虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第一回コラボイベント前篇 その08



 二つ目のコラボゲーム『アイドル・ラブ・ユー』は、防衛戦を行うものだった。
 アイドルたちが踊る中、魔物からアイドルたちを守り、かつアイテムを集める。

 ドローンを展開した俺は、さっそく回収できるアイテムを可能な限り手に入れていく。
 魔物からのドロップ品、ファンが落とした品、そして舞台裏で壊れている装置。

 それらを生産職が取り扱うことで、舞台装置が復旧する。
 本来ならば、集団での参加者が行うような要素だが、俺は単独でそれを済ませていく。

「演出系はこれでOKだな。あとは、魔物の方をどうこうする装置を造らないと」

 コラボに当たって出現する魔物たちは、そのすべてがホログラムのファン同様にハッピに身を包んだ特殊個体だ。

 本来の魔物との差別化を図ったのだろう。
 弱点などは変わらないのだが、追加されているものがあった。

 アイドルたちの声を聞くと、みるみるうちに弱くなっていくのだ。
 なのであえて近づかせて倒すという方法もあるが、それは確実に報酬が減る。

 なので、俺が最初に作ったのは拡声装置。
 ドローンがアイドルたちの声を集め、その装置を積んだ別のドローンたちが魔物の侵攻方向から音を流す。

 たちまち弱くなっていく魔物を相手に、容赦なくドローンの機関銃が放たれていく。
 ──しかし突然音が止まり、この場すべてが静寂に包まれる。

「っと、休憩時間か……『SEBAS』、今の間に状況の確認を」

《出現する魔物は参加する人数×レベルやスキルなどで決まるため、旦那様の場合はおそらく千体。現在、三百体の討伐を確認》

「曲はどれだけあるんだっけ?」

《全部で四曲です。三曲歌った後、魔物を全滅させていた場合に限り、四曲目を歌うとの情報があります》

 すでに熱烈なファンたちが情報を上げてくれているため、『SEBAS』の解析も比較的スムーズに進んでいる。

 どうやら一度に出てくるのは、四曲目を除いて三百体ずつのようだ。
 再びアイドルたちが曲名を告げると、音楽が流れ始める。

 ただし、俺が修復した装置をしっかり使ってくれているので、音もより豪華に。
 俺や戦ってくれるファンたちに、イベント限定のバフが施された。

 そして、魔物が出現。
 先ほどの魔物たちがほとんど進化をしていない雑魚個体だったのに対し、今回現れたのはその上位個体たち。

「ドローン、掃射開始」

《実行します──生存を確認。どうやら、耐性などが付与されている模様》

「ふむ……曲を歌うごとに強くなるって説明にはあったけど、上位個体だからじゃなくてそういう意味で強くなるのか? まあいい、それならそれで向こうを弱くすればいい」

 音楽のバフがドローンたちに及ばないからこそ、耐えられているのだろう。
 ならば、それが元の状態に戻るくらいまで相手を弱くしようじゃないか。


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