虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

妖刀戦争 その15



 最下層で待ち受けていた一人の男、そして握られた業禍物。
 事情については九拿が聞く前に攻撃を始めたので、不明だが……まあどうでもいい。

 彼らが揉めている間に、こっそり忍ばせたドローンが現在暗躍中。
 時間になれば、解析を終えたことを教えてくれるだろう。

「『SEBAS』、あの妖刀って……」

《──解析不能です》

「既存の物では無い、あるいは存在を知られていない妖刀か。業禍物である時点で、認識はされているはずなんだがな」

 あくまでも、人が定めた階級分けなので知られていないわけが無いのだ。
 そして、鑑定とはそういった大衆の認識があれば多少は分かるようになる。

 俺の鑑定スキルはゼロで固定だが、職業スキルの補正で少しだけ性能が上がっていた。
 それでも業禍物級の妖刀の格には劣るようで、情報の開示はされないまま。

 戦闘中だからという理由もあるが、今のままでは『SEBAS』も性能を暴けない。
 目視して分かる範囲で、妖刀が何をもたらしているのか確認しないと。

「うーん、九拿が使っている名刀とそのまま打ち合っている辺り、相手の刀に干渉するような代物では無いな。また、死に戻りに関していっさいの変化が無かったことから、魂魄の捕食系でも無いと」

 しいて挙げるのであれば、九拿の攻撃に耐え続けていることだろうか。
 本人は大変苦しそうではあるが、それでも妖刀が閃き九拿の斬撃を弾き続いている。

《旦那様、ご報告が》

「ん? 俺の予想は外れたか?」

《いえ──ドローンが迷宮核に到達したようです。それも、妖刀の形をした》

「…………どういうことだ?」

 どうやら、ただここに居る男を倒すだけでは終わりそうに無いらしい。
 だがしかし、何かが引っ掛かる……男が使うその妖刀は攻撃系の物では無いのだから。

 では、どうしてそんな物を使うのか。
 ここにはあらゆる妖刀が揃っていて、本物でなくとも今使っている物以上に禍々しい性能の妖刀がいくらでもあるはずなのに。

「! あるいは、逆なのか? ……そうだ、九拿さん! 少し、時間を稼いでいただけますでしょうか!」

「? ……どうして?」

「おそらくこのままで居ても、何も変わりませんので。私は奥に向かいます」

「させるわけないだろ……ぐっ!」

 俺に対して再び斬撃を飛ばそうとしていた男だが、九拿が間に割り込みそれを弾く。
 ……当たらなかったが斬撃は俺の近くを通り、その余波で死んでいたりする。

「分かった、だからすぐ行って」

「分かりました──転移」

「くっ……そこをどけ!」

「…………早すぎ」

 なんだか不服そうな顔を浮かべていた気もするが、今は急がなければならない。
 転移先はドローンが居た場所──つまり、もう一振りの妖刀が待つ最深部だ。


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く