虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
天空攻防 その08
すでに終盤戦。
再び『SEBAS』との回線を繋げられればこちらの勝ち、その前に目的を果たすことができれば『飛武』の勝ち。
起動している『プログレス』は二つ。
武術を学習する『バトルラーニング』、そして本来であれば『SEBAS』に代理で行動してもらう『セバスチャン』。
先ほどまではその繋がりを断たれていたのだが、『セバスチャン』の起動により取り戻しつつある……それでも、今は自力での戦闘が求められている。
「──“精辰星意”」
「っ……!」
「時間経過でより酷くなりますよ。さぁ、見せてください──貴方の奥の手を」
「……いいだろう。本気で行かせてもらう、そう言ったのだからな。受けてみよ、これが我が本領──“空天到致”」
それが何を意味するのか、情報を持たない俺には分からなかった。
だが、起きている事象そのものについてはよく分かる。
「──体が、軽く?」
「そして、高みを知れ!」
初めと同様、上空へと飛ばされる。
あの時と違うのは、こちらも警戒を怠っていなかったこと。
だがそれでも、体はあっさりと『飛武』に蹴り飛ばされ上へ上へと昇っていく。
体を捩り、少しでも減衰を……そう思ったところで、先ほどの能力の詳細に気づいた。
「! ……なるほど、上に至るまでの減衰をゼロにする。それがあの能力ですか」
「──その通りだ!」
翼をはためかせ、追い付いてきた『飛武』により今度は拳で殴られる。
減衰ゼロ、摩擦も重力も俺の動きを遅めるための手伝いを何もしてくれない。
ただひたすらに、上へ上へと向かう。
抵抗するように『バトルラーニング』が自動防御を行っている……それでも、本気の動きについては行けず、高み(物理)へ昇る。
「っ……不味い」
「もう、遅い!」
対流圏、成層圏、中間圏、熱圏……大気圏と呼ばれる空をいくつも超えていく。
途中、薄っすらと阻むようなナニカを感じたが、それすらも打ち砕き上へ。
そして、辿り着いたのは真っ黒な空。
それは宇宙──あるいは星海と呼ばれる星の世界。
目的はおそらく、宇宙というシステムの恩恵が無い場所で俺を殺すこと。
それならば、死に戻りは正常に機能することは無いからだ。
だが、それと同じくして俺を包んでいた減衰ゼロのナニカもまた消失する。
職業能力、あるいは権能と思われるそれもまた星の恩恵によるものだからだ。
「大人しく、これで終われ!」
「まだ諦めるわけには、行きませんよ!」
何か無いか、そう考えるが正直何も思いついていない。
もうダメか、そう諦めたその時──目の前にソレは現れた。
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