虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第一回コラボイベントその後 その08
懸念していたカードバトラーの交換アイテムも、どうにか確認し終えた。
ただ存在するだけで『騎士王』や【魔王】に影響が及ぶわけでは無い、それで充分だ。
今回のコラボで得たアイテムは、ある程度アイスプルに配置し終えた。
一部は区画を隔てたりもしているが、それ以外は部屋に飾るグッズだしな。
「飾り付けはこれでいいな……うん、これもEHOだからできることだな」
それ専用に家を建て、そこに自分の趣味全開の飾りを行う。
土地も家もほぼ無限にある、そんな世界だからこそできるわけだな。
「あとはカードなんだが……そういえば、元からEHOにはカードを利用した職業って無いのか?」
《【手品師】や【奇術師】、【怪盗】などは利用するカードに補正が掛かります。旦那様が所望しているのは、カードバトラーのカードを利用できるモノでしょうか?》
「そうだな。たぶんそれ、カードの効果を強くするとかそういうことじゃないだろう? だからこそ、カード自体の能力を増幅するみたいな職業があるか気になるんだ」
《…………鑑定の拡張情報、そして活動で得た記録には該当するものはございません。近いもので、【陰陽師】が引っ掛かるかもしれません》
式神を符から呼び出して、使役する。
たしかにその在り様は、カードゲームでよくあるような光景に似ていた。
「試してみるか──『魔王の取腕』、採取済みの『陰陽師』の細胞を入れてっと……」
何度も接触しているのだ、細胞を得る機会などいくらでもある。
権能は【陰陽師】系統の最高峰、使役可能な式神の数と能力値の補正が極まること。
だからこそ、カードにも影響が及ぶのであれば、それを分かるのだが。
結果…………どれだけ待とうとも、カードに変化は認められなかった。
「やはり失敗か。少なくとも、【陰陽師】系統の職業に希望は見いだせないわけだ」
《申し訳ございません、私の情報不足が招いた事態です》
「いやいや、分からないからこそ希望を見出せるともいえる。それに、まだまだ未知の力ならあるからな」
そう、『プログレス』。
個人によって異なる力が発現するのであれば、カードゲームに対する強い執着心がそういったものを発現させるのでは?
すでに土台となるカードは存在する。
なればこそ、そちらへと力の方向性をシフトさせる者が現れれば……可能性は決して、ゼロではない。
「今は待とうじゃないか。俺以外に、俺と同じような願いを叶えるべく尽力する誰かを。俺が頑張らなくても、世界は案外思いのほか進んでいくわけだし」
物語の主人公であれば、率先して動かなければいけないだろうが。
幸い、そういった運命は俺ではなく、むしろショウのような者たちに光を浴びせる。
…………カードゲームを楽しみたい、純粋にそれを高められる誰か。
精々俺にできるのは、そんな誰かを利用することだけだ。
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