虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

妖刀探し 後篇



 ──付喪神。

 使い続けたアイテムに、意思が宿るという現実でもあるらしい現象。
 自分に合った妖刀を手に入れるため、俺はそれを成し得なければならない。

「最初から自我付きの妖刀は作れるのに、後天的に作る方が大変って……いやまあ、素地の問題だよな」

 現在、もっとも俺に適していた妖刀は、自我の無い代物だった。
 だが現状では、就職条件を満たすための品にはなれないでいる。

 そのため、『プログレス』を使うことを提案されたのだが……大前提として、自我が無ければ『プログレス』は使えない。

 だからこそ、妖刀を使い続けることで付喪神としての自我を定着させる必要がある。
 ……がしかし、こればかりは具体的な方法が見つからなかった。

「今はとにかく、使い続けることで妖刀の付喪神を目覚めさせるしかないか。しばらく装備し続けて、経験を積んでいくしかないな」

 幸いにして、俺は『生者』……そして休人はどのような経験を積みに行っても、それを中断するようなことはない。

 死んでも死なない俺たちは、目的を諦めない限り確実に成功するからな。
 刀を使う、それ自体が条件の職業もあるのでちょうどいいだろう。

「とりあえずは妖刀を[装備]してっと……あとはそうだなぁ、名前でも決めておくか」

《名付けは付喪神において重要な要素です。発現させる能力にも影響が及びますので、慎重にお考えください》

「……そこまで言われると、かなり考えないといけないんだがな」

 そこまでの覚悟は無かったので、改めて言われると少し悩まなければならない。
 今はまだ銘も無き妖刀、だからこそ名前に価値と意味があるのだろう。

「うーん、どういう妖刀になってほしいかだよな……普通の性能なら自分でどうにかできるわけだし、求めるのは俺には無い物。それでいて、役に立つものなわけだから……そうだな──[宿業]にしよう」

《[宿業]……どのような意味なので?》

「もともとこの妖刀には、【迷宮主】としての権限が宿っていた。つまり、職業に干渉し得る力があるわけだ……だから、職業を宿す妖刀という意味で[宿業]にしてみた」

 ついでに言うと、俺の罪を共に背負うという意味で[宿業]でもある。
 まあ、大半の者からすれば、後者の意味合いだと勘違いする気もするがな。

「ある意味、休人たちは死という業を皆が無視しているわけだし……その分だけ、業を宿しているといっても過言じゃないか」

《──命名完了しました。[宿業]、とても良い名前だと思います》

「ありがとう。じゃあ、そのまま大業物でも目指してみようか」

 業禍物だと、俺にどういう問題が生じるのか分からないし……うん、そこだけはやっぱり普通が一番だな。


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