虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
魔王防衛策 その01
魔族大陸 魔王城
冒険世界最凶とも呼べる存在【魔王】。
権能を奪い取る力は、『超越者』にすら及ぶというチートスペック。
そんな力を持つ彼は、魔族を率いて時折外部へ侵略行為を行っていた。
しかし、彼自身が動かないため『超越者』やら最上位職の就職者に防がれている。
……俺は彼の友として認識されており、その真意を教えてもらっていた。
家族を襲わない契約をしてくれるなど、いろいろと計らってくれる相手なんだよな。
「わざわざすまないな、我が友『生者』」
「いえいえ、問題ありませんよ。それより、いったい何があったので?」
顔パスで通され、謁見した【魔王】。
今回は向こうから呼び出されたのだが、内容は来てから言うの一点張りだったので詳細が分からないでいる。
まあ、家族が来ているという話なら、俺は迷うことなく家族に手を貸すけども。
……少々苦々しい表情を浮かべているように見えるのだが、気のせいだと思いたい。
「──『生者』、お前の家族が来る」
「…………」
「正確には、これから来ると思われる。大規模な休人による侵攻、それが張り巡らせていた情報網に引っ掛かった」
「……なんと」
事情を知らない多くの休人にとって、世界相手にケンカを売っている魔族は敵。
いかに創作物では味方に成り得る存在と分かろうと、振る舞いから悪としか見えない。
実際、【魔王】も自らの行いが悪であることは理解している。
そのうえで、その行いに意味があるからこそ我を通していた。
「当然、有象無象であれば配下に処理をさせる。実力者であっても、四天王たちを差し向ければどうとでもなったであろう。しかし、『生者』の家族……アレらはそういった者たちでは手を焼くだろう」
「ええ、自慢の家族ですので」
「……そのように自信ありげに言われても、どう返して良いか分からぬな。ともあれ、これで今回呼んだ理由が分かったな」
「とりあえずは。家族への不可侵、それはあくまでも私の家族が何もしてこなかった場合のみです。こうなってしまったからには、私から止めることはできません」
権能を奪う、その力は【魔王】が生き続ける限り永遠に続く。
家族のやりたいことをやらせるためにも、その力を使わせないよう立ち回っていた。
しかし、攻められるというのに対処もできないというのはフェアではない。
まあ、【魔王】の意思で返還は可能だし、何より当代の【魔王】は特殊だからな。
「奪っても、返すと誓ってくれるのであれば何も言いません」
「ああ、我が友に誓おうではないか」
「……では、何も問題ありませんね」
「いや、『生者』にも一つ、協力してほしいことがある」
この流れで言われるということは……まあつまり、そういうことなのだろう。
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