虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

魔王防衛策 その06



 死をもたらす光、それを切り裂き前に出た少年ショウ。
 その堂々とした振る舞いは、他の休人たちに勇気を与えた。

 方法が判明してしまえば、また可能性があることさえ分かれば休人たちは諦めない。
 持ち前の死に戻りを駆使して、何度も検証して情報を暴いていく。

「反射だ! 光自体は干渉可能で、体に触れなければ対処できる! システム的に防げる選択じゃなくて、鏡みたいな方法で光を無効化するんだ!」

「物を並べてどうにかなった! 装備品じゃダメだ! 属性魔法を何重にも重ねて、物理的な壁にしろ!」

 そう、[ギフチャージ]の光は物理的に遮ることで防ぐことができる。
 ただし、光自体の光量と熱量が、生半可な防御を突破していた。

 そのため、防ぐ方法は二つ。
 ショウのように光を拡散できる武器で対処する、あるいは光線が展開される間維持可能な防御策を用意するかだ。

「くっ……誰か、光に強い能力を持っているヤツは居ないか!? おそらく、それが突破の鍵となるはずだ!」

 ショウが剣で光を捌いて以降、実力者たちが光に対処しつつある。
 触れさえしなければ即死には至らない、そのことを意識して立ち回っているからだ。

 それでも、[ギフチャージ]からの一方的な攻撃は続く。
 反撃をしようにも、水平線の彼方に居る敵に対して有効的な攻撃ができないでいた。

「だがおかしい……なぜ、人しか狙ってこないんだ?」

「……たしかに、船を狙えば一発で危なくなるよな」

「防御を突破して光を私たちに当てている以上、物理的な干渉力を有していないということではないだろう。だが、それでもこの攻撃は確実にプレイヤーだけを狙っている……それはどうしてなんだ?」

「まさか、俺たちだけを狙うように命令されて……なんてな。固有種は使役できないなんて定番の話、バカでも知ってるってな」

「…………いや、そんなはず」

 検証班に属する男は、自分でもおかしいと笑う休人の言葉に冷や汗を流す。
 たしかに、固有種は使役できない存在、それは自分たちも何度か検証している。

 ……だが、遠く彼方から攻撃を行っている個体は、正しくは固有種ではない。
 過去に一度、古代の箱庭に突如として現れたとされる狼の魔物と同じ存在。

 固有種の表記、そして『(再)』と付く未知の存在。
 彼の存在もまた、同じように『(再)』という謎の言葉が付いていたらしい。

「検証班、全員集合! 使役ができないはずの固有種、だが方法次第でどうにかできると思われる。その証拠があの『(再)』、再生か再度か……あるいは再起かは分からんが、蘇った後なら使役可能なのでは?」

 休人たちも手に入れたことのある特典。
 その多くは武器や装飾具の形を取ることが多いが、中には固有種の肉体そのものを特典とする場合もある。

 それでも武器などに加工される場合が多いため、検証からは外していたが……彼らは情報を集め、すぐに仲間たちへ報告する──遠くにいる固有種は何者かに操られていると。


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