虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第一回コラボイベントその後 その01



 アイスプル

 久しぶりに戻ってきた我が母星。
 住民たちが迎え入れてくれる中、俺はコラボイベントを経て手に入れたアイテムを、お土産として彼らに披露することに。

「──とはいっても、ほとんどのヤツは食べ物の方が嬉しいか……」

「マスター、こちらは何でしょうか?」

「ああ、それはなカエン、魔力を流すと立体映像が浮かぶカードだ。そのカードは……こういう風にゴーレムが投影されるぞ」

「なるほど……たしかに強そうではありますが、性能で言えば私の方が上ですね」

 中性的な無性のゴーレム、カエンが興味を示したのはバトラーコラボで得たカード。
 ホログラムとして出現させたカードを、ある程度自在に動かしたり見れる代物だ。

 これはこれで使い様もあるし、職業システムとの組み合わせも考えられる。
 ……まあそれはそれで、召喚士っぽい人々が無双する展開になるかもしれないが。

「創者様、こちらは……」

「ああ、見ての通りミニカーだな。ただ、使い道はある……できるか?」

「……分かりました、成し遂げてみせます」

「そこまで重く受け止めなくてもいいがな。お前の闇、その万能性に賭けてみたい。実物がある方が再現も上手くいくと思う、前みたいな結果にはならないだろう」

 固有種[エクリエンド]の核が使われた特別な人形、エクリが気にしたのはミニカー。
 それは単純な興味……ではなく、かつて実験に車の映像を用いたから。

 彼女の能力は、ありとあらゆるものを闇で再現し得る可能性を秘めている。
 ……がしかし、詰め込み過ぎた能力のせいか再現に限定的な条件が設けられていた。

 実物があれば可能なのだが、本や映像など隔てての認識の場合はダメ。
 構造をしっかりと把握しないと、足りない部分を膨大な魔力で補わなければならない。

 俺の創った原付などはすでに再現可能なのだが、それはそれで問題があった。
 術式や刻印など、複数の技術をふんだんに入れていたため燃費が悪かったのだ。

 だが、今回得られたアイテムであれば、だれでも遊べる仕組みが何かしらあるはず。
 それをエクリが再現できれば……闇で何でも乗り物なら作れるようになるだろう。

「…………で、風兎。お前さん、それが気に入ったのか?」

『…………な、何のことだ?』

「いや、悪いことじゃないぞ。俺の世界だと大人気のヤツだからな、教養があるお前なら分かってくれると思っていた」

『そ、そうか! いや、大変気に入った。ぜひとも『神・世界樹』に備えておくべきだろう……いや、私のためではなく、神々にもお聞かせするべきだからな──』

 風兎が耳をピコピコさせながら聞いているのは、アイラブコラボの記録水晶。
 ……うん、どうやらここに一人(匹)、アイラブマニアが誕生したようだ。


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