Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜
とりあえず説明してもらえませんか?
『ぬぬ、お、おぬしやるではないか……』
『うわー、姉さん素が出てるね……』
「え、あれ、素なんだ?」
急に武士口調になった魔王に少し引いてしまったのだが、妹曰く、この状態が素らしい。
『この私に本気を出させるとは、よもや生きて帰れると思うなよ!』
「さっき軽く殴られただけで残骸に叩きつけられてたのどこの誰だよ」
『わ、私を舐めるんじゃないぞ! 私はな、私はな、残虐非道を極めた冷酷非情な大魔王ぞ!』
「……」
なんでだろ、ついさっきまで地味なりにも大物感があったのに、素が出たと単にとんでもなく小物感が増してくよ、この魔王様。
「おい、シルティス。こいつ本当に魔王なのか?」
「ええ。私もこの子がこんなに萎縮してる姿は初めて見たわ。もしかしてご主人、何かこの子を萎縮させるような常時発動のスキルでも持ってるんじゃないの?」
「えー、なんかパッシブのスキルあったっけな、そんな威嚇効果のあるやつ」
少しずつ近づいて攻撃されないように牽制をしながらスキル欄を探すが、全く見つからない。
『くっ、生まれながらの王であるこの私に、ここまでの痴態を晒させるか貴様ァ!』
「いや、だから何を嫌がってるかがわからないんだよね」
『貴様、まさか気づいておらんのか……なら良い、私自ら貴様のせいに引導を渡し、へぶっちょめりばっ!?』
あー、なんか腹たったから思いっきり上に蹴り上げたあとで胸ぐら掴んで地面に叩きつけちゃった、死んでないよね、まだ。
『ひ、人が話してる途中でなんじゃ、なんじゃ! う、うぅ、なんかイースベル共は私共に領地のことはおまかせくださいとか言っときながら死によるし、貴様らは意味もなくただ殺しにかかってくるし、なんなんじゃもう。私、魔王! わかる!?』
『あー、家の姉さん基本的にへっぽこだから……イースベルに領地のこと全部任せてたとかは初めて聞いたけど……』
「オイ、こいつほんとに魔王か? 俺ァ、さっきからこいつにゾロアスター打ち込もうとしてたけど、発動しねぇんだよ」
ヤン兄がそう言うと、エルンがまるで慌てたように叫んだ。
『姉さん、背中を見せてー』
『な、何をしよる、妹よ……あ、そこダメっ、ちょっ、いやっ、おいっ!』
鎧を剥がそうとするが、エルン自体も鎧のために上手くいかないようだ。
「……あー、シルティス。手伝ってあげなさい」
「……なんでいつも魔王との戦いだけ格好つかなくなるのかしらね……完全にネタパートってやつよね、ご主人の知識的に言うと」
「皆まで言うな、もうどうにもならないだろ、これが天命だ」
適当なことを言って、シルティスに鎧を脱がすのを手伝わせる。
『お、おい、ちょっと、暴帝まで来てるんじゃなっ、うにゃーーーー!?』
シルティスの細い手が、魔王の鎧の内側にするすると入り込んで内側から鎧を剥がしていく。
『う、ううぅ……』
鎧を剥がされて全身が顕になってしまった南の魔王に同情しつつ、ふと彼女の背中を見つめる。
背中が大きくはだけた紫色のロングドレスを着こみ、黒色のハイヒールを履いていた彼女の背中には、本来あるはずのものが見当たらなかった。
「え? 魔王紋がない?」
一気に気の抜けた声色でシルティスがそう呟くと、一同が泣きじゃくる魔王に近づいて各々に背を確認する。
「ねぇな」
『ない!?』
「ないですね」
「ないわね」
「ないねぇ」
「シルティス、こんなこと有り得るのか? 魔王の背中に魔王紋がないなんて」
「普通ないわね。いやでも、よく考えたら最初からなかったっていう可能性は検討ついてたかも」
「どういうことだ?」
シルティスが思案顔になってそう呟くので、思わず問いただす。
「私たちが殺されたのが、魔力の量が多くて魔王紋を奪うほどの力がある人間っていう理由だったとしたら、あそこの兵士たちが殺されなかった理由がわかるでしょ?」
「まぁ、それは」
「そして、イースベルがあそこまで簡単に倒せたのも、魔王紋がなかったから際限なく魔力を送るっていういつもの行為ができなかったから、だとしたら?」
「え、いや、普通にそこそこ強くなかったか?」
「俺から見たら雑魚みてぇなもんだったけどな!」
ヤン兄のドヤ顔イキリ発言は放置して、話を進める。
「まさか、最初の個体にだけ魔力を多く与えて、一撃決戦に使用とした、とかそんなことか?」
「でしょうね。でなきゃ、最初の一体に何度もループでご主人がやられまくったのに、後であの集団を倒し切るっていうか、攻撃を交わし切ることを一周もループせずに出来るとは思わない」
『う、うぅ、よ、よくぞ見破ったな、私はもう魔王ではないからな、貴様らにはこのようにフランクに話をかけてやろう!』
泣きながらも変に威厳を保とうとする元魔王。いやいや、あんた今もう魔王では無くなったって言ったばっかよね? まさかまだ変な魔王プライド引きずってるんじゃないよね?
