Free Life Fantasy Online

リアフィス

14

お母さんと妹と食事を済ませ、食休みを挟んでから午後のログインです。
ゲーム内は朝になりますね。
ログインすると私が露店を出していた場所に、知らない男性が露店を出していました。《裁縫》でしょうか。服系ですね。

「あ、おかえり。私の横に出すと良いよ」
「ただいま。そうしますね」
「お、初めまして。ダンテルだ。《裁縫》を上げているからよろしく。姫様?」
「はい、よろしくお願いします。ちなみに名前はアナスタシアですが、呼び方はもう姫様でも構いませんので」
「名前よりあだ名や通称が定着するのはよくある事だな、うん」
「学校とかであだ名で呼んでて、本名出てこない事あったなー」
「あったな。もはや原型ない奴とかたまにいたもんな」
「いたいた」

サルーテさんとダンテルさんは社会人ですね。物凄く懐かしげに話していますし、過去形です。

「しかし、良いドレスだな……色合いが悲しいが……」
「私も思いますが、アイテム名が色あせたシリーズなんですよね。仕様かと」
「なるほど……」

ちなみに、ダンテルさんとサルーテさんもそれぞれトップらしいですね。
エルツさんとプリムラさんと並んで出してるのですから、想像通りでしたが。
ちなみにトップと言っても、一番上と言う意味ではなく……上から一定以上と言う意味のトッププレーヤー『達』です。
MMOで誰が一番上か……なんか分かろうはずもなく。でも間違いなく有名で、良い物を作っているのがトップ生産者と言われる人達ですね。


露店をサルーテさんの隣に出して料理をせっせと作っていると、エルツさんとプリムラさんに続き、アルフさんとスケさんも帰ってきました。
そこへ妹もやってきました。1人では無く、PTを引き連れて来たようですね。
このゲームのPTは上限6人のはずですが……倍近くいますね?

「やっほー姉ちゃん! おっちゃん修理よろしく!」
「おう、ちょっと待て」

現状私とは逆側にいるエルツさんのところに突撃していくリーナ。
そして見覚えのある男性2人がこっちに。

「スターシャだな?」
「ああ、トモとスグか」
「おう。漸くフレンド登録な」
「オッスオッス」

リアルで智大ともひろすぐる
友人1号と2号で、小学校からの付き合いですね。
キャラクターネームはトモとスグだと学校では聞いてたけど、ゲーム内で会うのは初めてだったり。

トモは黒髪緑目の人間。武器は本の魔法アタッカーのようです。
スグは赤髪赤目のジャイアント……巨人種ですね。2メートル中盤……でしょうか。見た目通りのパワーファイターで、武器は両手槌ですね。

リーナとトモの2PTが来たので多かったようです。
それぞれが用のある生産者の場所へ向かいます。

「お姉ちゃんよくこのメンバーに並んで露店出したね……」
「うん? 4人ともフレンドだから。ダンテルさんとサルーテさんは今日だけど」
「多分だけど、現状姫様《料理》ではトップレベルだと思うよ? 今いくつ?」
「《料理》は……23ですね」
「ああ、やっぱり。掲示板組だと東の肉が手に入らないからって、15前後で難航してるはずだからね」
「そもそも料理人人口が現状じゃ少ない。もっと増えて欲しいもんだがな」
「なるほど、お姉ちゃん東の森でソロ狩りだもんね……素材はあるのか」
「料理も美味かったぞ?」
「リアルで食べてるから、お姉ちゃんの料理が美味しいのは知ってるけど……結構いい値段するね……。スープどっちがお勧め?」
「ベアね」
「ベアだな」
「ベアだね」
「ベア」
「一番美味しいのはベア。満腹度的にはステーキ。値段ならボア」
「全員推すね……。ベアとステーキ買おう」

この世界の料理は本当に美味しいと思います。リアルで熊鍋を作ってもこうはいきません。《料理》を取った甲斐がありましたね。問題があるとすれば、まだまだ序盤なので食材の選択肢が無いことでしょうか?

