虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

称号おさらい 前篇



 俺のプレイスタイル──いわゆるビルドについて考えてみた。
 結論として、:DIY:マジ最高、失名神話の皆様ありがとうございますとなる。

 だが、そんな:DIY:にも対応しきれない点があるわけで。
 それらの解消も兼ねて、情報収集のためにタクマの下へ再び向かった。

「──というわけで、頼む」

「…………前回と同じボケを、すぐに思い出せるくらい短期間で使い回すなよ」

「仕方ないだろう? なんだかんだ言ってもお前が頼りなんだから」

「チッ、金が取れればよかったのに……」

 この男、俺から売れる情報を大量に手に入れているためむしろ払う側だ。
 俺の場合、レベル999の鑑定拡張情報と『SEBAS』の解析能力があるからな。

「で、具体的には何だ?」

「そうだな……使うか使わないかは別にしても、[称号]が欲しいな。とりあえず、獲得条件が判明しているものをくれ」

「いいのか? 既知の情報だと効果が劣化したり、関連する[称号]が取れなくなる場合があるぞ?」

「おっと、[クエスト]みたいにそういうシステムがあったか……ヒントも劣化する要素みたいだし、やっぱり止めておくか」

 脳波だか魂関連の謎技術の影響か、再現性頼りのプレイはあまり価値が無い。
 検証チーム泣かせのこの仕組みにより、報酬が劣化することが確認されている。

 そもそもとして、MMOとはそういうものとも言えるが。
 常にまったく同じ悩みを抱える者が、いつまでも存在するはずが無いのだ。

 どうやらそのシステムは、[称号]にも反映されているようで。
 ……まあ、[称号]とは称える号なのだ、そうポンポンと量産はされるはずが無いか。

「とはいえ、劣化無しの[称号]もいくつか確認されている。いわゆる、討伐系だ」

「……ふむ」

「『竜殺し』なんて定番だな。アレは広くそれが凄いことって、最初から認知されているから劣化が無いんだよ」

「……なるほど」

 たしかに、竜を殺すのは矮小な人の身からすれば偉業となるのだろう。
 そう考えると、いろいろと気になることが浮かんでくる。

「じゃあ、竜が竜を殺したら『竜殺し』って[称号]は手に入るのか?」

「いや、竜としてプレイを始めたヤツによるとそれは無かったらしい。『同族殺し』、それが手に入ったそうだ」

「同格の存在だからか? 竜の上位存在は特に浮かばないからアレだが……うん、この辺にいろいろと鍵がありそうだな」

 下位、同格、上位存在の討伐数などで得られる[称号]はおそらく劣化しない。
 戦闘を行う、そして勝利するという功績自体に劣化の余地が無いからだ。

 改めて考えてみると、とても興味深い。
 情報源はまだ隠し持っているようだし、洗い浚い吐かせてみよう。


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