Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜
後門の狼さんですか?
階段を40ほど降ったところで、1度班は小休憩を挟んだ。
途中で倒れていた3人組を小脇に抱えて下ってきたのだ。普通のダンジョンならばまずできない、ありえないことだろう。
しかし、なかなかシンプルな構造なのだか、ずっと同じところを回っているようにシルティスは感じていた。
「このダンジョン、どの部屋も構造が変わらなさすぎない?」
「恐らく、即興で作られたのではないかと思われます。現に我々の位置情報は着実に反応へと近づいておりますので」
「そう。ならいいわ、ありがとう」
「いえ、責務ですので」
バルトラの作った機関の所員たちは皆、元はあの個性溢れる勇者たちだというが、しっかりと統制のとれた、かつての世界では見ることのなかった勇者たちの姿にシルティスは戸惑うばかりだ。
勇者とは、自信家で愚かな生き物。それが、魔王時代にシルティスの見てきた勇者だった。
映士やカスカ、コウジは彼女の中では変わり者の勇者という部類だった。自信家であっても、愚かではなかった。自身に対する裏付けがあり、自身の弱点もしっかりと把握していた。
少なくとも彼女の目にはそのように映っていたのだ。
皮肉なものだ。殺されて元の世界に帰ることで、少年少女たちは大人に成長したというのだから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ……
ワレハゾウオヲツカサドルモノ
ガンライカラソウアルカナドワレハシラズ、ワレハワレジシンノコトシカワカラヌ
シカシ、タダヒトツゼッタイテキニカクジツトイエルモノガヒトツ
ソレハ……ニンゲンヘノゾウオダ
ブンメイガニクイ、ワレラヲオイテハッテンシテイクセイメイガニクイ、ワレラノケンノウヲウバイサッタニンゲンガニクイ
ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ……
ダカラゼッタイニワレハヒトヲユルサナイノダ
イマオコナワレテイルコレハセンソウナドトイウナマヌルイモノデハナイ
ジュウリンギャクサツ、スベテノイノチハワレラガテノウチニ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あー、もう、どうなってるの、これ!?」
急に上層の階から大量の狼が走り降りてきて、シルティスたちを襲う。
「ヴァァァ、ヒトヨ、イネシネホロベキエサレェ!」
「狼のくせに軽快に人間への悪口吐きまくるのねっ!」
何度も何度も追いかけてくる狼たちに嫌気がさし、ついに戦えるものを後方に配置して戦闘をしながら下ることになったがしかし、狼たちの数の多さはもちろん、一体でもかなりの戦力であったためになかなか手こずる。
「あーもう、こっちの世界に来てからはもうオーバーライトが使えなくなっちゃったし……」
オーバーライトを使えば一時的にでもこの場所に大きな壁を作って狼たちをせき止めることが出来るのだが、肝心なオーバーライトはこちらの世界に来る時に使えた1回きりで、その後はスキル欄から消失してしまった。
「シルティス様、先に班員4人に先程の3人を連れて向かわせます。その間我らはここで奴らを抑えるので、さぁ先に!」
「馬鹿ね、そんなことしたらあなた達まで死んじゃうでしょうが! あなた達、曲がりなりにも勇者でしょう、世界救う前に死んでどうするのよ!」
「我々とて同じことを繰り返す気は毛頭ございません! がしかし、今回はこれが最善の手と思い提案した次第です」
「いいから喋ってないで手を動かして!」
使うまいとして収納魔法に閉まっていた二本の剣を引き出す。
「紅羽、黄羽、行くわよ!」
かつて、映士が使っていた二本の剣。勇者で初めて2人の魔王を下した映士はあちらの世界では一種の崇拝の対象のようなものになっており、シルティスがこちらに持ち出す前はカスカが王宮へと持ち帰って、城の地下の空間に祀られていた。
多大な魔力を映士に浴びせられ、地下で丹念に完全修復を施されたその刃は星のように輝き、魔力を常に放つ魔剣と化していた。
そして、そんな魔剣だからこそ彼女の剣技はしっかりとした形を得る。
「『一閃』『二斬』『三打』『四滅』『零生』! 5たびのこの剣激で、あなた達の命、屠ってあげる!」
魔王時代に使っていた剣技を再び使うことになるとは彼女自身も思っていなかっただろう。知あるものを殺す剣技はもう使うべきではないと自身で封印していたのだから。
しかし、相手が一方的な虐殺者で人を恨む生き物なのなら話は別だ。封印していたものを遠慮なく解き放つことが出来る。
「一閃。それは全てを薙ぎ払う横薙ぎの剣閃」
ダンジョンの壁に亀裂が入るほどの強烈な薙の剣が繰り広げられる。
「二斬。それは全てを切り伏せる悪しき鬼の歯型」
何か巨大な生き物が狼たちを屠ったかのように、狼たちの体の至る所に刺傷がつく。
「三打。それは全てを叩き折る巨人の鉄槌」
今まで切り伏せられた狼たちの死体の上に、新たに頭蓋を砕かれた狼たちの死体が重なる。
「四滅。それは全てを滅し亡きものとする神の怒り」
重ねられた死体諸共、狼たちを塵へと変える無慈悲な一撃が振るわれる。
「零生。それは全てを従属させる導き手の祈祷」
塵となった狼たちの死体は、後に続く狼たちの体を巻き込んで中型のゴーレムへと変質し、さらにあとに続く狼たちを押さえ込んだ。
「零生は上手くいくか一か八かだったけど、なんとか出来て良かったわ。さぁ、ゴーレムがあの狼たちを抑えているうちにできるだけ地下へ下るわよ!」
