虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
天空攻防 その14
自己強化、そして大物召喚。
敵──『飛武』が本気を出すというのであれば、こちらも奥の手を出していく。
斬り殺した存在を呼び出すことができる、それが[宿業]の能力なのであれば。
つい先日、様々な条件下で討伐を行った固有種が存在した。
「[死に戻れ]──[エクリエンド]」
その名は『黒淵空亡[エクリエンド]』。
再生個体だったり人形個体だったり、その使い道がかなり多いその個体に、[宿業]が新たな使い道を与えた。
俺という無尽蔵のエネルギーを供給源として、ソレはこの場に生み出される。
本来、迷宮と星の力を使い、どうにか復活させているというのに……うん、恐ろしい。
「この存在感は……まさか禁忌を!」
「はて、何のことでしょう? ただ、偶然にもこの妖刀には、強力な存在を生み出す能力があるようですね。そしてたまたま、貴方はそれに近しい存在を知っている……ただそれだけの話ですよ」
「禁忌に触れた、か。『生者』……その行いには、重い代償が付くぞ」
固有種の蘇生は本来禁忌らしい。
正確には、固有種の中でも星に厄災をもたらす存在──つまり災凶種を蘇らせることがダメなんだとか。
なお、そのことはすでに知っている。
……とっくの昔に、[称号]としてそれらが重罪だと示すようなものを大量に貰っていたからな。
「──であれば、私はここに居ないはず。そう、すべては許されているだけのこと。とはいえ、この力も限定的なもの……可及的速やかに済ませましょうか」
「っ……」
「[エクリエンド]、この指輪に」
『──』
俺が示すのは、精霊神様から下賜された例の指輪。
その中には、俺専属となる精霊も宿っているのだが……今回は別の用途。
もともとこの指輪には、精霊を呼びだすことができる能力が備わっていた。
ただ契約をしているわけでは無いので、助力を願うにも相当な魔力が必要となる。
──ただ、指輪の能力はそれだけでない。
詳細は省くとして、その一つが精霊を指輪に宿すというモノ。
そうすることで、擬似的な契約状態となりその恩恵にあやかることができる。
「つまり──“万物闇換”」
「チッ……!」
俺を中心として、すべてが黒に染まった。
黒い靄と化した闇は俺を包み込み、念じるがままに動き出す。
「さて、強制退場といきましょう。これ以上は、見せる札もございませんので」
「……抜かせ。そのすべて、曝け出してくれる!」
すべてを闇へと換え、支配する力。
これを使えば『飛武』も俺に触れることはできない……これを破る策が無いなら、もう俺の勝ちである。
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