虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第一回コラボイベント前篇 その15



 イセ村の世界を満喫している俺。
 役場で手続きをし、住まいを得ることに。
 途中、この世界の魔法システムの話をしながら、あるキャラの話をした。

 そのキャラこそが、プレイヤーが考えるシめたいキャラNo.1。
 ぼったくり、増築魔、そもそも選択権ぐらいこっちに寄越せよ、などと言われている。

「──初めましてぞなもしね。ぼくの名前は『もし吉』ぞなもし」

「初めまして、ツクルです」

 もし吉、見た目はタヌキをデフォルメしたような魔物だ。
 見た目だけはとても可愛らしく、グッズは売れているんだよなぁ。

「うんうん、新しい住民は大歓迎ぞなもし。はい、これが君の家の鍵ぞなもし。受け取ってほしいぞなもし」

「…………」

「ん? どうかしたぞなもし?」

「あの、家を自作ってできますか?」

「…………少し、詳しく聞くぞなもし」

 本来、イセ森シリーズに家を一から作るようなシステムは存在しない。
 だがこのコラボは、ある程度自由性があることを確認している。

 アイテムの持ち込みはできていないが、俺の場合はそれも不要だろう。
 また、イセ村には木材というアイテムも存在しているので……不可能ではない。

「──と、言ったわけでして。土地だけ、お借りするわけにはいきませんか? もちろんですが、滞在期間を過ぎた後の家の権利は、すべてそちらにお譲りします」

「……ふぅ、仕方ないぞなもしねぇ。分かったぞなもし、ちょっと待っているぞなもし」

「ありがとうございいます」

 最後の言葉に軽く反応していたので、かなり好意的に受け取ってもらえたことだろう。
 役場でこの村の地図を見たが、土地は空いていたのでできなくは無いはずだ。

 しばらくして戻ってきたもし吉も、了承だと言ってきた。
 ……役場とのマージン料などと言う辺り、さすがはもし吉だと思ったよ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「──よし、完成っと」

《お疲れ様です》

「いやいや、『SEBAS』には及ばない。このコラボ最大の難関を、始まる前からクリアしてくれていたんだからな」

 指定された土地に、:DIY:と生産魔法クリエイトを交えて建てた家。
 それは本来、多大なローンを支払って完成させる七部屋地下付きの豪華な家だった。

 これを手に入れるため、どれだけ金策をしたことか……過去を懐かしみ、今とのギャップに少々涙がほろり。

 さて、『SEBAS』と話している通り、本来ならばこの家問題以上に、コラボだからこその問題があった。

 それは、この世界の言語問題。
 イセ村の住民は魔物、ゲームでも人族とは異なる言語を話しており、俺たちは内容を自動翻訳された文面でしか理解できなかった。

 だがコラボし、その辺もリアルになったため翻訳は必須。
 ──そこで『SEBAS』は、過去の作品の音声データから翻訳を進めてくれた。

 結果として、俺は最初から言葉を話せる状態になっていた。
 ……役場で驚かれたもん、人族で話せるのはとても珍しいってさ。


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