虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第一回コラボイベント前篇 その13
二つ目のコラボタイトル『アイドル・ラブ・ユー』の情報でテロを起こした俺。
そして、挑む三つ目のコラボタイトルとして『のんびり異世界の村』を選んだ。
──『のんびり異世界の村』。
通称『イセ村』で知られるシリーズもの。
これまではゲーム機用のタイトルだったのだが、晴れてソーシャル版に移植されたモノだった。
バトル要素などの何かを競い合う概念はそこまで無く、村に住まう住民たちとまったりとした時間を過ごすというゲームだ。
「木を切るのにも魚を釣るのにも、虫を取るにも魔法を使っているけどな。住民も子供が愛らしく思えるデザインの魔物だし、EHOとのコラボも何となく検討が付くよ」
ゲームタイトルにタップした俺は、ホログラムが投影された画面で二つの選択肢からどちらかを選ぶよう求められていた。
一つは観光。
事前に発展された村の中で、規定時間内に指定されたアイテムを集めるだけ。
簡単な分、報酬もだいたい固定だ。
もう一つは開拓。
初期状態の村の住民となり、EHOのスキルを用いてさまざまなトラブルに対処していくというもの……当然、報酬も凄い。
「えっと、開拓の場合は本来なら出現しない悪い魔物も登場すると……なるほど、それでもバトル要素は控えめなんだな」
特定の系統スキルを持っていると、それに対応した魔法が使えるらしい。
現れる魔物にはその魔法しか使えないようなので、普段のレベル差は関係ないようだ。
「俺の場合は、:DIY:が生産系だから生産系の魔法の『クリエイト』。鑑定が情報系だから『チェック』か……」
前者は必要なアイテムを揃えて新しいアイテムを作る魔法、後者は危険や偽造が無いか見抜くことができる魔法だ。
他には採取魔法『キャプチャー』、伐削魔法の『カット』、狙撃魔法の『スナイプ』などがある……ちなみに一番最後のヤツは、宇宙船を狙撃したりするぞ。
俺の場合、結局戦闘系のスキルを持っていないので戦闘用の魔法も持ち合わせない。
何より、設定で悪い魔物が出ないようにするつもりなので、バトル要素は皆無だ。
「まあ、いつも通り選ぶのはただ一つ──開拓モードを選択だな」
スタート画面をタップすると、選択肢が一つとなりゲームが始まる。
空間が再構築されると……気が付けば、俺は馬車に揺られていた。
「──お客さン、そろそろ着きますゼ」
「……ああ、すまない」
「何の何ノ、ここまで長い旅だったからナ。たしかお前さン、ツクルって言ったカ?」
ここで違う名前を言えば、向こうでもその名前で呼ばれることになる。
この乗り物に乗って始まるのもまた、イセ村の定番の流れだ。
「そうだ、ツクルという。たしか、運転手のアンタの名前は──」
「俺カ? 俺はマシヘイって言うんダ、また乗る機会があれば呼んでくれヨ」
そう、彼は機械のマシヘイ。
村に滞在しない特別な種族な彼は、これまですべてのシリーズに登場し、どのキャラよりも先にプレイヤーが顔を見るキャラだ。
そんな彼とのやり取りに、少しだけ興奮しつつ──村への時間を楽しく過ごした。
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