虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

新型二輪車 後篇



 ──魔力式原動機付き自転車。

 それはかつて、倭国を巡る際にも使用していた魔法の原付き。
 ある意味、環境に優しい乗り物だったのだが……それが今、生まれ変わる。

「ジェム式原動機付き自転車、だな。まあ、魔力で動くのは変わらないのだが」

 ジェムを特定の数、配置で並べることで起きる謎の強化現象。
 それを組み込むことで、アイテムの性能が上がるということでやってみた。

 試すために使うのは、ロードコラボで得たライドシミュレーター。
 原付きに装置の上に原付きを乗せ、読み込ませること数十秒。

「読み込み完了っと……ただ、今までテストでやったヤツより長かったな」

《旦那様が組み込んだ機構、そのすべてを再現するのは困難だったのでしょう。また、どうやらジェムを組み込んだことで、コラボ要素が実装されたようです》

「ん? なになに……ステージ解放、か。ふむ、ちょっと興味深いな」

 今まで何度か試しているが、想定されるシチュエーションはそこまで多くない。
 正確には、ファンタジー溢れる世界観でのステージ選択がそこまで多くないのだ。

 たしかに、一番最初に魔石を組み込んだ乗り物を読み込ませたことで、ファンタジー関係のステージが増えた気も……ジェムもまたそうして、ステージを増やす鍵だったのか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 ライドシミュレーター 零の領域

 百聞は一見に如かず、ということでとりあえずやってみることに。
 選んだのは『零の領域』、お察しの通りこのステージは──

『────っ!!』

「よっしゃあ、逃げるぞ!」

 遠くで咆哮を上げ、こちらに向かって物凄い勢いで来る一匹の獣。
 名は『零哭獣ビーストノート』、モンパズコラボでは最終ステージを務めた個体だ。

 そう、ここはモンパズコラボの最終ステージだった。
 彼の登場は設定できるので、ただ綺麗な景色をドライブするということも可能だ。

「コラボ側としては、エリアが平時化されるのは何かと渋ると思うんだが……やっぱり、その辺はマザーAIがどうにかしてるのか」

《はい、おそらくは……》

「まっ、休人がそこまで考えることでも無いからいいんだけどな。エンジンフルスロットル──『原付きオプション04』起動だ!」

 新たに組み込み、ジェムのエネルギーで増幅された機関をさっそく起動。
 内部で連結されたジェムに魔力が通り、その力を発揮する。

「相手を倒す想定だってあるはずだ! ジェムの効果だから攻撃は通る、このまま挑戦してやろう!」

 そんなこんなで、原付きに乗ったまま激しい戦闘を挑み──勝利。
 実験は成功、シミュレーションは大満足の結果に終わるのだった。


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