虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
天空攻防 その02
S9W6 孤島
漂流することでしか、一度目の来訪ができない不思議なエリア。
海のど真ん中にあるそこへ、『騎士王』との会話を終えた俺はやって来た。
彼女も彼女で、直接的では無くとも俺を庇う旨を伝えてくれる。
それだけでも助かるというモノ……ぐふふふっ、大義名分は我にあり。
「さて、と……何も無ければそれに越したことは無いんだけどな。嫌な予感がするのは、つまりそういうことなんだろうな」
見習いを経て就いている【占術師】、そしてその死相に特化した職業【死占術師】。
今回、どうにもならないであろう強者との対立、それに役立つ職業として就いている。
職業スキルの効果で、何となくではあるが予感めいたものを今の俺は感じられた。
そして、ソレが告げるのは──凶兆、良くないことが起きるということ。
「いったい、何が起こるか──なっ!?」
のんびり歩いていたはずの俺。
だが結界越しに強い衝撃を受けたかと思えば、体が横に吹っ飛ばされていた。
「がっ、あっ、くっ……とうっ!」
何度も衝撃を受ける度、飛ばされる方向が切り替わっていく。
それに対処するべく、[インベントリ]からアイテムを取り出して使った。
瞬間、強烈な重力によって体が地面へとめり込む。
これで原因も止まれば良かったが……残念なことに、それは無かった。
「ですが、これで挨拶はできそうですね」
「……」
「初めまして、で会っているでしょうか? 何分、貴方のような方には心当たりが無いものでして」
「……」
無視、あるいは聞こえていないか。
その相手は俺を遥か高く、空の上から見下ろしていた。
遠くに見える人型、だが俺を含む普人族とは明確に違う点──背中に生えた翼。
知り合いでいえば、『天死』などが似た容姿だろうが……いかんせん、何かが違う。
彼女の場合は天魔という特殊な種族ということもあるが、元が戦乙女であるからか僅かながらに神聖を秘めていた。
また、話によると天使や堕天使といった存在も神話に属する存在であるがゆえに神聖というか神の恩恵をその身に宿している、とかつて『騎士王』から聞いている。
だがその存在からは、神の力である神気を感じられなかった。
代わりに感じるのは圧倒的な闘気──魔力とは違う、武人が有することの多い力。
「名を、聞かせてはもらえませんか? 私は『生者』、休人であり職人でもあります。決して、武を心得ているわけではありません。貴方に狙われる理由など無いはずです」
「──『飛武』。理由ならば一つ、あるはずだ。強い、ただそれだけで充分である」
「…………強い、ですか。風を浴びるだけで死ぬようなこの矮小な身、いったいどこに強さなど」
「ふっ、些末なことよ。数々の強者を退けてきたその弱さ、それこそが汝の強さ。なればこそ、我が強さを以ってそれを打ち砕くことこそが使命である!」
あー、脳筋タイプだー。
なんて考えていたのが、今より数十分前の話……彼──『飛武』との戦いの果てに、俺はスカイダイビングを行う羽目になった。
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