虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第一回コラボイベント後篇 その03



 通常版『ザ・ロード』で行える試乗、そのVR版をこなしていく。
 二輪、四輪車だけでなく、電車や新幹線なども操縦していった。

 そうしてフィギュアとプラモデルを集め、ようやく辿り着いた最後の一台。
 それはソシャゲとしては組み込まれず、こちらの世界限定となった試乗体験だった。

「──いやはや、まさかロケットまで存在しているとは……」

《操作が高度で複雑、かつトップシークレットであるため、これまでは行うことができなかったようです》

「…………え、ええっと、じゃあどうして今回はできたんだ?」

《マザーAIが一からロケットの図面を仕上げ、限りなく本物に近い……それ以上の性能のロケットの図面を構築したからです。私たちはそれを利用することになります》

「…………深い、闇が深過ぎる!」

 これ、コラボの裏で技術の奪い合いとかが起きていないか?
 まあ、EHOの会社である『イーデ』は、マザーAIが守ってくれそうではあるが。

 しかし、休人はロケットの試乗経験ができるわけだ……うん、ありえないだろう。
 この経験は間違いなく、一部の者にとって千金に値する価値なんだろうな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 そうして俺と『SEBAS』は、ロケットの操作をすることになった。
 こればかりは一から用意された操作説明を確認し、丁寧にこなすことに。

 若干、『SEBAS』が不満だったのは、ロケットの性能が良かったためらしい。
 いずれ『SEBAS』にも、魔道具になるだろうがロケットを作ってもらおうか。

「通常版、そしてEHO版のノルマも操縦してもらって──よし、終了だ!」

《お疲れ様です、旦那様》

「……まあ、俺は載っているだけだったからそこまで疲れていないんだけど。でも、これで飾れる物が一気に増えたな」

 特殊な用途が無いフィギュアとプラモデルだが、今回に限ってそうではない。
 コラボタイトルの一つ、『のんびり異世界の村』に家具として持っていけるのだ。

 特別な説明は無くとも、コラボアイテムは特殊な評価があると俺は見込んでいた。
 そのため、こうして各ゲームタイトルでそれらを集めている。

「一先ず、これらを並べておこうか。ついでに、『SEBAS』が考えたハウジングの方も並べてみよう」

《ありがとうございます》

「頼んだのは俺なわけだし、そんなに気にしなくていいよ。さて、それじゃあまずはここから移動しようか」

 ということで、『ザ・ロード』を終了して初期エリアに戻り、『のんびり異世界の村』へとアクセス──豪邸に[ログイン]を果たすのだった。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品