虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第一回コラボイベント前篇 その04



 コラボ『モンスター&パズル』ステージ。
 ジェム集めによって敵を倒すという、コラボ限定の戦い方をある程度把握した。

 そんな俺は現在、最終ステージに辿り着いている。
 というのも、コラボステージは僅か三つだけなので一つクリアしただけだ。

 舞台は星々が全方位に散りばめられた道。
 宇宙空間のような神秘的な場所で、俺とサポート役であるエッくんは最後の敵と相対している。

『気を付けて! ヤツは『零哭獣ビースノート』! とっても強いんだ!』

 プレイしていたので分かるが、最終ステージのモンスターは通常モードにおける初期のラスボスだ。

 ……ソシャゲって、強キャラも時代と共に移り変わっていくからな。
 そんな変遷の波に呑まれた、もっとも古いボスキャラが彼である。

 とはいっても、そのデザインは初期だからと張り切った運営の力が注がれていた。
 洗練されたシャープな体、そして数字の0が模された翼などかなりカッコいい。

「さて、ジェムを探しますか……攻撃を避けながらだけど」

 第二ステージからそうだったのだが、時折妨害が入るようになっていた。
 回復のジェムを持っていると攻撃を緩和できるのだが、無い場合はジェムが減る。

 そして、ジェムを持たない状態で攻撃を受けると敗北扱い。
 また同じステージからやり直し……という展開なんだとか。

「『SEBAS』、頼むぞ」

《畏まりました──ドローンを展開、ジェムの回収を行わせます》

 採取用のドローン、それはいくつもの採取系のスキルを付与してある機体だ。
 なので今回のジェム集めにも充分に使え、手の届かない場所を任せている。

「というか、ここのどこにあるんだよ……もしかして、これか?」

 星が散りばめられているといったが、中には明確に色を輝かせている物があった。
 まさかと思い、それに手を伸ばすと……どうやら正解だったらしい。

「これが所々に……そして、魔物の方はこうして増えるのか」

『! ビーストノートはとてつもなく強いから、こっちの世界のモンスターたちも君を襲いに行っちゃう!』

「まっ、それなら──『SEBAS』」

《武装展開──攻撃を開始します》

 飛んで火にいる夏の虫。
 咆哮と共に現れた魔物たちを、ドローンが射殺していく。

 すぐに採取班が解体を行い、内部から無数のジェムを回収する。
 それを何度か繰り返した後、俺の下には大量のジェムが集まっていた。

「準備は万端、それじゃあ──:DIY:を始めるとしますか!」

《:DIY:が起動されました
 使用者『ツクル』の指定能力値──概念崩壊……成功しました
 アイテムの作成成功後、または条件無視によって解除されます》

 いつもの高揚感のままに、普段とはまったく違う物に手を伸ばす。
 すでに実験は第二ステージで済んでいる、ボスをワンキルできる物を作ろうか。


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