虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第一回コラボイベント後篇 その09



 ルリの祝福のお陰か、勝利に必要なカードが割と早い手番でドローできている。
 本来なら、休人自体が場に出て戦うことで無双できるのだが……俺はできないからな。

 デッキは二つ、『騎士王』を主軸とした騎士デッキと【魔王】が主軸な魔物デッキ。
 本来、騎士デッキであれば装備カードが充実しているので休人も出れるんだけどな。

 対する魔物デッキの場合、当人は前に出ず支援に徹する。
 装備品が無いため、人が前に出れないだけでもあるがな。

「──【魔王】の効果発動、自身の下に入れたカードの効果を発動可能。これにより、発動させるのは『暴食粘体グラトニースライム』の効果。自身の下に入れたカードの枚数に応じ、攻撃力をプラス1000×nにする」

「ちょ、待……っ!」

「同時に発動、『霞幽霊』の効果で手札を一枚破棄することで攻撃がブロックされない。『吸魔粘体マナドレインスライム』の効果で事前に魔法カードを破棄することで、相手は魔法を展開することができない」

「ち、ちっくしょー!!」

 相手にいっさいの妨害をさせず、【魔王】のダイレクトアタックが直撃。
 配下が居れば居るほど強くなるうえ、取り込むことで増える……チートな存在だ。

 なお、情報漏れを避けるために使っていないが、他者の権能簒奪効果も健在である。
 相手のカードの効果は、専用のカードが無いと分からない……その妨害もバッチリだ。

「ありがとう、いい勝負でしたよ」

《お疲れ様です、旦那様》

「……ああ、あのタイミングで魔法カードが出てきてくれて良かった。あの反応、向こうも魔法カードを仕込んでいたみたいだったからな。そうだな、そろそろ運だけじゃどうにかならなくなってきた気がする」

 ルリの祝福は運においてかなりの有利性を獲得できるが、相手が運の介在する余地が無いほど万全の準備をしていると、その効果が薄くなってしまう。

 元より、カードゲームには嵌め技というものが存在し、今回は特別版の仕様だ。
 俺が持つ『騎士王』や【魔王】のカード同様に、他の休人もチート級のカードを持つ。

 その中には、一ターンで勝利するようなものもあると[掲示板]に載っていた。
 だからこそ、俺も『騎士王』や【魔王】のカードを使っているわけだな。

《旦那様、情報が更新されました。どうやら『超越者』と接触した者が居たようです》

「……かなり苦戦しそうだな。けどまあ、負ける気はしないな」

 念のため、追加で交換しておいたパック。
 その中身もまた、何の因果か強力なカードが固定で一枚入っている……それを加え、新たなデッキを作っていくのだった。


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