虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
続探索イベント その11
小さくなって大きくなって、借り物の権能で扉を内側から破壊してみた。
結界で圧迫に耐え、破壊不能オブジェクトでもある扉を壊した結果──
「……あーうん、いちおう失敗だな」
目の前に広がる謎の空間。
本来続くであろう廊下は存在せず、何も無い真っ黒な世界が広がっている。
そう、それはドローンが最期に映し出した光景そのもの。
唯一の違いは、俺がそれを死ぬこと無く観測できていることだけ。
「『SEBAS』、解析できるか?」
《…………通常の観測機が通りません。どうやら、解析のために飛ばしている魔力や電波などをすべて吸収しているようです》
「普通の方法じゃダメなのか……そうだ、前に言っていた重力波はどうだ?」
《そちらもです。空間の捻じれであるため、重力なども正常に機能しないのでしょう》
目の前に広がるソレは、本来設定されていなかった手段で扉を突破した際の処置。
このイベントエリア、許容外の手段で攻略してもこんな風に行き止まりになるらしい。
空間の捻じれは容易く人を呑み込み、そのまま存在を曖昧にする。
要するに死ぬ──休人ならば、死に戻りで脱出できるけどな。
「さて、ここまでは予想通り……普通じゃない観測機を使うぞ」
《『リアルチェッカー』、『トゥルーディテクター』、『マルチプルセンサー』、『エクストラエクステンド』を各ドローンにインストール──起動します》
真っ当な手段で調べられないならば、そうじゃない手段を取ればいい。
願望機──どんな願いも叶える機械を基にした『プログレス』には、それができた。
それらをドローンに嵌められた宝石に落とし込み、能力を擬似的に使用する。
まずは俺と同じ立ち位置──ギリギリ空間に呑み込まれない場所で観測開始だ。
「どうだ、イケるか?」
《『マルチプルセンサー』に反応無し。感覚的なモノでは、感知できないようです。しかし、それ以外の観測は正常に行えています》
「『エクストラエクステンド』のお陰だな。他の能力も強化されているから、たぶんできているんだろう」
《おそらくは。『トゥルーディテクター』によると、この状態でも正しい軌道で動くことで次の扉へ行くことは可能なようです》
空間は捻じれているが、必ずどこかに正常な接続先が存在する。
歪みを越えてそこに辿り着くことができたならば、無事に渡り切れるということか。
「まあ、空間の正しい移動手段なんて俺には分からないんだけどさ。魔法も正常に使えないみたいだし……」
《『フロートアーム』を利用することで、可能ではあります》
「……えっ、そんな物理的に渡るの?」
何だろう、見えない手に乗る司教様みたいだ……いやまあ、こっちのは見えるけど。
とりあえず、今は観測にのみ集中する──いろいろと便利そうだもんな。
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