皆持ってる素材を売り、装備を修理してもらい、今日1日狩りに出るようです。休日ですからがっつりやるのでしょう。私もがっつり料理する予定ですからね。
今日中にスキル進化は……厳しいかな? 素材レベル的にも、後半は少し伸び悩みそうですからね。

「お、いるいる。あの子からステーキ買ったんだよ」
「なるほど。ドレスで料理してるの、結構シュールだな……」

……ああ、以前ステーキをPT分買っていった男性エルフの方ですね。

「やっほーセシルさん」
「やあやあアキリーナさん。相変わらず元気そうだね」

エルフの方の隣に人間の男性がいますが、どうやらリーナと知り合いのようで。
まあ、エルフの……ノルベールさんですね。PTメンバーなのでしょう。しかも、恐らくPTリーダーですかね。
リーナが私の料理を買わせようとしてるのは……まあ、放置しましょう。どうやら元々売ってれば買うつもりで来たようなので。

「エルツさん、修理お願いします」
「おう、待ってろ」
「プリムラちゃんよろしくー」
「おっけー」

次々と修理依頼が入っていますね。
皆考えることは一緒……と言うことでしょうか。休日ですからね。

「トモとスグのPTもトップに入ってるの?」
「一応な」
「大体中間ぐらいじゃねぇかな?」
「リーナは上の方な」
「へぇ……。あの2人……狐獣人と兎獣人ってリーナのリア友だよね?」
「そうだぞ。よく分かったな」
「結構遊びに来てたからねぇ……ここ最近見なかったけど、相変わらずか」
「ここ最近はずっとこれやってるだろうからな……」
「なるほど。納得」

そこへリーナと一緒にノルベールさんと、セシル……と呼ばれる方がやって来ましたが、ノルベールさんはトモとスグの方へ。

「やあ、トモスグさん」
「「区切れ!」」
「1人の名前みたいだよね」

ケラケラ笑ってそう言う美男エルフ、ノルベールさんです。
確かに、並べると1人の名前みたいですね。ともすぐ。

「お姉ちゃん紹介するよー。私が入賞した大会の優勝者」
「こんにちは、セシルです。えっとアナスタシアさんでしたよね?」
「はい、アナスタシアです。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。あっちでジャレてるノルベールPTのリーダーしてます」

ノルベールさんは前も言ったように、メイン武器が楽器の男エルフです。
演奏するスキルがあるので、それがメインなのでしょう。広範囲バフスキルですが、演奏中は行動に大きな制限が発生する、癖のあるスキルですね。
ちなみに使ってる楽器はマンドリンだそうですよ。

セシルさんは双剣だそうで、器用ですね。
対魔物対人共に優れているそうですが、なんたって扱いが難しいようです。
慣れていないと片方だけ使用してたり……とかですね。

「扱いで言ったらお姉ちゃんのレイピアも難しい分類なんだけどね……」
「ああ、レイピアなんだ? その持ち手的に細剣なのは分かったけど……」
「ドレスという見た目に合わせました」
「ああ、なるほど。確かにドレスに細剣はあいますね」

料理しながら雑談をするのも悪くありませんね。
皆揃って料理を買っていってくれますし。
挨拶とフレンド登録だけして、セシルさんはエルツさんのところへ。


〈《料理》がレベル25になりました〉
〈《料理》の【燻製の心得】を取得しました〉

「お……ボアとベアは灰汁抜きが必要なのでダメ……。ラビットよりウルフでしょうか。シンプルのなら手持ちの材料でいけますね……問題は……」

下味と乾燥にかかる時間でしょうか?
加湿と乾燥は《錬金》の5レベで覚えるようですね……少し上げましょうか?
蒸留水+薬草2+カッセイタケでHPポーションが作れるようですね。
……蒸留水がありません。
そこでふと、横を見ると……サルーテさんが蒸留水を自作していました。
調合キットに蒸留器があるようで、私の炭火の火力を使って作ってくれるなら貸してくれるそうです。

「何個欲しいの?」
「《錬金》を5レベにしたいだけなので、20個ぐらいでしょうか?」
「蒸留水は普通に店でも買えるから、そうだなー……ステーキ1個で値段的に120個かな」
「そうですか? ではこれで」
「使い方は分かるよね?」
「大丈夫です」

炭火の上にセットして、【飲水ウォーター】で水を注ぎます。後は待つだけ。
できたものをポーション用の空き瓶に移すと、蒸留水の瓶が完成です。
これをせっせと繰り返し、120個を超えた分は蒸留器と一緒にサルーテさんへ。

そしたら初級錬金キットを展開。
魔法陣が書かれている大きめの布に、素材を載せて【合成】です。

……ぼふん! という音と共にゴミができました。

「HPポーションそれなりに高レベルレシピだからねぇ……」
「そうなんですか?」
「チュートリアルとかで貰える初心者用って所謂初級なの。あれは50回復。無印は150回復。初級はスキル上げには使えないんだよね」

