Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~
記憶の対価(25)
「……んっ――」
寝返りをうった拍子に息が出来なくなる。
しばらくもがいて「ぷはっ!」と、何とか呼吸が出来た俺は何が起きたのかと目をパチクリさせると、「アルスは誰にも渡さないわよ! ムニャムニャ」と言う母親の声が頭の上から聞こえてきた。
見上げると、とてもだらしのない締まりの無い顔をしている。
なるほど……。
どうやら寝返りをうった際に、母親の魔手に掴まって抱き寄せられた結果! 胸を顔に押し付けらえて呼吸が出来なくなったというところか。
それにしても、普段から胸が大きいとは思っていたけれど、寝ているとさらに大きく感じる。
まぁ、実の親と言う事もあって、まったく何も感じないけど……。
「ふむ……」
ふかっ! と言う擬音が頭の中で再生されてしまうくらい母親の胸に手を当てると柔らかくフカフカである。
まるでプラトンの哲学のように納得してしまう自分がいる。
それでも、異性として認識しないあたり人の遺伝子というのは偉大なのかも知れないムニュムニュムニュ。
「アルス?」
「ハッ! お母さん……!?」
いつから起きていたのか。
胸に手を当てていたら母親がまるで聖母のように微笑みを浮かべている。
「やっぱりアルスもお母さんが好きなのね!」
「――いえ。ちょっと興味があっただけです」
「アルスが満足するまで揉んでいいのよ?」
「そんなこと……」
おっぱいは夢とロマンが詰まっているとエライ先生が言っていたことがあり、前世の地球でも永遠の哲学だったことは言うまでもない。
もちろん、第三者的な意見で――。
だが! 俺にだってプライドという物がある。
与えられた餌を啄むだけの雛鳥と思われたら前世の知識を持って転生してきた意味がない! むにゅむにゅ。
「あんっ! アルスは揉むのが上手いわね」
「――っ!? そんなことは――」
母親に強く抱きしめられている影響もあり、手が胸から離すことが出来ない。
そして胸というのは、男にとって触り心地のいい物であり手が触れてしまえば触ってしまうのは本能であり拒むことは大変に難しい。
これには、さすがのコペルニクス先生であっても頷いてしまうことだろう。
「お母さん、そろそろ朝ですので離してください!」
「駄目よ! 離れたら、また夜までアルスニウムを補充できないじゃないの!」
ちなみに異世界にはアルスニウムのような物は存在しない。
宇宙で作られて合成された金属のような命名を母親はしているけれど、そんな物も存在しない。
母親が適当につけているだけで、決して疚しい意図的な事はなにもない。
「離してください!」
「絶対駄目! アドリアンがずっと留守なんだから! 寂しいんだから!」
そう言われてしまうと、魔王が悪いと言っても手段を講じたのは俺なのだから、さすがに罪悪感に囚われてしまう。
無理に、母親を引き剥がせない。
「観念したようね! そしたら、ゆっくりと一緒に寝ましょう!」
「朝食の準備とかは――」
さすがに朝食を食べに父親は帰ってくるはず。
食事を作るのは女性の仕事。
「むー」
どうやら、些か御不満のようではあったが母親は俺を離してくれた。
朝は寒いということもあり、人肌が離れるのは幾分心寂しい物はあったけれど、致し方ない。
「アルスくん……」
「アルス……」
「あらあら――」
「――え!?」
母親が、ようやく離れたところで開いた戸口からアリサとフィーナの顔が見えた。
二人とも、めっちゃ不機嫌そう。
ちなみに母親は何故か知らないけど、すごく優越感な表情を二人に向けている。
おかしいな。
二人とも、どうしてそんなに不機嫌なのかまったく想像がつかないぞ?
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