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Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜

ニムル

我を失うとこうなるんですか?

「あちゃー、僕は負けちゃったのか」

 あっけらかんとした顔でこちらを見つめるエスメラルダ。魔力行使を封じる縄で縛ったところ、武器を出すことさえままならなくなったようだ。

 え、あの武器魔術なん? という素朴な疑問が浮かんだが、たしかにあんな化け物じみたエイミングをしていたのだから魔法か魔術か、なんかそんなものなのだろう。

「で、魔王紋が欲しいんだっけ?」

「そうだ、俺たちはな。ミツアキたちは違うらしいが」

「まぁ、神様に頼まれて僕を連れ戻しに来たんだろうね」

「ああ。てなわけだから、魔王紋をとっとと適当な雑魚にでも譲渡してもらおう。その雑魚ぶっ飛ばせばそれで魔王討伐終わりだからな」

「残念だけど、僕は紋章を持っていないよ?」

「なんじゃとう!?」

 勢いよく飛び上がってきたのは南の魔王だった。

「おおお、おぉい、どういう事じゃ! 私の魔王紋をどこにやりおった!」

「僕は頼まれたから君から紋章奪っただけだからね。実際に紋章を持っていったのは別の人さ」

 あー、これまためんどくさいやつだ……なんなん、本当になんなん、最初のバルトラクソザコナメクジはただのチュートリアルだったってことかな? あはは、マジで笑えねぇよ、早く帰りたいんだよ、尺巻けよ世界。

「誰が持って行った? とっとと教えてくれ。俺は早く地球に帰りたいんだ」

「へぇ、それは無理だと思うけどね」

「は?」

「だって、そいつは僕にこう言ったからね。あと少しで宇宙が滅ぶって。星単位でどうとかよりも、まず世界をおおってる概念から無くなるんだ」

「……」

「今更自分のいた世界に帰りたいとか、冗談にも程があるよ!」

 大声でケタケタと笑い声をあげるエスメラルダ。

 何を言っているかがわからない。宇宙が滅ぶ? なんだよそれ。

「あっはは、なにぼーっとしてるのさ? 驚いて何も言えなくなっちゃったのかい?」

「黙れ」

 うるさい6本足のハエさんは頭部を地面に激しく擦り付けて四肢を床に並行においてこれ以降の生命活動中に二度と口を開かないでください、の略を手短に伝え、エスメラルダの後頭部を思い切り地面に押し付ける。

「がふっ!?」

 こんな奴の行っていることは信じられない。第一、ぽっとでの三下みたいな雑魚さんが死にかけの状態ではなった言葉なんて、信用するに足りる言葉では無いことは確かだ。

 しかし、ほんの少しでもその可能性、事実である可能性があるのならば、俺の今後はどうなる?

 家に大量に、手入れもせずに放置してきてしまったフィギュアたち嫁たちを二度と見ることもなく死ぬことになるのか?

 予約するだけして視聴することなくブルーレイに溜め込まれているアニメたちを、1度も見ることなく死ぬことになるのか?

 今後発売されるであろう数々のギャルゲーを未プレイのまま死んでいくことになるのか?

 ありえない、許せない、許さない、終わらせない、世界を滅ぼそうとするだ? かかってこいよ、本気出したヲタクの力を見せてやんよ。

「……手始めにこいつを見せしめにするところから始めるか?」

「や、やめい! そいつは私たちがネオンワールドに持って帰る!」

「わ、わしの魔王紋……」

「……ちっ」

 見せしめを用意しておけば自分がどうなるかわかって簡単に色々諦めてくれるかとも思ったんだがそうもいかないらしいし、そもそもこの考え方は人が良すぎるか。

 魔王を倒すことはこれからも必要過程だろう。なぜなら、恐らくラスボスが考えている宇宙崩壊のシナリオは神々すら殺せるという魔神と鬼神の復活だからだ。

 少なくとも現段階で俺に開示されている情報ではそう考える他ない。

 ならばやることはひとつだ。

 魔王を殺して殺して殺し、殺し殺し殺し殺し殺す。魔神や鬼神の復活なんて一切考えさせる間もなく、ただひたすらに鍵となる魔王たちを殲滅する。

 自由と愛を奪われないためのイキリヲタクの直情的思考だが、なんの問題もない。

 ただ元の世界に帰りたいだけ、安全な場所で安定した生活を送りたいだけの俺にこれだけ怒りを覚えさせたんだ。何なら封印されてるとかいう魔神と鬼神だって、二度と蘇ることのないようにこの世から葬ってやる。

「おい、元魔王。お前を魔神たちを殺すための必要戦力として雇う。お前だって雑魚を倒すことくらいなら貢献できるだろう?」

「ま、魔神様に忠誠を誓った身、貴様なんぞに貸してやる力なぞないわ!」

「じゃあ死ねよ」

 こちとらただでさえ情緒不安定なのに意味わからんヘンテコな世界に連れてこられてやれ魔王を倒せだの世界を救えだの。しかも全てこなしてからじゃないと元の世界に帰れないだの、理不尽すぎるにも程がある。

 俺はどこぞの異世界転移小説の主人公様のように寛容でなければ、優しくもない。この世界で生き物を殺めても元の世界で罪に囚われることがないのなら、邪魔なものは消してでも……

「や、やめ、ろ……」

 ……気づかない間に、俺の両手は元魔王の首を締めていた。

「アハハハハハハハハハハ! ヤッタネ、カッタヨ、マサカボクガアノテイドデヤラレルワケガナイダロウ? 『コトノマダン』、ボクノウチコンダフカシノタマサ!」

 エスメラルダの声が、ひどく機械的に、うるさく頭に響く。

「サイキョウノオトコハモウクルッタ、アトハキミガモンショウヲカイホウスレバケイカクハオワルヨ! サア、ハヤク、ハヤクボクノネガイヲカナエテオクレヨ!」

「黙りなさい」

 その声は、頭に響いていた機械音を一瞬でかき消した。

「ごめんね」

 急に視界に飛び込んできた何かがそう呟いたあと、俺の胸を鋭い剣が貫いていた。

 何が起こった? 意味がわからない。なんで胸を貫かれた? どうして?

 色々な思考が頭に浮かんだが、それらの思考は死の間際に現れたステータス画面を見て吹き飛んだ。

 眷属欄にあるはずの見知った名前が消えていた。

「ごめんね」

 再び聞こえた声の方向に目をやる。

 そこには、あの日俺が作った剣で俺の胸を貫くシルティスの姿があった。

 あぁ、そうか。俺はまた間違えたらしい。どこかで決定的に選択肢を間違えたのだ。

 血溜まりの中に立ち、目に大粒の涙を浮かべるシルティスの姿を見ながら、徐々に意識は薄れ、体の力は抜けていき、こうして俺は、もう何度目かも忘れてしまった死を体感することになったのだった。

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