虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

納品揉め 後篇



 絡まれそうになった原因は、俺もなっている特級会員だった模様。
 配備していた人形が鎮圧してくれたが、三人目の特級会員になるため急いているのだ。

「──って、あそこで揉めていた直接的な理由についてまだ確認してませんでしたね」

「ん? ああ、そうだったね……さっきも伝えてけど、これはよくある話なんだよ。少し無茶をしても、君たちは繰り返すことができるからね」

「……ああ、なるほど」

「で、彼らは君とあの子に関する情報を聞き出そうとするんだ。毎度鎮圧はさせているけれど、それ以上にメリットがあるからね」

 俺と二人目の特級会員が作った物を知ることができれば、自分たちが作るべき物とその難易度も分かる…………いやまあ、単純にそれを知って金にしたいのかもしれないが。

 時代が時代なら、たとえ地球であろうとも死罪に問われるような蛮行である。
 それでも、死が終わりではない休人たちに恐れる者は無い……と思い込んでいるのだ。

 一回なら、また容姿を特定されないように犯行を起こしても自殺で即座に逃亡することができる……まあ、顔を一時的に変えるアイテムなんていくらでもあるからな。

「すぐに鎮圧するから、死のうとしても無力化させるんだけどね。死に戻りは、条件次第で使えなくできるから助かるよ」

 そう、死に戻りとは便利な脱出機能だが無敵というわけじゃない……少なくとも、意識ができない状態では使えない。

 なので人形の中には、一時的に意識を乱す魔道具も組み込まれている。
 強烈な干渉は保護機能で無効化されるが、微弱なものなら問題ない。

 なので、自害機能が選べないような思考になるよう科学的に干渉している。
 ……その実験のために、何百何千もの俺が死んだのは言うまでもないが。

「他にも、別のギルドから情報を抜き取りに来たスパイなんかも居るね……君たちは、本当にいろんな人種が居るね」

「死ななくても人は人、私たちの場合はその分だけ欲望を発露させます。金が欲しい、人より目立ちたい……元居る世界でできないからこそ、こちらの世界にそれを強いようとしているのですよ」

「それを言うと、君もだね。ははっ、お金持ちで地位を得て、そのうえ『超越者』なんて実力者でもあるんだから」

「…………まあ、そうなりますね」

 実際の所、俺もまた彼らと同じように欲に忠実な人間だ。
 ルリやショウ、マイのようにはなれなくても、並び立ちたいと願っている。

 だからこそ、彼らのような人々の気持ちも分からなくもない。
 ……まっ、それとこれとは別なので、普通に罪は償ってもらうけどな。


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