Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~

なつめ猫

子供たちのルール。




 現在、俺は手下になったアレクサンダーに村を案内してもらっている。
 騎士爵邸から見たとおり、村の中は未舗装で家々の大きさは騎士爵邸と大差がないか、それよりも少し大きいくらいだ。

 騎士爵邸って一体……、そんな疑問が頭の中に浮かんでくるが、どうせ俺は、この村からオサラバするのだ。
 細かいことを気にしなくても問題ないだろう。

「えへへ、アルスの旦那。ここに住んでいるフィーナと言う女は、中々器量よしですぜ!」

 10件ほどの家を案内してもらった所で、アレクサンダーが手を擦り合わせながら、俺に説明してきた。

「そうか……」
 
 異世界では、男に女を紹介するというのが子供の頃からでも流行っているのだろうか?
 そもそも、アルスの旦那って……精神的には47歳の中年だが、身体は5歳。
 とても、俺に使う言葉では無いと思うんだが……。

「あっ!? アル……ス?」

 考え事をしていると、家の中から一人の少女というか幼女が出てきた。
 透き通るような肌と、澄んだ空のような青い瞳。
 そして艶のある金色の髪の毛。
 きっと、成長すれば将来は美女になるのは間違いない。
 そんな少女が俺を見たまま、口を開けている。
 ふむ……。
 俺の中に統合されたアルスの知識には、フィーナという幼女のデータは無かったが……一体、どういうことだろうか?

「フィーナ! アルスの旦那が、お前をご所望だってよ!」
「え! 本当なの? アルス?」

 俺が考えている間に、アレクサンダーとフィーナが会話を始め、当人の関係ないところで話を進めようとしている。
 まったく、そういうのはやめてほしいんだが……。

「勘違いだ。アレクサンダー、案内はここまでいい。さっさと家に帰れ」
「――そ、それは!?」

 アレクサンダーは、俺の言葉を聞くと視線を建物の影へと向けていた。
 そこには、俺と戦って負けたジャイカルドが立っていて、俺と睨みつけてきている。
 恐らくは逆恨みという奴だろう。

「仕方ない。少し、待っていろ」

 今の俺は、47歳の中年社会人としての知識や経験をもっている。さらに言えば、営業職もした事があるしガキの一匹や2匹、どうとでも篭絡できる……はずだ……きっと……たぶん。

「おい、ジャイガルド様!」
「な、何だよ……」

 どうやら、俺に負けたことで少しは立場というか俺の話を聞くことを覚えたようだな。
 まぁ、これで覚えていなかったら主従関係が分かるまで殴るところだったから良かった。
 男同士の場合は、拳で語ったほうが早いからな。

「お前、年は何歳だ?」
「俺は……7歳だ!」
「ふむ……、ちなみにアレクサンダーは?」
「あいつは10歳だけど、何か関係あるのか?」
「いや――」

 ジャイガルドの言葉に俺は肩を竦める。

「ちなみに俺は5歳だ!」
「そんなのは知っている!」
「なるほど、つまり……お前は、俺が年下だからという理由で偉そうにしていたという訳か?」
「――そ、そうだ!」

 ジャイガルドの言葉に、俺は両手を組む。
 小さい頃だと子供同士の関係は、年功序列が基本だ。
 何せ、体格差も含めて多くの遊び方や、それに伴う広い友好関係もあるからな。そういう魅力があるからこそ、小さい子供の世界では年功序列というある意味、日本風な子供社会形勢が成り立っている。

 まぁ、上に立つ奴が有能なら、それで問題ないんだろうが――。
 その上に立つ人間が無能で悪質な自分の事しか考えてない奴だと、年功序列というのは悪にしかならない。
 何故なら、子供たちの間にあるのは下の子分を助けるという暗黙の了解があるからだ。
 それが虐げる対象になれば、それは非常に危険な物になる。 

「そうか……。すまなかったな」
「――へっ?」

 ここは威圧的に接するよりかは、目の前の男を煽てて使ったほうがいい。
 本来であるなら、アレクサンダーを立てるべきだが相手の強さで価値観をころころ変えるような奴は信頼できないからな。

「じつは、高熱で倒れてからというものハルス村で起きた出来事をまったく覚えていないんだ。アレクサンダーが言っていた。ジャイガルドは、男気に溢れる下っぱを気に掛ける男の中の男だと!」
「……そ、そう……なのか?」
「ああ、アレクサンダーも普段は、ゴミのような性格な奴だが根は正直な奴だ。だから、本人の前では褒めることはできないんだろうよ」
「そ、そうだったのか……俺は、てっきり強い奴に尻尾を振る奴だとばかりに……」

 ジャイガルドは思ったよりも頭の切れる奴のようだな。
 アレクサンダーの特徴をよく掴んでいる。

「あれだ、好きな奴の前では素直になれないだろ? それと同じだ!」
「――! アレクサンダーが俺のことを好き?」
「ああ、間違いないな……」

 おっと、ちょっと勢いに流されて適当なことを言ってしまった。

「ジャイガルド、勘違いするなよ? 好きと言っても友達としてだからな?」
「わ、わわ、分かっている!」
「分かっているならいいが……、それで、今から村の中を回ろうと思うんだが、仲直りのついでに一緒に遊ばないか?」

 俺は、握手のつもりで右手を差し出す。
 すると、一瞬考えたあとジャイガルドは、俺の右手を握ってきた。 
 
 さて、まずは子供同士のネットワーク構築への第一歩だな。
 魔王復活まで、あと20日。
 それまでに村を脱出できるか?





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