Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~

なつめ猫

魔王討伐作戦(2)




 家から離れた河原まで歩き水を汲む。
 そして、家まで戻り台所の瓶の中に入れる。
 何度も何度も、同じ作業を繰り返す。
 すでに台所の水瓶は一杯になっているが――、俺は気にせず何度も繰り返す。

「アルス、もういいわ」

 母親であるライラに話かけられた所で、俺はハッ! と、して周りを見渡す。
 日は既に沈みかけていた。
 
 ――そして、母親は俺の腕を掴んでいて心配そうな表情で見下ろしてきていることに気がつく。

「お母さん……」
「ご飯にしましょう」

 何を言ったらいいのか分からないのか母親は、俺が手にしていた青銅の御鍋を取り上げると居間まで連れていく。
 すでに夕食は出来ていて――、主に穀物がメインの食事が用意されていた。
 つまり、何時も通りの食事。

「食事……」
「アルスどうかしたの?」
「なんでもないです……」

 とりあえず何か口に入れておかないとな……。
 魔王討伐までに体を壊しても仕方ないし、何より栄養不足で動けなかったら洒落にならない。
 食欲は殆どない。
 それでも、箸を使い穀物を引いて一塊にして焼いた穀物のハンバーグのような物を食していく。

「ねえ。アルス」
「――?」
「もう止めない? これ以上は、体を壊してしまうわ。私は、貴方が大事なの。だから――、もう村はいいからアドリアンに言って逃げない?」
「お母さん……?」
「だって、アルスが魔王とかそんな物に関わって責任を感じるなんておかしいでしょう? 魔王討伐なんて国がやればいいだけの事なのよ? 無理してまで行う必要はないのよ……、だから……」

 その言葉に俺は首を振る。
 すでに俺、一人だけの問題ではない。
 フィーナを助ける! その為に、今の俺は動いているし、アルセス辺境伯にも力を貸してもらっている。
 そんな状況下で、俺一人だけ逃げるなんて選択肢は取れない。

「ごめん。それだけは出来ないです……」
「アルス……、わかったわ。だけど――、覚えておいて……、貴方の身を心配しているのは、私だけじゃないということを――」

 俺は小さく首肯する。
 夕飯を食べ終わったあとは、台所の瓶を空にしてもらい寝ずに何度も水を汲むために河原に行き川から水を汲んでは家まで戻ることを繰り返す。
 
「時間がない……」

 出来るだけの事はしないと――、今回は順調に進んでいるのだから失敗なんて出来ない。
 だから――。

 俺は寝ずに、何度も家と川を往復し続ける。
 そして――、それから3日が経過し――。

 魔王討伐の段取りが出来た当日を迎えた。
 
 
 

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