虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

続探索イベント その04



 姿を完全に消し、休人たち共有のスペースである集会場に潜り込んだ。
 やはりというかなんというか、ジンリの刺客とも言える連中が俺を探している。

「立体映像で撹乱はできるし、三重偽装の装飾具で鑑定や看破は誤魔化せる。姿は映像を重ねれば弄れるし、あるいはアイテムを使って変えることもできる……それでも、分かるには分かるからな」

《旦那様が生産者として活躍しているのは、彼もまた知るところでしょう。人の集まっている店に、何人か怪しい動きをする休人が確認に行っております》

「かー、ガチで面倒だな。非合法にこっそりとやらないと、どうにもならないってことなのか……戦闘自体は避けられないか?」

 今回のイベント、前回の俺のように強制的に追われる者のために個人用のスペースが用意されてはいるが、結局それ以外は前回とほとんど変わらない。

 事前に[パーティー]を組んでおけば集団で部屋に入れるし、集会場から挑むこともそこで組んだ[パーティー]で個人スペースに入ることも可能だ。

 そして、PvPもまったくできないわけではなく、全エリアでそれが可能な状態。
 ……おそらく、それが必要な仕掛けがあるのだろう。

 だが、それが発覚していない現状では、普通に戦闘行為をするためのもの。
 嫌なら来なければいい、冷たいながらも適切な配慮があるのにそれを無視した代償だ。

「またエクリに頼むか? うん、前回も使えたから遠隔は今回もできるだろうし」

《……【魔王】の防衛戦において、再生個体が上手く活用され過ぎました。また、ご子息様の武器もまた[エクリエンド]。そのことで、どうやら揉めていたことも。今回は、控えておくのが最適かと》

「ショウ……困ったことがあったら相談してくれって言ったのに。いやまあ、たしか加工したのはショウのお世話になっている鍛冶師だったな。そういうことなら…………父親として、そっと見ておくのが一番か」

 まあ、俺を通してルリに伝わり、とんでもない展開になることを避けた、というのが一番の理由なんだろうけど。

「うん、再生個体自体は決して不可能じゃない以上、いずれは作られるかもしれないが。今はまだ、アイスプルだけの特別な技術だしな……いや、それを知るからこそ、いずれは発現するのか?」

《それにのみ特化するのであれば、理論上不可能ではありません。膨大な量のリソース、そして代償。何より、例のアレを保有さえしていれば可能でしょう》

「何ともまあ……期待だけはしておくか」

 それすらも可能にするのが、願望機を基にした願いの発露『プログレス』。
 一種の壊れシステム……星すらも蝕むそれが、どのように発展するのか見物である。


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く