チュートリアルとか、最初から持ってるのは初心者用と別物扱いされており、お店では初級の名前で売られているそうです。
作り方は無印……つまりHPポーションを更に蒸留水で薄めるんだとか。
合成でも作れるけど、HPポーションと蒸留水の合成だから、レベル上げに使うにはお金がかかりすぎるようです。HPポーション買うにも今足りてませんからね。
最初は肥料とか木の矢がお勧めらしいですね。雑草と土、木の枝と何かの羽なんか持ってませんけど。
失敗でも経験値は入るので、素材が大量にあるHPポーションでやります。

っと、《錬金》を上げ始める前に下味だけでも付けておきましょう。時間がどのぐらいかかるか分かりませんからね。
まず料理酒を買う時についでに買っておいた空き瓶を用意します。砂糖も売ってましたが、高かったです……買いましたけど。


[道具] 空き瓶 レア:No 品質:C
  何かを保存するための、そこそこ大きな空き瓶。
  大きいのは難しいため、それなりに高価である。


これに水、塩、砂糖を投入して溶かします。
そしたら次、ウルフの肉を取り出し薄く切るのですが……この包丁では難しいので、切れ味抜群なレイピアでスライスしていきます。

「お姉ちゃんがレイピアで肉を切り始めた件について……」
「割りとよく見る光景だ。気にするな」

妹とエルツさんはスルーで。
そしたら包丁で玉ねぎとニンニクをスライス。
先程の瓶にスライスした肉、玉ねぎ、ニンニク、ローリエ、胡椒を投入します。
これで放置して染み込むのを待ちましょう。

では、《錬金》でゴミを量産します。
20個ゴミを生産した頃。

〈《錬金》がレベル5になりました〉
〈《錬金》の【加湿乾燥】を取得しました〉

目的の物を無事に覚えました。
後はお肉の下準備が終わってからですね。



リアルでは土曜日のお昼後、ゲーム内では朝だけあって、結構な人数がいる始まりの街。当然人数相応の喧騒……にも関わらず、大気を震わせ聞こえてくる雄叫び。

「……なんだ?」
「祭りの予感?」

再び聞こえた雄叫びは南の方からでした。
そして今度は空からホーホーと聞こえ、プレイヤー全員が声に釣られ上を見ます。

「フクロウ……ですか?」
「だと思うけど……見えないね」

と思ったのもつかの間、空から光の玉が降りて来て、こちらに向かって飛んできます。その光の玉は途中で、天を覆う巨大な白いフクロウへと変わり、街の上空を通過して再び天へと上って行きました。
視界の先には街の上空に光が残され、徐々に形を変えていきます。

「敵でも来るかな?」
「鳥……しかもフクロウですか。演出的に神の使いと言う可能性も……」
「ああ、ありそうだねぇ……」

光がぽんっと姿を変え、SEと共にログが更新されます。


〈〈ワールドクエストが発生しました〉〉
〈〈場所:始まりの街〉〉
〈〈該当エリアへと入った異人は自動的に参加状態へと移行します〉〉


「『なにーっ!?』」

街のそこらで声が上がりますが……住人がその声にビックリしていますね。
という事は……頭上のあれはプレイヤーにしか見えていないのでしょう。
上空にデカデカと表示される『ワールドクエスト』と言う文字は。

同時にワールドクエストに付いてのヘルプも更新されました。
しかしヘルプを読む暇もなく、上空の文字と共にログが流れます。


〈〈クエスト規模を確認中…………完了。Wクエストに設定〉〉
〈〈Wクエストに必要な役職に適切な異人達を検索中…………〉〉
〈〈総隊長…………完了。部隊長…………完了。各プレイヤーに申請を開始〉〉


はて、気のせいでしょうか?
目の前に『ワールドクエスト:総隊長への申請』で『はい/いいえ』と言う文字が見えるのですが……? まだPTプレイしていない私に総隊長をしろと?

