虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

天空攻防 その13



 再び上に飛ばしたい『飛武』、それに対抗するべく回避を行う俺(『SEBAS』)。
 避ければ避けるほど、虚弱な体が死を迎えるが……そのリソースを[宿業]が溜める。

「さて、そろそろいいでしょうか」

「先ほどといい、その妖刀……精霊を呼びだす力を秘めているのか。だが、無駄なこと。すでに二体を倒しているぞ」

「どうでしょうか。もしかしたら、もっと凄いモノを呼び出せるかもしれませんよ」

「……ならば、それよりも速く終わらせてしまえば良い!」

 すると、『飛武』の肉体を循環するエネルギーの量が速く、そして濃厚になった。
 初見の際に凶兆を感じ取ったのと同様、それもまた職業スキルによるもの。

 俺と『SEBAS』の連携において、重要なのはどれだけ情報を持っているかどうか。
 たとえば未来を視る『ヴィジョンアイ』を使えば、数秒先の情報を不確定だが見れる。

 ズレていてもその辺は『SEBAS』が調整してくれるし、むしろ大量に情報があればあるほど相手の行動を完璧に把握するいい材料になるだろう。

 今回セットした職業スキルは、そうして得難い情報を得るためのビルドになっている。
 凶兆、体内循環、そして──さまざまな情報が俺の勝利を確実なモノにするのだ。

「[宿業]──『魔小鬼デミゴブリン』」

「今更雑魚を呼んだところで──っ!」

 次々と、[宿業]で召喚した魔小鬼たちを潰していく『飛武』。
 俺を攻撃していた時よりも苛烈に、体を凹ませるレベルで打撃を行っている。

 向こうも俺の狙いは察しているだろう。
 時間稼ぎ、そしてこれまでとは別の視点で『飛武』の動きを把握する──今までと違って、『SEBAS』が直接確認している。

《解析率99%です》

「100は無理でしょうが……ええ、これで充分です。さぁ、[宿業]。最後の大仕事といきましょうか──“孤独蟲毒”」

 死ねば死ぬほど強化される色物術式。
 その仕組みは、死ぬ際に散布されるリソースを取り込んで行われる。

 今まで使っていなかったのは、[宿業]にそのリソースを使わせるため。
 ──その必要が無くなったため、ようやくこの術式を使うことができる。

 攻撃を避け、そしてあえて生きている状態で[宿業]に俺のリソースを吸わせていく。
 するとどうなるか──二重で死に、強化速度が向上する。

「っ……なんと面妖な。これほどまでに粘るとはな」

「生きしぶとい、それこそが『生者』です。どうぞ、最後までお楽しみを」

 そして、[宿業]が光り輝く。
 これまで以上に多くのリソースを喰らい、召喚するのは──

「[死に戻れ]──[エクリエンド]」


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