虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

生産世界初訪 その01



 アイスプル

 無事……無事? なんというか、その言葉の意味が分からなくなっているが、ともあれ帰ってきた。

 最後の最後に【魔王】を呪殺しようとする愚か者も処したし、俺としては満足だ。
 呪殺用の『死天』アイテム、その性能を味わうが良い。

「呪いを受ける、これも職業就職の条件にあるからな。人を呪わば穴二つ、要は呪うなら呪われる覚悟が必要ってわけだ」

 ゲーム的に言うならば、適性云々よりもまずは耐性を付けておけってことなのだろう。
 ……なお、職業の方の【陰陽師】も、そういう呪術的な要素を満たす必要があるぞ。

「とりあえず、これで【高位呪術師】に就けるようになったか……高位版は、素の俺だと満たせないものが多かったからな」

《下級職の一部、派生職にも開放された職業がございます。すべての条件を満たしてはおりませんので、まだ就くことはできません》

「……まだあったのか。全解放は:DIY:のお陰でできた生産系だけだから、そういう未知の部分が多いな」

《申し訳ありません。アクセス権限が足りないため、そのような事態を……》

 かつて、『運天の改華』というアイテムによって解放されたあらゆる見習い職。
 そこから繋がる正統職がすべて解放され、下級職は全部確認した……と思っていた。

 しかしながら、地域固有の職業やら星固有の職業やらまだまだ未確認のモノは多い。
 それらは総じて見習い職が存在せず、あるいは見習い職相当が下級職となっている。

 そのため、基本的なモノはコンプリートしているが、まだまだ下級職にも未開放かつ未解放なモノが多い……マニア魂が、すべてを手に入れろと訴えかけているんだよな。

「でもまあ、そうだな……一回は行ってみて確認しないと、解放されないんだよな」

《はい。場所は選ばずとも、各星固有の職業の解放には、必ずそちらへ赴く必要があるようです》

「ふむふむ、そうなるとどこに行くのかも考えないといけないな……これからは」

 いろいろと考えたいところなのだが、この話題を挙げたのには理由があった。
 つい最近、お世話になっている生産ギルドのギルド長に言われてしまったのだ。

「『そろそろ痺れを切らしそう』って……たぶん、常識とかかなぐり捨ててきそうだし、こっちから出向かないとな」

 うん、俺のイメージではさまざまな生産技術を仕込んだ刺客たちが来る気がする。
 それはそれで興味深いが……理由が理由なだけに、『騎士王』も来そうだし。

 すでに前回一度庇ってもらっているので、二度目は無いと思う。
 アレは急だったからこそだが、さすがに今度は時間が経ち過ぎている。

 ──だからこそ行かねばならない、職業的には意味の無い生産世界へと。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品