虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
続探索イベント その18
人形に対する業務妨害を行った休人が、容赦なく制裁される。
その光景を見た者の中には、真にジンリの手の者だと思われる連中も混ざっていた。
何らかの取り決めで雇ったヤツを、嗾けたうえで本物は情報収集に徹する。
本物を制裁するための証拠が無い以上、俺は何もできない……表向きはな。
「まあジンリのことだ、直接アイツ自身が諜報員から話を聞くわけでもあるまい。どこかで話をさせて、それを魔道具で自分も聞くとか七面倒なやり方をしているだろう」
俺にバレるパターンも、おそらくは想定しているはず。
なのでドローンで諜報員らしき休人に印を付けただけで、今は何もしていない。
「さて、これでまたしばらくは手を出してこないだろう。万全の準備をして、優位になることが分かってから動く男だしな。基本的に賭け事はしない、できる奴にやらせるのがアイツのやり口だ」
《それは……旦那様や奥様のことで?》
「ん? まあ、九割はルリだな。俺もジンリも、ルリがやることがとんでもない結果になることは分かっていたし。主に俺は、ジンリが誘導した結果ルリがやらかしたことの火消しに回っていたよ……大変だったなぁ」
ルリが望む以上、いかに誘導があったと言えど結果はルリの願った物になっていた。
しかしながら、大半はジンリが計画していたものとはズレ……俺がその調整役になる。
そんな日々だったと感慨深くなった。
しかしまあ、それをこの世界でもやろうとは思っていないので、全力で抗わせてもらうつもりだが。
「ルリにはそれを言ってある以上、ジンリが誘導することもできないだろう。これ、と頑なに決めたルリには押し通せないからな」
とまあ、ジンリが外堀を埋められない理由はそこに尽きるわけだ。
ルリには勝てない、言い方はアレだが理外の存在扱いされているからな。
人の妻に失礼な考えをするなと言いたいものだが、うん……言い方を変えれば主人公、と言っているようなものだし。
「さて、探索イベントをもう少し続けるとしようか。上級はまた今度にするにせよ、面白い鍵もいくつかあるしな」
集会場に居る理由も無くなったので、俺は再びイベント攻略に戻る。
とはいっても、メインではなくサブ──それもかなりニッチな方面だ。
◆ □ ◆ □ ◆
開示の間:中級
開示の間──メインエリアの全ヒントが分かりやすく表示される、という救済策のような場所である。
このイベント、誰かが開放すればある程度条件を満たした場所は誰でも行けるようになる仕様なわけで。
前回から法則性を推測し、開放してあったここを俺は選んだ。
当然、二人目以降の条件はメインの方をクリアすることである。
──さあ、ここの攻略に(本当なら)必要なアイテムを調べよう!
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