虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

生産世界初訪 その13



 魔材ギルド総本部で見つけた、生産世界の秘匿技術と思われる『剥闘術』。
 その使い手を探すべく、あの手この手で捜索することに。

「……と思ったら、もう見つかりました」

「──ずいぶんと早いお帰りだな」

「ええ、実は……」

 ここは魔材ギルドの総長室。
 その部屋の主である総長こそが、剥闘術を始めに使ったとされる男だった。

 まあ、だからこそこのギルドに居るとも考えていたのだが。
 ……しかしまあ、これがいわゆる燈台下暗しというヤツだな。

 俺が帰ってきたことにやや訝しんでいるようなので、事情を説明。
 すると何やら納得するような……ニマニマするような顔でこちらを見てくる。

「そうか、『生者』が剥闘術をな……」

「私には事情がありまして、スキルや武技などを完全な形で使うことはできません。ですが、その動きそのものは真似することができますので、ぜひとも参考にさせていただけましたら」

「ごほんっ、まあついさっき出来たばかりの借りを返しきれたとも思っていないし。今はちょうど暇──」

「失礼します! ……総長、お伝えしなければならないことが」

 せっかく教えてくれそうだったのだが、どうやら状況は急転したようだ。
 かなり焦っているみたいだが、なぜか俺の方をチラリと見て話すかを確認している。

「構わん。むしろ、協力してもらった方がいいかもしれないな……話してくれ」

「はい、分かりました──工匠ギルド、栽培ギルド、開拓ギルドの総長の方々が至急お会いしたいと……」

「狙いはやはり『生者』か……というか、勘づきやがったな」

「おそらくは休人の仕業ですね。ご存じかと思いますが、彼らは独自の情報網を持っていますので。その情報を、何らかの取引で漏らしたのかもしれません」

 便利なシステムはいくらでもある。
 俺──というか『生者』が来たことは分からずとも、受付嬢が見かけない奴をどこかに引き込んだこと自体は見られていた。

 その事実が出回れば、総長たちも察しが付くだろう。
 まだ確認されていなかった『生者』が、すでに魔材ギルドと接触していると。

「チッ、面倒な……ああ、悪いな『生者』。少し、協力してもらえるか? さっきの話も必ずやるからよ」

「ええ、その条件で大丈夫ですよ。それにしても、他のギルドの総長ですか……もしかすると──」

「お前さんの想像通りだ。どいつもこいつも何か一つ、隠し種は持っているぞ」

 錬産術、剥闘術のようにこの世界で生まれた新たな技術。
 その使い手たちが向こうから来てくれる絶好の機会……うむ、逃す手は無いな。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品