虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産世界初訪 その05
生産世界 E10 魔材ギルド総本部
初期地点の魔材ギルドから、秘密の通路を移動した俺と案内人の受付嬢。
本来であれば、いくつもの試練を経る必要があるらしいが……優遇されているな。
通路から辿り着いたのは、休人たちから見ることのできないギルド員用の通路。
受付嬢と話をしながら、俺は魔材ギルドの総本部を歩いていた。
「──こちらです」
「ここが……魔材ギルドの総本部、ですか」
「はい、こちらでは多くの魔物素材を解析・研究しております。魔物の性質を調べ、この世界に反映させています」
「この世界に反映……とは?」
どうやらこの生産世界、もともとの拡張がそこまで広くなかったらしい。
冒険世界は休人が解放前から広がっていたのだが……こことは違うようだ。
そんな未開拓の世界を切り拓くため、多くの素材を集めているとのこと。
……その貢献度で、揉めているのも各生産ギルドの問題のようだ。
「では、こちらへ。魔材ギルドの総長が貴方様をお待ちしております」
「ありがとうございます」
「いえ……では、入ります。心の準備をしてくださいね」
受付嬢が足を止めた、ギルドの一番高い所にある部屋へと導かれる。
彼女がノックをし、部屋の中へ入ると……中で待つ者が。
「──よく来たな、『生者』……いや、ここじゃあツクルって呼んだ方がいいのか?」
「できれば『生者』と。あまり、同胞たちに名前を知られたくない事情がございまして」
「そうか。なら『生者』と呼ばせてもらおうか。改めて、ようこそ生産世界へ。魔材ギルド総長として、歓迎させてもらうぞ」
そうして、俺は今回の依頼主であろう男と接触したのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
どうやら魔材ギルドの総長は、かつて冒険世界に居たらしい。
それが何があったかこちらの世界に来て、魔物の素材を調査する代表者になった。
「ここは未開拓だったからな、未知の魔物の素材も多かった。俺は冒険者として魔物との戦闘経験もあったから、生の魔物の生体についてある程度詳しかった……結果、それが行くところまで行ったわけだ」
「とても、お好きなんですね」
「そういうことだ…………何より、こっちにも固有種は出るからな。向こうより、競争相手が多くなかったのも理由の一つだ」
まあ、そうして満足が行くまで狩りを進めた後は、総長として魔物の研究に大きく力を注いでいるとのこと……固有種も、それなりに倒しているようだ。
「ただ一つ、問題があったとすれば……この世界の場合、ほぼ必ず固有種は遺骸をドロップ品とするんだ。つまり、それを加工できないと使うこともできない」
「…………まあ、生産世界ですしね。ある意味、これもまた一種の試練なのでは?」
「休人たちも同じことを言っていたよ。いやはや、目から鱗だったよ」
そうして彼は、自分の持っている遺骸を加工できる者を探し……俺が選ばれた。
うん、完全に私利私欲が入っているのがアレだが……それはそれで利用できるしな。
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