虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
妖刀戦争 その07
迷宮『銘も無き墓碑』二層
俺の動きを真似する九拿と共に、下の階層へ向かう。
一層よりも多くの刀が突き刺さり、現れる魔物もより強力な個体となっていた。
「だんだん魔物自体の技量も高くなって……それを真似する分、俺自身よりも技量が高くなっているな」
「……」
這い出る亡者を容赦なく切り伏せ、下へ下へと進もうとする九拿。
辺りの個体すべてを捻じ伏せると、なぜか必ず俺の下へ戻ってくる。
「お見事です。この調子で学び、活かしていけば【剣聖】も夢ではありませんね」
「……剣、聖?」
「剣の達人のことですよ。魔法だろうと巨大な物でも、剣一本で何でも斬り伏せるような名人。腕を磨いていけば、いずれ九拿さんもそうなれるはずです」
「……」
まあ、星剣の一本でも持っていれば事象自体は引き起こせるだろうが。
技量が足りなければ、必要以上に疲れたりするのであまり現実的ではないが。
……どこかの虚弱なヤツは、あくまでソイツ用に特化して剣を作ったからこそ、それなりに扱えているだけだ。
この迷宮のアンデッドたちがどこまで強くなるかは分からないが、総じて刀剣を握り締めて生者を襲ってくる辺り、下に行けば優れた剣技を持つ個体にも会える可能性がある。
どれだけ解析データはあっても足りないので、可能であればぜひとも見つけたい。
そして、それを見て学びを得た九拿ごと調べ上げたいものだ。
◆ □ ◆ □ ◆
三層
残念なことに、それなりの実力者が二層までの妖刀は狩り尽くしていたらしい。
だが三層目、ここからようやくそれらしき物が見つかるようになった。
『──■■!』
「ッ、…………」
亡者が何かを唱えると、刀から火が生まれて九拿を襲う。
今までに無いことで少々驚いていたが、手で振り払ってそのまま拳で殴りつけていた。
顔面が沈没し、そのまま動かなくなる。
九拿は倒れた亡者から妖刀を奪い、こちらに渡してきた。
「“鑑定”──『妖刀[火輪](再)』、やはりそうでしたか……ああ、九拿さんにお返ししますよ。おそらく、貴女が指示された通りの物だと思いますよ」
妖刀はしっかりと返しておく。
敵対関係になって、面倒ごとになるよりは普通に対応した方がいい……どうせ奪ったところで、俺には使えない重りでしかないし。
復活させたユニーク種にも付いていた、後ろの『(再)』という表記。
本物と違うものとして、世界に認識されている証なのだろう。
一度“鑑定”で出した情報を視ながら、同時に『SEBAS』が解析してくれている妖刀や道中に在った刀のデータを確認……それらはすべて、迷宮を基に作られていた。
今回の妖刀は普通の代物で、例の騒動に用いられた業禍物では無い。
それらを配置しているのは、もっと下層のはず……いいぜ、乗ってやろうじゃないか。
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