虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
天空攻防 その09
おそらく奥の手と思われる“空天到致”の影響で、宇宙ギリギリまで飛ばされた俺。
そのまま宇宙に飛ばされるかと思ったその時──ソレは現れた。
突然のことに『飛武』も驚く……いや、正しくは現れた存在が放つエネルギーに、警戒しているというべきか。
「……これは、[宿業]?」
刀身のすべてが迷宮核で創られた、特殊な由来を持つ妖刀。
しかし、格が足りず妖刀としての力は何ら有していない……はずだった。
《──!》
「『SEBAS』のお陰かな? いや、今はそれよりも」
「──くっ、もう使えるように……ならばすぐにでも!」
「ええ、終わらせましょう!」
妖刀の柄を握り締めると、自然と脳裏に使い方が浮かび……上がらなかったが、その辺は[メニュー]がノイズの酷い状態で出現して、ある程度情報を開示してくれる。
「『死に戻り』──『雷魔の巨精』」
「っ!?」
妖刀を一振りすると、その中から黄色いモヤモヤとしたナニカが現れる。
同時に、形を持たない煙のようなナニカがソレを包み込んでいく。
そして、それは形を成す。
現れたのは黄色い巨人……のような不定形な存在。
全身が揺らめき、雷が迸っている。
俺はそれを、かつて見たことがある。
コラボイベントにおいて、防衛戦で立ちはだかったボスの一体……そして、[宿業]を用いて殺した存在だった。
能力を発動した時点で、俺の理解もある程度追いついた。
要するに、[宿業]は擬似的な蘇生能力を手に入れたのだ。
発動対象は[宿業]が殺した存在、必要なモノはそれ以上のリソース──魂。
一を蘇らせるために、百を殺すような狂った力……だが、俺にとっては最高の能力。
なぜかは分からないがはっきりと分かったのだ、蘇生に用いられたのは俺の魂魄だと。
だがそれは休人の──あくまで擬似的な代物なので、俺にリスクは無かった。
「さぁ、行きなさい!」
『──!』
勢いよく命令を下す……のだが、巨人の激昂は俺を殺すだけだった。
周囲に迸る雷を、『飛武』はあっさりと回避しているというのに。
どうやら[宿業]が蘇らせた存在は、あくまでもその当時のままなのだろう。
少なくとも、今の俺では制御できない……そう考え、次の動きを選んだ。
「──今の内に……」
「ッ、逃がす……くそっ!」
体を自然に委ね、力を抜く。
先ほどまでとは逆に、下へ下へと体はどんどん落ちていった。
「…………どうしてこうなった」
《──様、──様!》
「ノイズが激しいな……これも対策か?」
先ほどまでとは違い、ノイズが起きようと『SEBAS』からの声が伝わってくる。
だんだんと復旧しつつあるのだろう、現にノイズも少しずつ減っていた。
「思い返す……暇はありそうだな。どうせこれで死ぬことは無いし」
再び『飛武』が戻ってきそうだが、次々と飛んでくるドローンがそれを阻んでいた。
なるほど、余裕もありそうだ……では、現状を『SEBAS』に説明しようか。
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