俺の妹は内閣総理大臣!
始まりの裁判所
そこに居る皆さん、聞いていただきたい。
―俺の妹は内閣総理大臣だ。
「っぷっはっはっはっはっは!! 馬鹿じゃねーのコイツ!!!」
「うっわ厨二くさっ! ………良い精神科医紹介するよ?」
事実を言っただけなのに、なんでこいつらは笑うんだ。
え?お前らまで疑うの?本当の事だぞ?
……25歳以上じゃないと、選挙に立候補することが出来ない?
それは三十五年前の話だろう?今は二〇五三年だぞ?
人口の減少が続き、遂に日本の総人口は八千万人にまで減っていた。それにより八歳以上から占拠への投票が認められ、十歳以上からは選挙に立候補することが出来るようになった。
妹は十歳。そして現職の内閣総理大臣だ!
「……と、訳の分からないことを民衆の場で説明し、嘘つきを付いていると騒ぎだした民衆によって、ここまで連れて来られた……そう言う訳ですか」
女は呆れた顔で俺を見つめていた。
まるで、ネタを探して飛び回るパパラッチが、スクープと勘違いして撮った写真を新聞社に送ったところ、戻って来た封筒は一度も開けられた形跡の無く見覚えがあり、中身は自分が送った写真だったと言う、悲しみの溺れる前の目。
「ていうか!! なんで俺の輸送先が裁判所なんだよ!? ていうか、ここ最高裁判所だろ!? 俺、別に刑法犯したつもりなんて無いんだけど!?」
彼女の視線をなんとしても避けたかった俺が、咄嗟になって口を開く。
俺は無罪だ!!刑法なんて犯してない!!と言うか、犯したことは一度もありません!神に誓ってそう言います!!
「……名前を、柊さぎしと言いましたね。私は覚えていますよ。今から一年前、貴方が犯したあの罪を。その時も確か、私が裁判長を務めましたよね」
さっきとは一風変わった態度で、この部屋の頂点の玉座に座っている彼女が言った。
「あれに関しても俺は無実。あの時の裁判でちゃんと決着は着いたはずだぞ、八千代」
「私の名前を気安く呼ばないで頂けますか?汚れますので」
言葉遣いが一直線だ。流石は斬れる裁判長の二つ名を持つ神崎八千代。
その彼女から発せられる威圧的なオーラと、冷たい視線は何時になっても顕在だ。
「汚れるだなんて、そんな言い方は酷いですよ裁判長さん。私はМじゃないからそういう言葉言われても嬉しくも無いし、逆に不快にされる。裁判官がそんな態度で、俺を裁けると思ってるのかな?」
下からでも、俺は彼女をせせら笑うような言い方で話す。
逆に彼女は、自分の愚かさに気付き、また態度を変え始める。
「……では、さぎしさん。こういった案件で此処に送還されるような事はもう二度としないでください。第一、ありもしないような事を人前でペラペラ話す事は犯罪だと、公共口調罪にて決まっています」
公共口調罪、近年新しく作られた刑法である。嘘を付く事を禁じさせ、それこそ日本を悪化させていく刑法だと何度言ったら国会は承認してくれるのか分かったもんじゃない。
「でもな、裁判長さん。俺は嘘を言った覚えはない。俺の妹は内閣総理大臣! 本当の事だよ!」
何度も何度も強調するように、俺は裁判長である神崎八千代に訴える。
「だから何度嘘を付くなと言ったら分かるのですか!! 確かに、現在の柊総理大臣には一人兄がおり、彼によって私はこの場に立つことが出来たと公言しておりましたが、例え苗字が同じ柊だとしても、貴方が総理の兄だとは到底思えません!! それ以上嘘を付くのであれば、本当に終身刑に……」
「止めてくれませんか……」
裁判所の右正面にある大きな扉が開き、そこから現れた一人の女の子はそう言った。
「……な、な。そ、総理………大臣!?」
「おお! ゆら!!」
八千代は困惑した顔でゆらの顔を見つめた。その場には、何故か内閣総理大臣の姿があった。
「それは本当に私の兄、柊さぎしです。本当に兄です。兄の言っている事は本当の事。つまり、無罪です。何卒、この裁判を直ちに中断して頂けることを望みます」
彼女の名前は、柊ゆら。俺の可愛い妹だ。そして、現在の内閣総理大臣の座に就いている。人は、彼女のことをこう呼んでいた。
―史上最年少の内閣総理大臣。と……
―俺の妹は内閣総理大臣だ。
「っぷっはっはっはっはっは!! 馬鹿じゃねーのコイツ!!!」
「うっわ厨二くさっ! ………良い精神科医紹介するよ?」
事実を言っただけなのに、なんでこいつらは笑うんだ。
え?お前らまで疑うの?本当の事だぞ?
