虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

天空攻防 その11



 改めて、『飛武』に関する情報を回線が復旧した『SEBAS』から教えてもらう。
 新規でアイテムを取り出すこともできるようになったので、ここから反撃開始だ。

 すでに上空に仕掛けたドローンは破壊されており、『飛武』は物凄い勢いで俺の下へ滑空している──のでまずは再度ドローンを展開し、もう少し時間を稼いでもらう。

《先ほどのドローンは威力偵察用です。次に飛ばしたドローンには、対強者用兵装が搭載されております》

「おお、それは期待できそうだ」

 彼ら強者を相手に、弾丸をどれだけ撃ち込もうとさして効き目は無い。
 同じ理屈で、低威力の魔法やら物理攻撃をしようとダメージが通る可能性はほぼ皆無。

 ならばどうするか──強者もまた、人であることを利用した攻撃をすればいい。
 その理論を証明するかのように、上空で眩い光が突如生まれた。

「気配で場所が分かるのが武人らしいが……それ、機械にも効くのか?」

《気配を読むのがスキルによるものであれば通じません。ですが、それがいわゆる第六感や五感を高めて行うモノであれば……あのように、感じ取ることもできるでしょう》

「……ええい、次だ次!」

 尽く破壊されるドローンだが、こちらもまたほぼ無限のドローンを所持している。
 アイスプルに存在する兵器工場、そこでひたすら複製&量産をしているからな。

 ドローンが一体破壊されるのに必要な時間は、僅かコンマ数秒。
 一度に畳みかけても範囲攻撃で破壊され、精鋭で行っても六体までなら瞬殺。

 こちらの落下速度よりも滑空速度の方が早いため、足止めしていてもいずれは来る。
 だからこそ、多少は無茶な手に打って出なくてはならない。

「[宿業]──来い、『風魔の巨精』」

「──無駄なことを!」

「ええ、貴方に対しては無駄でしょう……ですが、私には効きますよ」

「ッ……ええい、邪魔だ!」

 何をしようとしているのか、『飛武』も気づいたようだがもう遅い。
 妖刀が生み出した風の巨人型精霊は、その掌で俺を掴み──力いっぱいぶん投げる。

 その方向は直下、風の力も相まって先ほどとは比べ物にならない速度で墜ちていった。
 何やらスキルを発動させたエフェクトを纏い、加速した『飛武』だが……もう遅い。

「『SEBAS』、どうだ?」

《復旧完了。魔道具の起動を妨害する術式を阻害しました──転移装置起動》

 落ちていた俺の視界はあっさりと切り替わり……気づけば地面スレスレ。
 だが速度は完全にゼロになっており、再び転移すると体の向きが調整されていた。

 なのであっさりと着地、落下ダメージなどもいっさい発生していない。
 さて、これで【飛闘王】の能力は発揮しなくなる──真の意味で反撃だ!


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