『とにかく姉さん、どうしてこうなったのか、事の顛末を位置からちゃんと説明してもらわないと』
ビクビクとして今にも泣き出しそうなこれまたサイズ感小さめな元魔王様と、自分が倒そうとしていた相手が元魔王になっていたという衝撃の事実をうまく受け止められていない妹。
そしてそんな2人を呆然と俺達が見つめている中、説明の声は別の場所からふと届いてくる。
『やぁ、諸君。君たちの来訪を待っていたよ。特にそこの【歯牙本 光明】くん』
いつの間にやら俺達の背後にたっていたそれが話しかけてきたかと思うと、プツンと糸が切れてしまったかのように意識が途切れたような感覚が頭を襲い、朦朧としてくる。
『ごめんけど、まだ僕の計画は終われないんだ。ここで消えてもらうよ?』
ニッコリと笑顔で語るそれは、最後にこう言い放つ。
『死の呼び声』
それは、この場にいた全員の命を奪うのには十分すぎる死神の一撃だった。
『うわー、姉さん素が出てるね……』
「え、あれ、素なんだ?」
急に武士口調になった魔王に少し引いてしまったのだが、妹曰く、この状態が素らしい。
『この私に本気を出させるとは、よもや生きて帰れると思うなよ!』
「さっき軽く殴られただけで残骸に叩きつけられてたのどこの誰だよ」
『わ、私を舐めるんじゃないぞ! 私はな、私はな、残虐非道を極めた冷酷非情な大魔王ぞ!』
「……」
なんでだろ、ついさっきまで地味なりにも大物感があったのに、素が出たと単にとんでもなく小物感が増してくよ、この魔王様。
「おい、シルティス。こいつ本当に魔王なのか?」
「ええ。私もこの子がこんなに萎縮してる姿は初めて見たわ。もしかしてご主人、何かこの子を萎縮させるような常時発動のスキルでも持ってるんじゃないの?」
「えー、なんかパッシブのスキルあったっけな、そんな威嚇効果のあるやつ」
少しずつ近づいて攻撃されないように牽制をしながらスキル欄を探すが、全く見つからない。
『くっ、生まれながらの王であるこの私に、ここまでの痴態を晒させるか貴様ァ!』
「いや、だから何を嫌がってるかがわからないんだよね」
『貴様、まさか気づいておらんのか……なら良い、私自ら貴様のせいに引導を渡し、へぶっちょめりばっ!?』
あー、なんか腹たったから思いっきり上に蹴り上げたあとで胸ぐら掴んで地面に叩きつけちゃった、死んでないよね、まだ。
『ひ、人が話してる途中でなんじゃ、なんじゃ! う、うぅ、なんかイースベル共は私共に領地のことはおまかせくださいとか言っときながら死によるし、貴様らは意味もなくただ殺しにかかってくるし、なんなんじゃもう。私、魔王! わかる!?』
『あー、家の姉さん基本的にへっぽこだから……イースベルに領地のこと全部任せてたとかは初めて聞いたけど……』
「オイ、こいつほんとに魔王か? 俺ァ、さっきからこいつにゾロアスター打ち込もうとしてたけど、発動しねぇんだよ」
ヤン兄がそう言うと、エルンがまるで慌てたように叫んだ。
『姉さん、背中を見せてー』
『な、何をしよる、妹よ……あ、そこダメっ、ちょっ、いやっ、おいっ!』
鎧を剥がそうとするが、エルン自体も鎧のために上手くいかないようだ。
「……あー、シルティス。手伝ってあげなさい」
「……なんでいつも魔王との戦いだけ格好つかなくなるのかしらね……完全にネタパートってやつよね、ご主人の知識的に言うと」
