虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第一回コラボイベント前篇 その11
最終フェイズ、EHOが初な新曲と共に出現する精霊系のボス。
俺はそれを倒すべく、『SEBAS』に体の操縦を委ねていた。
主である俺の承認が必須である代わり、絶大な効果を発揮する『セバスチャン』。
それこそが、『SEBAS』の持つ唯一無二の『プログレス』であった。
《“無限系統樹”を起動、職業および称号の最適化を実行──対精霊に変更しました》
《『魔王の取腕』を起動、『騎士王』を再現します──成功しました》
《“千変宝珠”、属性を水に固定。武装を展開──放射を実行します》
俺が何もせずとも、体が勝手に動いて自動的に戦闘を済ませてくれる。
それも、俺が頭を捻ってやるよりも余程効率的な振る舞いをしながら。
……ゲームでマクロなどを使う人って、こういう気持ちなのだろうか。
自分でやるよりも楽だし、何より成果を得られるわけだからな。
「まっ、それを明確に禁止されている場所でやったらあかんでしょ…………ちなみになんだが、EHOってどうなんだ?」
《外部からそうしたプログラムを入力することは、禁止されています。しかし、旦那様のようにEHO中で得た物であれば、許容するとのことです》
「……ふぅ、良かった」
そんな話をしている間も、『SEBAS』は着々と精霊型のボスを攻撃している。
水属性の魔力を纏わせた妖刀(仮)が、何度もボスにダメージを与えていた。
当然、攻撃されれば反撃をしてくる。
アイドルたちの歌から生まれた精霊だが、その中にはファンの想いも籠もっており……拝聴の邪魔をすれば容赦はしない。
それでも『SEBAS』は攻撃をすべて見切り、躱したうえで反撃を行っている。
未来視と自動反撃という、かなり便利過ぎる『プログレス』を併用しているからだ。
普通なら、どちらかの能力だけで人間の処理能力は限界を迎えるだろう。
だが、高度な演算能力を有するAIならばどうか……その結果が目の前の光景だ。
こちらはいっさい攻撃を受けず、相手だけがダメージを背負わされている。
流れている曲も佳境だ、歌が終わればボス戦も強制的に終了になってしまう。
《──『激流の死水』、『溺死の水泡』を使用します》
膨大な量の水、そして巨大な水沫が辺り一面に出現する。
それらは容赦なく精霊を呑み込み、泡の中に取り込み苦しめた。
その中に俺の体も入ると、妖刀(仮)を振るっていく。
水の中という環境のせいで、十全な力が使えなかったからか──ついに精霊が倒れた。
『みんなー、本当にありがとう!』
ちょうどそのとき、音楽もまた終わる。
アイドルたちが居なくなると、退室するための扉が現れた。
《目標達成、『セバスチャン』の発動を終了します》
「はい、お疲れ様っと」
こちらでは、アイテムは直接転送される形式になっている。
ウワサには、アイドルから手渡しされるというものもあったが……所詮ウワサか。
そんなこんなで、退室した俺は再びこのコラボを選び周回を始める。
とりあえず、全種類の精霊を倒しておいた方がいいな。
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