……25歳以上じゃないと、選挙に立候補することが出来ない?
それは三十五年前の話だろう?今は二〇五三年だぞ?
人口の減少が続き、遂に日本の総人口は八千万人にまで減っていた。それにより八歳以上から占拠への投票が認められ、十歳以上からは選挙に立候補することが出来るようになった。
妹は十歳。そして現職の内閣総理大臣だ!
「……と、訳の分からないことを民衆の場で説明し、嘘つきを付いていると騒ぎだした民衆によって、ここまで連れて来られた……そう言う訳ですか」
女は呆れた顔で俺を見つめていた。
まるで、ネタを探して飛び回るパパラッチが、スクープと勘違いして撮った写真を新聞社に送ったところ、戻って来た封筒は一度も開けられた形跡の無く見覚えがあり、中身は自分が送った写真だったと言う、悲しみの溺れる前の目。
「ていうか!! なんで俺の輸送先が裁判所なんだよ!? ていうか、ここ最高裁判所だろ!? 俺、別に刑法犯したつもりなんて無いんだけど!?」
彼女の視線をなんとしても避けたかった俺が、咄嗟になって口を開く。
俺は無罪だ!!刑法なんて犯してない!!と言うか、犯したことは一度もありません!神に誓ってそう言います!!
「……名前を、柊さぎしと言いましたね。私は覚えていますよ。今から一年前、貴方が犯したあの罪を。その時も確か、私が裁判長を務めましたよね」
さっきとは一風変わった態度で、この部屋の頂点の玉座に座っている彼女が言った。
「あれに関しても俺は無実。あの時の裁判でちゃんと決着は着いたはずだぞ、八千代」
「私の名前を気安く呼ばないで頂けますか?汚れますので」
言葉遣いが一直線だ。流石は斬れる裁判長の二つ名を持つ神崎八千代。
その彼女から発せられる威圧的なオーラと、冷たい視線は何時になっても顕在だ。
「汚れるだなんて、そんな言い方は酷いですよ裁判長さん。私はМじゃないからそういう言葉言われても嬉しくも無いし、逆に不快にされる。裁判官がそんな態度で、俺を裁けると思ってるのかな?」
下からでも、俺は彼女をせせら笑うような言い方で話す。
逆に彼女は、自分の愚かさに気付き、また態度を変え始める。
「……では、さぎしさん。こういった案件で此処に送還されるような事はもう二度としないでください。第一、ありもしないような事を人前でペラペラ話す事は犯罪だと、公共口調罪にて決まっています」
公共口調罪、近年新しく作られた刑法である。嘘を付く事を禁じさせ、それこそ日本を悪化させていく刑法だと何度言ったら国会は承認してくれるのか分かったもんじゃない。
「でもな、裁判長さん。俺は嘘を言った覚えはない。俺の妹は内閣総理大臣! 本当の事だよ!」
何度も何度も強調するように、俺は裁判長である神崎八千代に訴える。
「だから何度嘘を付くなと言ったら分かるのですか!! 確かに、現在の柊総理大臣には一人兄がおり、彼によって私はこの場に立つことが出来たと公言しておりましたが、例え苗字が同じ柊だとしても、貴方が総理の兄だとは到底思えません!! それ以上嘘を付くのであれば、本当に終身刑に……」
「止めてくれませんか……」
裁判所の右正面にある大きな扉が開き、そこから現れた一人の女の子はそう言った。
「……な、な。そ、総理………大臣!?」
「おお! ゆら!!」
八千代は困惑した顔でゆらの顔を見つめた。その場には、何故か内閣総理大臣の姿があった。
「それは本当に私の兄、柊さぎしです。本当に兄です。兄の言っている事は本当の事。つまり、無罪です。何卒、この裁判を直ちに中断して頂けることを望みます」
彼女の名前は、柊ゆら。俺の可愛い妹だ。そして、現在の内閣総理大臣の座に就いている。人は、彼女のことをこう呼んでいた。
―史上最年少の内閣総理大臣。と……
コメント
山神 旬字
面白いですね!
次回待ってます!