虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
続探索イベント その10
メインストーリーの中級、不思議な屋敷の攻略を行うことに。
ただ、そのまま攻略するというのも味気ないので、ある種の縛りプレイをしてみた。
「──“神持祈祷”」
事前にインストールで『イッスンボウシ』の能力を発動していたが、それとは異なるやり方──女神プログレスを経由した借用により、もう一つの『プログレス』を起動する。
「──『ダイダラバッチ』」
一寸になれる帽子を被っている現状、重ねて出現したのは──小さなバッチ。
山とそれよりも大きい人が描かれたそれを服に着け、行動を開始する。
「よっと──“星転飛流”」
さまざまな水を生み出す星具の靴。
それを利用し、足場にできる水を無数に生み出して階段として踏み進んでいく。
一寸サイズの小さな俺なので、必要とする水の量も少なくなり足取りも軽い。
やがて辿り着くのは扉のすぐ近く、そこには鍵穴があり……そこに足を着ける。
「この先は……『SEBAS』、どうなっている?」
《極小のドローンを飛ばし……空間の捻じれに呑み込まれました》
「うん、不味いな。ダメなのは、鍵穴のどこからどこまでだ?」
《鍵穴の先までは空間は安定しております。それより先は、エリアが構築されていないため空間が不安定になっているようです》
ドローンは消失。
休人ならば死に戻りして回収してもらえるのだが、ドローンにそんなシステムは無いのでどこでもないどこかへ消えてしまう。
まあ、失敗してもいいので……ということでとりあえず試している現状。
着けているだけで何もしていなかったバッチに触れ、その力を発揮する。
「大きくなーれ──『ダイダラバッチ』」
帽子は被ったままだが、能力の優先が俺の意識によって切り替わった。
結果、バッチの効果──巨大化が優先されるため、俺はその場で大きくなっていく。
「『SEBAS』、結界を頼むぞ!」
《畏まりました。出力最大、『星護結界』とリンクして起動します》
体が巨大化すればどうなるか……膨張によりぶつかる扉の枠が、俺の体をそれ以上膨らまないよう押し付ける。
扉は破壊不能オブジェクトであり、どれだけ殴りつけようと壊れない。
……例外はある、ただし俺はその条件を満たしていない。
「でもあるんだよな……これ」
それは籠手型のアイテム。
かつて【魔王】から採取した、特殊個体のドッペルゲンガーの細胞。
彼の能力である再現と簒奪を模倣し、これまで多くの強者から権能を拝借していた。
そして今回、ある休人から模倣した権能を借りることに。
「借りるぜキーシ──『破天』起動」
権能効果は破壊不能の破壊。
要するに、ありとあらゆる物を壊すことができる……これまでは微動だにしなかった扉だが、突如として軋み始める。
そして、扉は砕かれ──その先への道が開かれた。
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