「うお……部隊長申請来た……」
「セシルで部隊長なのか?」
「まあ、やるけどね」

空を見ると返答待機中……とかなってるので、押さないと進まないようですね……。
まあせっかくです、やりましょう。


〈〈申請した全員の参加を確認しました〉〉
〈〈残りのPTリーダーを分隊長に設定し、部隊長の元へ振り分けを開始〉〉
〈〈現在PTを組んでいない異人達は、Wクエストのヘルプを確認して下さい〉〉


「『ぎゃー! 視界がー!』」

ええ、周囲の叫びに同意です。これは酷い。設定弄らないとダメですね。
えっと……Wクエストの時は……自分のPTメンバーと隊長達の情報だけ見れれば十分ですね。あ、分隊長は無しで。数が多すぎるんですよ。

「うわ、お姉ちゃんの上に王冠が……あ、総隊長だ……」
「うん、なんか総隊長やれって申請来てた」
「あ、ほんとだね。おめでとう?」
「恐らくですが、種族またはスキルの問題では? ほら、統率系とかまさに必要そうですから」
「俺も統率系持ってるね。可能性は高そうだ」
「私は種族スキルで統率系上位を持っているので、総隊長にされたのかと……」
「なるほど。とりあえずミニマップで色変わってる方でも行こうか」
「そうですね。時間も……リアルで30分しか準備時間無いようですから」


〈〈ワールドクエスト:始まりの街防衛戦〉〉
〈〈場所:始まりの街〉〉
〈〈規模:Wクエスト〉〉
〈〈勝利条件:ゴブリンジェネラル率いるゴブリン軍団の殲滅または撃退〉〉
〈〈敗北条件:街への侵入を許す〉〉
〈〈開始まで残り……〉〉


上空ではクエスト内容が纏められ、カウントダウンが進んでいます。

「姫様、PT組もう?」
「総隊長ってPT組めるんですかね? ……試せば分かりますか」

アルフレートさんとほねほねさんにPTを申請すると、普通に組めたので問題は無いでしょう。これで《不死者の王族》と《王家の権威》によるバフがかかります。

さて、料理キットと露店を片付け、南の平原へと向かいましょう。
皆でぞろぞろと南へ歩いていきます。

「規模のWクエストだけど、ヘルプ見た感じ戦争クエストだね。ワールドの略じゃないっぽい」
「WarのWですか」

アルフさんはヘルプを見ていたようで。

「しかし、いきなりこんな大規模な物が来るとはね……」
「……ゴブリン狩りすぎたとか? ボスがゴブリンジェネラルだし」
「どうだろうね……問題は、ジェネラルがどのぐらいの強さなのか……だね」
「ぶっちゃけWクエストってレイド戦じゃ?」
「ヘルプによるとレイド戦の上らしいよ? 文字通りの戦争規模だね」
「ゴブリン数千来るのかな? 戦争だから数万?」

セシルさんとスケさんが話しているのを聞く限り、かなりの規模になりそうですね。いきなりこんな規模が来るとは思いませんでした。
まだレイド戦すらやってないというのに。

ワールドクエストは所謂、他のMMOで言うメインストーリーみたいな物……らしいです。世界に影響を与えるクエスト……ですね。
これで始まりの街がゴブリンに落とされたら、間違いなく世界に影響があると言って良いでしょう。落とされたら奪還作戦に移行……でしょうか。
ワールドクエストは結構突発らしく、参加できるかは運次第だけど……結構そこらで発生する可能性があるらしいです。

「ふーん……Wクエスト……他ゲーで言うフィールドボスみたいなもんかな?」
「あー、そうだねぇ。それが取り巻き連れて街襲うって、ハードだね」
「これ、ゴブリンじゃなくてドラゴンだったら、ブレス防ぎきれと?」
「まず真っ先に向き変えないと、ブレスで終わるね」

セシルさんとアルフさんが話してるのを聞きつつ、南の平原へやってくると大量の異人達の姿が。

「随分と集まったねー」
「まあ、時間が時間だからね」
「あ、紅の月ブラッディームーンが浮いてますね……」
「ほんとだ。あれが引き金かな?」
「ですかねぇ……」
「さて、これからどうしようか総隊長」
「どう足掻いても、この人数統率するのは不可能でしょう……」
「だよねぇ……」

普通に万超えてるでしょう。この数は……。
となると、ゴブリンも千単位ではなく万単位でしょうね。

異人達を眺めていると、頭上にアイコン表示を付けた3人がやって来ました。

「はろー! ……もしかして噂の姫様かな?」
「お、これで総隊長と部隊長が揃ったな。分隊長は……まあ無理か」
「ご機嫌よう。アナスタシアと申します」
「「「おぉ……予想以上に姫様してる……」」」
「……まあ、カーテシーはシステムアシストなんですけどね」
「あ、そうなんだ。私はこたつ! よろしくね」
「俺はルゼバラムだ。よろしく!」
「私はムササビです。よろしく!」

