなたに課した試練…乗り越えなければね』
周にも、百瀬さんにも言われた。徐々に受け入れ始めた俺は、決意の証として自身のタグをいつきに預けた。昔と違う、深い関係になった今でも俺のタグはいつきが持っている。
2人で卒業ミッションを越えてもサクラになっても離れることはなかった。
間宮の事を忘れる訳じゃない。
俺が間宮を殺した事を忘れてはならない。
それはきっと、俺がサクラとして散りゆくまで背負い続ける大きな枷だ。
でも、俺はもう1人じゃない。
俺にはいつきがいる。背中を任せておける、大切な相棒がいる。
「涼ー?どうしたの?」
膝の上に乗せていたいつきが訝しげに俺を見上げる。
「…何でもない」
俺はいつきを後ろから抱きしめた。
こいつは何があっても俺が守る。
そう心に誓って。
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