虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

生産世界初訪 その09



 他人の得た特典で作るアイテム第二弾。
 銘は『総竜虎武[ドライガーウッズ]』、我ながらの自信作だ。

 しばらくして、俺は結界を解いて生産室の中から出る。
 すると、まるで手術終わった際の関係者が如く、魔材ギルドの総長が──

「『生者』……どうなったんだ?」

「……ええ、成功です。ご要望通りの品が、出来上がりましたよ」

「そうか! そうか……感謝する。だが、これは……武器、ではないよな?」

「使い方に関しては、実際にお使いになられて理解していただけますと。どこか、それを試すことができる場所は?」

 そう尋ねると、総長はすぐにそれができる場所へ俺を案内する。
 すぐ隣にそんな部屋があり、魔道具を操作して試し打ち用の人形が現れた。

「で、俺はどうすればいい?」

「ペンダントに魔力を流してください。その際、使いたい武器をイメージするのが重要となります」

「なるほど……ふむ、これはいい」

 俺の言った通り、魔力を注いだことで総長が持つペンダントに変化が。
 その姿は木製の剣……いや、山刀のような形状を取った。

「切れ味は……ああ、これもいいな。他にもできるんだよな…………なるほど、俺が望めばどんな武器にもなるのか」

「元より、さまざまな種類の竜や虎を生み出していた固有種が素材ですので。武器として使用している間、それ以外の用途で使うことはできませんが──」

「ああ、分かっている。なるほど、こうすると……こうなるわけだな」

 多様な武器を使い終えた総長は、いったん形状を取っていたペンダントを元に戻す。
 そして、同じくいつの間にか取り出していた魔物の素材をペンダントに重ねる。

 すると、そこから現れる魔物たち。
 休人たちが見れば、従魔としてのマーカーが浮かんでいることだろう。

「捧げた素材のランクに応じて、竜や虎の木製ゴーレムを召喚できます。使用に制限はございませんが、強力なゴーレムには相応の素材が必要となりますので悪しからず」

「普段使いはしそうにないが……緊急時や強力な敵を相手取る時には使いそうだな」

「はい。あっ、素材は取ることができるようです。利用方法はお任せしますが、魔力の量だけでなくその場の環境に応じた強さや質の高さとなりますので、あまり乱発はしない方がいいでしょう」

「それは元からあった能力だったな。それを残したまま、これほどまでに使えるアイテムにしてくれたか……ありがたい」

 それこそが『概念合成』の醍醐味。
 特典の能力に優位性を持たせ、装飾具というリソースの器にそれを注ぎ込んだ。

 結果、装飾具が持っていた能力などはすべて失われる代わりに、特典素材……もとい生前の能力を可能な限り引き継いだアイテムに生まれ変わらせた。

 並大抵の職人ではできなかっただろう。
 すべては俺……というか、:DIY:という権能様チートスキルのお陰である。


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