こたつさんは猫獣人の女性ですね。耳と尻尾だけ。
ルゼバラムさんがなんと、二足歩行して喋る熊です。格好いい系のデフォルメがされていますね。獣人は獣度が選べるので、見た目が案外自由な人類です。
ムササビさんは忍ぶ気がない忍者ですね……NINJAですか。忍び装束で人間の男。

「うん、姫様の言った統率系スキル持ちが正解っぽいよね」
「なるほど。統率系持ちかつ高レベルでしょうか?」
「そうだと思う。さて、時間がないからさっさと決めること決めたいんだけども」
「「「…………この人数は無理」」」
「うん、知ってた。どうしようか総隊長」
「……流石にこの序盤から空の敵は来ないでしょう。飛行系に乗ったゴブリンライダーとか来たら詰みかねませんからね。武器ごとに隊列組むだけで良いのでは?」
「この人数だし、それしか無い……かな?」
「うむ、シンプルが一番だろう。タンクを前、弓を中、魔法を遠だな」
「無いとは思うけど可能性が浮かんでいる以上、対策しないのは総隊長として無能ですかね……」

どうもこのクエストが発生してから、参加者は自分の持ってるスキルに応じて役割《ロール》の選択ができるみたいなんですよね。
名前の横にその選択したロールがアイコンで表示されるので、ひと目で分かります。
そしてUIをよく見ると、総隊長である私はロール毎の人数が表示されています。やっぱり参加人数が普通に2万近いですね。第一陣ほぼ全てではないでしょうか?

「……ムササビさん。飛行系の敵が来たら対空を頼めますか? ムササビさんの部隊が一番……誤差ではありますが、多いので」
「はっ! お任せあれ姫様!」
「ノリノリだな。でもこの人数、確実に勝手に動く人間が出るが、どうする?」
「どうしようもないでしょう。最初からいない者として扱ってください。気にするだけ面倒ですし、ゲームですからね。なるようにしかなりませんよ」
「うんうん、実に結構。姫様結構オンラインゲームしてるね?」
「なんだかんだやりますよ、2Dですが。妹がゲーム大好きですからね」
「面白いじゃん!」
「そうね」
「あ、リーナちゃんのお姉ちゃん?」
「そうですよ」
「ああ、ちゃんと賞品が役立ってるんだな」

作戦とも言えないような作戦が決まりましたが……正直敵の情報がない挙句に、土地が平原です。正面衝突するしか無いでしょう。
敵どころかこっちの戦力すら把握できていませんからね。寄せ集めですし。

「戦争クエスト? 実に結構ですね。我々からしたらお祭りですよ」
「正しく祭りだな」
「では、作戦の通達をお願いします」
「「「「了解」」」」

皆さんノリノリですね。
総隊長は参加者の隊長全員に声を届けられる。
部隊長は自分の部隊にいる、各分隊長に声を届けられる。
分隊長は普段のPTチャットと同じです。

で、総隊長と話せるのは部隊長。分隊長は部隊長と。
つまり……部隊長は中間管理職ですね。
そして部隊長は副隊長……自分の補佐を数人指定できるそうです。1人だと大変だからそのサポート要員でしょう。それぞれ管理する分隊を分けられるそうで。
隊長達はこのルールで距離関係なく会話できます。Wクエスト限定隊長間チャットですね。
思考でチャットの切り替えができるので、非常に楽です。これVRじゃなかったら発言チャンネルの選択で絶対誤爆しますよね。

隊長達から作戦が通達され、ぞろぞろと皆が位置につきます。
PTメンバーのアルフさんとスケさんも前に行って貰いましょう。


「そう言えば、放送どうする? と思ったけど、各自勝手にするか」
「放送ですか?」
「このゲーム生放送配信機能とか、録画機能があるんだよ」
「そう言えば、オプションにそんなのありましたね……。分からないのでスルーしてました」
「録画設定ぐらいしとくと良いぞ?」
「始まるまでもう少しありますし……今しましょうか……」
「設定自体はそんな無いからね。教えるよ?」
「お願いします」

こたつさんにお勧め録画設定を教えて貰いました。
生放送の設定もしましたが、配信サイトのアカウントを持っていないので、リンクをしていません。
一人称の視点を端っこに小さく、三人称の視点を大きく……ですね。
これが安定だそうです。所謂テンプレですね。一人称だけだと酔う。三人称だと臨場感が……と言う事だそうで。三人称の時、視界ラインと言う今ここ見てるよってのが分かるそうです。凄いですね。
UIは基本枠だけで、HPMPとミニマップぐらいしか映らないそうです。
スキル構成バレたりしちゃいますからね。