「皆まで言うな、もうどうにもならないだろ、これが天命だ」
適当なことを言って、シルティスに鎧を脱がすのを手伝わせる。
『お、おい、ちょっと、暴帝まで来てるんじゃなっ、うにゃーーーー!?』
シルティスの細い手が、魔王の鎧の内側にするすると入り込んで内側から鎧を剥がしていく。
『う、ううぅ……』
鎧を剥がされて全身が顕になってしまった南の魔王に同情しつつ、ふと彼女の背中を見つめる。
背中が大きくはだけた紫色のロングドレスを着こみ、黒色のハイヒールを履いていた彼女の背中には、本来あるはずのものが見当たらなかった。
「え? 魔王紋がない?」
一気に気の抜けた声色でシルティスがそう呟くと、一同が泣きじゃくる魔王に近づいて各々に背を確認する。
「ねぇな」
『ない!?』
「ないですね」
「ないわね」
「ないねぇ」
「シルティス、こんなこと有り得るのか? 魔王の背中に魔王紋がないなんて」
「普通ないわね。いやでも、よく考えたら最初からなかったっていう可能性は検討ついてたかも」
「どういうことだ?」
シルティスが思案顔になってそう呟くので、思わず問いただす。
「私たちが殺されたのが、魔力の量が多くて魔王紋を奪うほどの力がある人間っていう理由だったとしたら、あそこの兵士たちが殺されなかった理由がわかるでしょ?」
「まぁ、それは」
「そして、イースベルがあそこまで簡単に倒せたのも、魔王紋がなかったから際限なく魔力を送るっていういつもの行為ができなかったから、だとしたら?」
「え、いや、普通にそこそこ強くなかったか?」
「俺から見たら雑魚みてぇなもんだったけどな!」
ヤン兄のドヤ顔イキリ発言は放置して、話を進める。
「まさか、最初の個体にだけ魔力を多く与えて、一撃決戦に使用とした、とかそんなことか?」
「でしょうね。でなきゃ、最初の一体に何度もループでご主人がやられまくったのに、後であの集団を倒し切るっていうか、攻撃を交わし切ることを一周もループせずに出来るとは思わない」
『う、うぅ、よ、よくぞ見破ったな、私はもう魔王ではないからな、貴様らにはこのようにフランクに話をかけてやろう!』
泣きながらも変に威厳を保とうとする元魔王。いやいや、あんた今もう魔王では無くなったって言ったばっかよね? まさかまだ変な魔王プライド引きずってるんじゃないよね?
『とにかく姉さん、どうしてこうなったのか、事の顛末を位置からちゃんと説明してもらわないと』
ビクビクとして今にも泣き出しそうなこれまたサイズ感小さめな元魔王様と、自分が倒そうとしていた相手が元魔王になっていたという衝撃の事実をうまく受け止められていない妹。
そしてそんな2人を呆然と俺達が見つめている中、説明の声は別の場所からふと届いてくる。
『やぁ、諸君。君たちの来訪を待っていたよ。特にそこの【歯牙本 光明】くん』
いつの間にやら俺達の背後にたっていたそれが話しかけてきたかと思うと、プツンと糸が切れてしまったかのように意識が途切れたような感覚が頭を襲い、朦朧としてくる。
『ごめんけど、まだ僕の計画は終われないんだ。ここで消えてもらうよ?』
ニッコリと笑顔で語るそれは、最後にこう言い放つ。
『死の呼び声』
それは、この場にいた全員の命を奪うのには十分すぎる死神の一撃だった。
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