虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産世界初訪 その22
依頼されたのは、古代遺跡から現れた魔物たちと戦う彼らの補助。
そこから得られた情報は手に入れられるうえ、生産世界の技術も観察し放題だ。
「では、さっそく──展開!」
《回復用ドローンを展開、配置します》
「うおっ……ウワサに聞いていた、魔法薬を散布するっていうヤツか。なるほど、なかなかいい素材を使っているんだな」
「ええ、何か不備がありましたら、緊急時に困りますので。しっかりと、性能に耐え得る代物となっています」
昔は:DIY:で一から作ったりしていたのだが、今は複製の神代魔道具(劣化版)で気分的には工場の流れ作業である。
蘇生薬と万能薬が入っているドローン、それを必要に応じて薄めて散布していく。
傷付いた者たちも、すぐに復帰して戦いに参加していることだろう。
「最低限の支援というのであれば、これで充分でしょう。私は部外者、あまり派手に動かない方が良いと思われますが」
「そう、だな。要らぬ揉め事を買ってしまうかもしれないか。分かった、魔法薬も貴重だろう、あまり無理するなよ!」
そう言って、彼はギルドから飛び出し街の外へ向かう。
俺の方はその場に留まり……そもそも、ここがどこなのかを確認する。
「南の十区画目、つまり開拓ギルドの総本部がある場所か」
各ギルドの支部は、別のギルドの総本部がある場所にも置かれているらしい。
周囲が騒がしくしている中、俺はのんびりと口を動かす。
「『SEBAS』、どうしようか」
《観測用のドローンはすでに配置済みです。それらを観照されてはどうでしょう?》
「うーん、それはいつでもできるからな……今できることをやっておきたいな」
なんて我儘を言いつつ、生産世界に居る今しかできないことを考える。
ただし、やり過ぎると制裁が下ることも考慮して控えめなものを。
間違いなく、『騎士王』のように高い星の権限を有する者が居るはず。
おそらく『星宝級職人』の中に……会ったことが無いので、特段言うことは無いが。
《──旦那様、緊急の報告が》
「ん? まさか、アイスプルに繋がる転送陣が見つかったとかか?」
《いえ、そうではございません。ドローンの一機が捕縛、連絡の用途で用いられております。対象は旦那様にこちらへ来るよう、カメラ越しに伝えております》
「……へぇ、面白そうだな。まあいいか、それこそ暇潰しってヤツだよな」
場所の方は正確に教えてくれたようで、転位で飛ぶこともできそうだ。
だが、向こうの企みも分からないし……保険は用意しておきますか。
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