「うん、早速放送してるのいるな。あのプレイヤーの後ろに付いてきてるカメラ持ってる妖精がそうだ。緑が放送、赤が録画だな。ちなみに住人には見えない」
「なるほど、あれがそうだったのですね」
「せっかくの祭りだし、俺も放送するかな?」
「セシルさんアカウントあるんですね」
「今部隊長してるの皆あるよ?」
「あ、そうなんですね」

皆さん放送者でしたか。
セシルさんの後ろに緑色の妖精さんがひょこっと出てきて、カメラを構え始めました。他の方も放送してますし、同じ場所で放送しても視聴者取り合うだけでは? と思いましたが、同じ場所の別視点はそれはそれで面白いのだとか。
見る人はウィンドウ分けて同時に見るらしいですね。

「アキリーナさんもアカウント持ってるけど、放送せずにたまに撮った動画上げてるね」
「なるほど、生放送だけではないのですね」
「まあ、必要になったら作ればいいんじゃないかな。さて、そろそろか……」

定期的に森の方から咆哮が聞こえてまして、聞こえる度にだんだん大きくなって行くのです。近くに来てると言う事でしょうね。

カウントダウンが1分をきった頃、森の方からぞろぞろとゴブリンが出てきました。
私は初めて見ますね、ゴブリン。ファンタジーのオーソドックスな見た目ですか。
ちらほら一回りほど大きいゴブリンがいますね……?
ゴブリン達は石の槍、石の斧、弓、杖で武装と……。

「報告します! 一回り大きいゴブリンはホブゴブリンだそうです!」
「おいNINJA、騎士みたいになってんぞ。忍べよ……」
「HAHAHA、知らんでござるなぁ」
「ホブゴブリン……定番ですね。レベル10進化でしょう。ジェネラル……将軍ですか。レベル30……高くて40相当ですかね」
「ホブゴブリンからジェネラルは流石に無いでしょう。間に何か挟むとすると、そのぐらいになるかな?」
「想定でもトッププレイヤーと比べて大体レベル差倍か」

そしてカウントが0になり、上空には『Ready』の文字が。

「Readyで止まられても困るんだが? 総隊長何か出てる?」
「……出てきましたね……これ、言えと?」
「なんか開始のキーワードでもあるんか?」
「総隊長からの開始命令が必要なのかな。一応軍っぽいし?」

ひょっこり出てきたウィンドウには、セリフが書かれています。
これを言うと始まるようですね。カウントダウンもされているので、言わなくても自動的に始まるようですが……仕方ありません。恥ずかしがったら負けですねこれは。演劇です演劇。RPRP。

「あー……あー……よし、では行きます」

多少ちゃんと声を作りましょう。
このセリフはかっこよく、凛々しくですね。

「『集いし異人達よ、開戦の時です。あの者達を1匹たりとも通してはなりません。戦の女神、シグルドリーヴァ様のご加護があらんことを! 全軍、攻撃開始!』」

セリフを言い終わると同時に、参加している全てのプレイヤー達が赤い光に包まれ、光が体の中へ吸い込まれていきました。


〈〈王家の権威が発動しました。このクエスト中、全ステータスが上昇します〉〉
〈〈ワールドクエスト:始まりの街防衛戦、開始します〉〉


プレイヤー達の雄叫びと、森の方からの雄叫びが重なり、大気を震わせます。
同時にゴブリン、ホブゴブリンが動き出しこちらに突撃。

部隊長達の指示により遠距離、中距離組からの攻撃が開始。
魔法と矢が雨のごとくゴブリン達に降り注ぎます。

そしてゴブリン側にも弓持ちと杖持ちがいるので、向こうからも魔法と矢が飛んできます。1対1なら大した事無いゴブリンでも、戦となるとまた別です。

「……ゴブリンの動きが全然違うね」
「あ、やっぱり?」
「あんな賢くはないはずだもんな」
「しっかりこっちと似たような隊列組んでるでござるなぁ」

なるほど、ジェネラル……向こうの司令官の存在がでかそうですね。

魔法と矢の雨あられを抜けた前衛同士がぶつかり合い、本格的に始まりました。

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コメント

  • 奈月

    面白いです。次回が楽しみですね!
    更新頑張って下さい

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