シルティスのその一声で、12班の面々は再び地下へと降り始めた。
途中で倒れていた3人組を小脇に抱えて下ってきたのだ。普通のダンジョンならばまずできない、ありえないことだろう。
しかし、なかなかシンプルな構造なのだか、ずっと同じところを回っているようにシルティスは感じていた。
「このダンジョン、どの部屋も構造が変わらなさすぎない?」
「恐らく、即興で作られたのではないかと思われます。現に我々の位置情報は着実に反応へと近づいておりますので」
「そう。ならいいわ、ありがとう」
「いえ、責務ですので」
バルトラの作った機関の所員たちは皆、元はあの個性溢れる勇者たちだというが、しっかりと統制のとれた、かつての世界では見ることのなかった勇者たちの姿にシルティスは戸惑うばかりだ。
勇者とは、自信家で愚かな生き物。それが、魔王時代にシルティスの見てきた勇者だった。
映士やカスカ、コウジは彼女の中では変わり者の勇者という部類だった。自信家であっても、愚かではなかった。自身に対する裏付けがあり、自身の弱点もしっかりと把握していた。
少なくとも彼女の目にはそのように映っていたのだ。
皮肉なものだ。殺されて元の世界に帰ることで、少年少女たちは大人に成長したというのだから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ……
ワレハゾウオヲツカサドルモノ
ガンライカラソウアルカナドワレハシラズ、ワレハワレジシンノコトシカワカラヌ
シカシ、タダヒトツゼッタイテキニカクジツトイエルモノガヒトツ
ソレハ……ニンゲンヘノゾウオダ
ブンメイガニクイ、ワレラヲオイテハッテンシテイクセイメイガニクイ、ワレラノケンノウヲウバイサッタニンゲンガニクイ
ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ……
ダカラゼッタイニワレハヒトヲユルサナイノダ
イマオコナワレテイルコレハセンソウナドトイウナマヌルイモノデハナイ
ジュウリンギャクサツ、スベテノイノチハワレラガテノウチニ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あー、もう、どうなってるの、これ!?」
急に上層の階から大量の狼が走り降りてきて、シルティスたちを襲う。
「ヴァァァ、ヒトヨ、イネシネホロベキエサレェ!」
「狼のくせに軽快に人間への悪口吐きまくるのねっ!」
何度も何度も追いかけてくる狼たちに嫌気がさし、ついに戦えるものを後方に配置して戦闘をしながら下ることになったがしかし、狼たちの数の多さはもちろん、一体でもかなりの戦力であったためになかなか手こずる。
「あーもう、こっちの世界に来てからはもうオーバーライトが使えなくなっちゃったし……」
オーバーライトを使えば一時的にでもこの場所に大きな壁を作って狼たちをせき止めることが出来るのだが、肝心なオーバーライトはこちらの世界に来る時に使えた1回きりで、その後はスキル欄から消失してしまった。
「シルティス様、先に班員4人に先程の3人を連れて向かわせます。その間我らはここで奴らを抑えるので、さぁ先に!」
「馬鹿ね、そんなことしたらあなた達まで死んじゃうでしょうが! あなた達、曲がりなりにも勇者でしょう、世界救う前に死んでどうするのよ!」
「我々とて同じことを繰り返す気は毛頭ございません! がしかし、今回はこれが最善の手と思い提案した次第です」
「いいから喋ってないで手を動かして!」
使うまいとして収納魔法に閉まっていた二本の剣を引き出す。
「紅羽、黄羽、行くわよ!」
かつて、映士が使っていた二本の剣。勇者で初めて2人の魔王を下した映士はあちらの世界では一種の崇拝の対象のようなものになっており、シルティスがこちらに持ち出す前はカスカが王宮へと持ち帰って、城の地下の空間に祀られていた。
多大な魔力を映士に浴びせられ、地下で丹念に完全修復を施されたその刃は星のように輝き、魔力を常に放つ魔剣と化していた。
そして、そんな魔剣だからこそ彼女の剣技はしっかりとした形を得る。
「『一閃』『二斬』『三打』『四滅』『零生』! 5たびのこの剣激で、あなた達の命、屠ってあげる!」
魔王時代に使っていた剣技を再び使うことになるとは彼女自身も思っていなかっただろう。知あるものを殺す剣技はもう使うべきではないと自身で封印していたのだから。
しかし、相手が一方的な虐殺者で人を恨む生き物なのなら話は別だ。封印していたものを遠慮なく解き放つことが出来る。
「一閃。それは全てを薙ぎ払う横薙ぎの剣閃」
ダンジョンの壁に亀裂が入るほどの強烈な薙の剣が繰り広げられる。
「二斬。それは全てを切り伏せる悪しき鬼の歯型」
何か巨大な生き物が狼たちを屠ったかのように、狼たちの体の至る所に刺傷がつく。
「三打。それは全てを叩き折る巨人の鉄槌」
今まで切り伏せられた狼たちの死体の上に、新たに頭蓋を砕かれた狼たちの死体が重なる。
「四滅。それは全てを滅し亡きものとする神の怒り」
重ねられた死体諸共、狼たちを塵へと変える無慈悲な一撃が振るわれる。
「零生。それは全てを従属させる導き手の祈祷」
塵となった狼たちの死体は、後に続く狼たちの体を巻き込んで中型のゴーレムへと変質し、さらにあとに続く狼たちを押さえ込んだ。
「零生は上手くいくか一か八かだったけど、なんとか出来て良かったわ。さぁ、ゴーレムがあの狼たちを抑えているうちにできるだけ地下へ下るわよ!」
シルティスのその一声で、12班の面々は再び地下へと降り始めた。
コメント