虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
続探索イベント その03
イベントエリア 集会場
運営の計らいも知ったことではない。
誰にも邪魔されない安全な拠点として、用意されたチュートリアルエリアは使うが、それでも俺は共有エリアに向かう予定だ。
……じゃないと、持ってきたアイテムが売れないからな。
人々に貢献する、それが家族に褒めてもらえると信じて俺は動く!
「『インストール:インビジブルクローク』からの──“アンタッチャブル”」
そんなこんなで、やって来た集会場。
俺がまず行うのは、自分の姿を隠す動作。
よく使っている『プログレス』のデータを取り出し、擬似的に使用した。
本来の使い手が成長を遂げた分もまた、俺の再現に反映される。
今回発動させた“アンタッチャブル”、それこそが目的を成し遂げるための力。
「不干渉……いい能力を発現させたな」
《正統な発現ではなく、どうやら条件付きでの能力強化を選んだようですね》
「それでこの内容か……うん、俺にはもともと関係無いんだけどな」
相手にまったく触れられなくなる、魔法や武技も特殊なモノを除いていっさい受けなくなるというかなり優れた能力。
だからこそ、明確な条件が存在する。
それは一定時間経過による、隠蔽スキルのレベル低下……『インビジブルクローク』にとって、必須とも言えるスキルの弱体化。
隠蔽スキルが使えなくなると、普通は周りにバレてすぐに倒されてしまう。
……が、スキルが使えないのと見つかるのは同義ではなく、別の手段で隠れればよい。
元より、俺に隠蔽スキルは備わっていないので正直関係ない。
あくまでも、使い手が隠蔽スキルに傾倒しているからこその能力なのだ。
「『光学迷彩』を起動、『透明薬』を飲んで視覚の方はバッチリだな」
同じく、『インビジブルクローク』の能力である“アラートスルー”。
見えない間の探知や看破を無効化する能力のため、他で視覚による俺の発見を防ぐ。
科学的に身を隠す光学迷彩と、魔法的に隠れられる透明薬。
他の五感は“アンタッチャブル”の不干渉に含まれるので、事実上の完全透明化だ。
「やれやれ、ここまでしっかり対策をしておかないと不味いんだよな……ジンリのヤツ、やっぱり本気で俺が居ると確信してるな」
《はい、おそらくは間違いないでしょう》
いつものように、事前にドローンを飛ばしていたのだが……居るわ居るわ、明らかに何かを探している連中。
自惚れかもしれなかったが、あえてホログラムで投影した俺の立体映像に反応しているヤツが居た……うん、対策はやっておいて正解である。
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